第28話
「凛?入るわよ?」
さてどうする?お母さんには今日は風邪を引いたみたいだからもうすでに家に帰っていることと、友達が看病をしに来てくれていることは伝えている。しかし、問題は看病をしてくれている人が男の子で、私がよく話題に出している翼ということが問題なのだ。
お母さんが彼のことをすぐに翼だと認識できればまだ良いが、もし他の男子だと思ってしまった時のほうがややこしいことになるため、それはどうにかして防ぐことにしよう。
「遅くなってごめ・・・」
お母さんは部屋に入るとまず私も見てから、今度は隅にいる翼君に目を移すと固まってしまった。
大方、看病に来ているのは玲さんと思っていたのだろう。しかし蓋を開けてみれば一人娘の部屋には知らない男子がいるのだ。固まってしまうのも仕方がない
「えっと・・・看病してくれていたのは玲さんじゃ無いのね。まあそれはいいわ。ご飯も食べれそうだし、まず凜はそこに座りなさい。あ、あなたはそこでいいわよ」
お母さんは動揺はしているようだが、それなりに冷静に私のことを叱る準備をしつつ翼にもさりげなくの声掛けをする
しょうがないため私はベットから起き上がり、すぐそばの机の前に座る
「まずは凜の看病をありがとうございます。私は凜の母の鷹藤 瞳です」
「あ、えっと・・・白藤 翼です。凜さんにはいつもお世話になっています」
珍しく翼が敬語を使っている?!彼の敬語なんて店員モードの時しか見れない物だと思っていたため少しびっくりだ。しかし目の前の怒りむき出しのお母さんを見たらそうなるのも頷ける。だってすごいオーラ出てるし・・・
「あなたが翼君ね。凜から話はよく聞いています。なんでもご実家が喫茶店をやっているとかで」
「そうですね。自分が喫茶店で働いている時に凜さんと偶然会って、それで仲良くなりました」
「そこまでは私も承知しています。一つだけ質問をしてもいいかしら?」
「な、なんでしょう?」
「娘に何か手を出した?」
「だ、出すわけが無いでしょう!自分と凜さんはただの友達です!」
翼は顔を真っ赤にして否定の声を荒げる。そしておそらく私も顔が真っ赤になっているだろう。まったくお母さんは何を聞いているんだ!急にそんなことを質問するのは翼にも失礼なためやめてほしい
「ちょっとお母さん!翼になに聞いてるの?!そういうのは翼に迷惑だからやめて!聞くならせめて私でしょ?」
私もお母さんに言い返すために声を荒げてみたが、風邪のせいか思ったように声が出なかった
「凜あなたもただの友達の男子を軽々しく部屋に上げちゃだめよ。それも風邪を引いて弱っているときなんて尚更」
「前も言ったけど翼はそんなことはしない!私が信用しているから翼を家に上げているわけだし、結果こうやってしっかり看病をしてくれているの!これ以上翼に失礼なことを言うのは許さないから!」
私がもう我慢の限界なので今まで使ってこなかった強めの語気で言い返すとお母さんは、急に先ほどまでの迫力を失い、笑い始めた。
「何笑ってるの?!」
「ごめんなさい。実は私は最初から怒っていなかったのよ」
え?
「私的には少しだけテストのつもりで二人に色々聞いてみたかったの。仮に翼さんが凜に対して邪な気持ちを抱いて関わっているならすぐにでも二人を引きはがすつもりでした。でも翼さんは本当に凜を心配して看病をしてくれていることが分かったし、凜本人もそれを望んで居ることはよくわかりました」
なんだ・・・それならそうと最初から言っておいて欲しかった。結局今の一連の騒動で私の熱は数度上がったかもしれない。
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