第34話
昼休みになり、ご飯を食べようとお弁当の蓋を開く。そうするといつものお弁当とは違うことにすぐに気づく。
そういえば今日のお弁当は翼が作ってくれたって言ってたな・・・
朝も食べた綺麗な卵焼きに、輝いているきんぴらごぼう、私が好きなささみと併せたサラダも入っているためきっとお母さんも一緒に作ったのだろう。トマトやキュウリなどで色合いも完璧でとても美味しいそうな配色になっている。
「姫って将来の事とか考えているの?」
私が食前の挨拶のために手を胸の前で合わせていると、目の前から声が聞こえてくる。
声の主は玲さんでどうやら私と話をするために、隣の席から前の席に移ってきたらしい。お弁当に夢中でまったく気づかなかった・・・
「私の将来はもう決まっていますよ」
突然の真面目な質問に少し戸惑った所はあるが、もう決まっていることなのできんぴらを口の中に放り込みながら答える。
しっかりとした甘味でこのきんぴら美味しい・・・今度また作ってもらおう。
「決まってるって家を継ぐってこと?」
「そうですね。私は兄弟も居ませんし、両親も私に後を継いで欲しいと願っています。なので私が家を継ぐということはもう決定事項ですね」
「プレッシャーとかある?」
「んー・・・どうでしょうね。正直今のことろは特にないですね。昔から私が当主になるんだ!という心持ちで生きてきたので心構えはできているつもりです。でももしかしたらもっと大人になって世間を知ったらプレッシャーを感じる物なんですかね?」
「姫は本当に大人だねぇ・・・それに比べて私は・・・」
彼女は一枚の紙を恨めしそうに眺めながらしみじみと呟く
「この話題って言うことはやっぱりそのことでしたか」
「そう・・・まだ高一なのに将来の事とか聞かれてもすぐに答えられる訳ないじゃん!」
彼女が叫びながら見ているのは進路調査票の用紙だった。
この学校は全国でもトップクラスでレベルが高い高校だ。そのため意識が高いのか知らないが一年生の私たちに今、進路調査をしてきた。
私はもう決まっているため良いが、確かに玲さんが言う通り一年生の私たちに聞くことではないと思う。
そしてこの進路調査の厄介な点は希望している就職先なども書く点だ。志望している大学や進学先を書くだけならまだしも、就職となれば話は大分難しくなってしまう。世間一般的には高校三年生でもまだ将来のことなど明確に決まっていない人が多数なのに、一年生の私たちが決まっている人は少数だろう。まあそれを意識をさせるための早めの調査票なのかもしれないが、せめて今はそんなことを考えずに楽しい高校生活を過ごしたいという人が多数だろう。
「私はまだ進学先もまともに考えてないんだよ・・・?」
「今の所で良いんですが、今はどこの進学先を目指しているんですか?」
彼女は赤門があることで有名な大学と京都の大学の名前を口にする
その大学を目指しているなら心配しなくても良い所に就職ができるだろう。あくまでこのままその大学を目指せればの話だが。
「姫は特に学力面では心配いらないもんね」
「まあ勉学を疎かにしたことがないことが私の唯一誇れる所ですからね。結果を出せば良いだけなら簡単な事ですよ」
「そういうことが簡単に言えるのは天才だけだよ」
彼女は悩みの種の紙から目を離し、今度は私のことを恨めしそうに見てきた
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