第41話

学校でのテスト勉強が終わり、いつものように家に帰る。この帰宅道もだいぶ慣れてきたものだ。小学校は遠かったため車で送り迎えをして貰っていたし、中学は高校とは道が真逆のため、高校に入ってから初めて電車にも乗ったし、一人で好き勝手な所に行くことを許された。制限なく自分の好きなところに行くというのは、すごく新鮮で楽しかった。


今日の勉強会で翼の国語の苦手な場所、そしてその苦手の克服方法が分かったため、明日からもある勉強会のため机の前に座り、A4の用紙とペンを取り出す。私が人に勉強を教える時に必ず用意する物だ。その人が何が分からないか、分かるようにするにはどうすれば良いのかを事細かく用紙に書いていく。


まず翼は国語が苦手というよりは小説のような文章問題が苦手のようだった。

小説問題は登場人物の心情や行動。そしてその意味を問う問題が多い。しかしこの問題が苦手な彼が言うには、文章だけではどうしても登場人物には感情移入ができないことや、心情などが分からないといったことが課題のようだ。確かに文字だけだと心情なんてどんな風にも読み取れるし、受け取り方もその人次第だ。しかしテストとなれば、必ず正解があるため好き勝手に書いては勿論不正解になってしまう。文章問題はその答えを探すことを主な課題としている。


この問題を解くコツは主に三つだ。

一つ目は場面設定を整理すること。二つ目は登場人物の心情を反映した言動や描写に着目すること。三つめはその心情に至る変化に着目すること。

この三つができるかできないかで、文章を読み取る力というのは差が出るものだ。


いつもなら苦手部分を加味して自分で問題を作ったりするのだが、今回は国語でしかも小説問題だ。自分で問題を作ったろころで無駄なので、テスト範囲の物から問題を引っ張り出してくる。

国語というのはコツさえ掴んでしまえばさほど難しくない教科だ。私が今回目標にしていることは、そのコツを翼に掴ませること。彼も地頭は良いはずなのですぐにでも習得してくれるだろう。


勿論テストの問題は小説だけでは無いので、評論、古文と他の問題も用意する。

まあこの問題も小説問題の解き方を応用すれば、すぐに分かるようになるだろう。古文は文法などが少し変わるためそこは、しっかりとおさえるよう言っておこう。


「よし、まあこんな感じかな」


A4用紙を三枚使い、必要なことを書きだした後、ペンを置いて一言。

この用紙たちと私の説明があればすぐにでも理解をしてくれるだろう。明日の勉強会は翼に集中授業をすることにしよう。

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