第39話

「姫は翼君のことが好き?」


「そりゃあまあ…好きでもない相手とは一緒にいませんよ」


何を聞いてくるのかと思えば今更なんだ?翼のことが好きかなんて…そんなの好きに決まっているだろう。好きでもない相手と一緒にいないし、家に上げもしないのだから。


「翼君も玲さんも好きですよ?」


「ああ…やっぱりそっちのことだと思っているよね…」


玲さんは呆れた様子で頭に手を当てて、机にうなだれる。


「恋愛未経験だとこうなっちゃうのかぁ…でもこのままだと翼君があまりにもかわいそうだしなぁ…」


「玲さん?どうしました?」


「何でもない…まあ今はそれでもいいや。ごめん変な事聞いちゃったね。知りたいことは知れたから大丈夫」


「はぁ…それなら良かったです」


少し釈然としないが分からないことを考えても意味がないし、玲さん本人も納得をしたようなのでこれ以上何かを聞くのはやめておこう。今はとにかくテスト勉強に集中するべきだ。まあ、今のテスト範囲ならそんなに勉強をしなくても満点をとる自信はあるが、念には念をだ。


「あ、そう言えば私も玲さんに聞きたいことがあったんでした!」


「なに?」


「今度翼君と一緒にテスト勉強をするのですが、玲さんも一緒にどうかなと思って!」


「え?私も良いの?」


「勿論です!大人数でやるのは効率が悪いとも言いますが、私は皆で楽しくやりたいです!」


私はついこの間翼君と約束をした一緒にするテスト勉強に玲さんもどうかと思ったのだ。玲さんと翼は喋りはするが、仲がいいとは言いずらい関係だ。ならいっそ今回のテスト勉強で仲良くなって貰おう。彼のことをしっかりと知って貰えば私が彼のそばから離れない理由も分かるだろう。


「いや私が心配しているのはそう言う事じゃなくて、姫は翼君と二人きりで勉強できるのにそうじゃなくて良いの?」


「私は別に…あ、言い忘れていましたが今回の勉強会は明さんと友希さんもいらっしゃいます。勉強会とは言いましたが、私と翼君の目的は二人の学力向上のためですね」


「あぁ、なるほどね。それじゃついでに私も勉強教えて貰おうかな」


玲さんは理由を聞いたら納得したようで、自分にも得があると判断したのか案外さらっと了承をした。


「私としては姫に勉強を教えて貰えるだけでその勉強会には参加する価値があるからね」


「そんなに良いものじゃありませんよ?」


「いやいや!姫に勉強を教えて貰えれば確実にテストで高得点を取ることができるんだよ?!そんなの参加しないわけがないじゃん!」


「私のことを高く評価してくれるのはうれしいですが、先ほども言った通り今回は明さんと友希さんの勉強を見るので忙しくなると思うので、玲さんをずっと見ることは出来ないかもですが大丈夫ですか?」


さすがの私も三人同時に勉強を教えるというのは難しい。分からない問題をしっかりと理解するまで教えるというのは、結構な時間が掛かるということは分かっている。


「あ、それなら大丈夫だと思う。私が今躓いている所は大体応用問題だから。分からない問題がきたら教えて貰う事になると思う」


「それなら本当に助かります…!」


玲さんのようにしっかりと基礎ができていて応用が苦手な人の場合だと、少しヒントを与えるだけで理解をしてくれると思うため今回の勉強会だとすごく助かる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る