第25話
お店で焙煎をさせて貰い更に珈琲について興味が沸き、夜遅くまで色々調べていたため今日は寝不足だ・・・それにどことなく体調も優れていない。もしかしたら熱があるのかもしれない。
今日のところは早く帰って早めに寝よう。
幸い今日の学校もやはり私たちに声をかけてくる人は居なく、いてもどうしても私に用がある人だけだった。
しかしそのおかげで私がずっと玲さんや翼君と一緒に居ることができ、特に興味もない人と喋ることをしなくていいのはすごく楽だ。
「随分とお眠だな」
もう帰る下校の時間だというのに席を経つ様子がないため気になったのか、翼君が話しかけに来た。
「分かります?」
「ああ。今日はあまり授業にも集中してない様子だったし、どことなく元気が無かったからな。体調が悪いわけじゃないよな?」
翼君は心配そうに私の顔を覗き込んできた。こんな彼の顔が近いのはなぜかいつも以上にドキドキしてしまう・・・
「体調は大丈夫です。本当に眠いだけなので大丈夫です。ご心配をおかけして申し訳ありません」
余計な心配は彼には掛けられないため、私は咄嗟に嘘をついてしまった。
「本当か?少し触るからな。良いか?」
しかし彼は疑っているのか、引こうとはせずにそのまま私の温度を測ろうとしてきた
「ちゃんと許可を取れるようになりましたね。えらいです。勿論触っても良いですよ」
私は少し意識が朦朧としながらもちゃんと私が注意したことをできていたため、褒めながらも彼に手を触れる許可を与える。勿論彼以外には触らせもしないため特別だ。
彼は少しためらいながらも、私のおでこのあたりを触ってきた。
「やっぱり熱あるよな・・・今から保健室行って熱だけ測ってすぐに帰るぞ。送っていくから」
「本当に眠いだけなのでそんなわざわざ保健室なんかに行かなくても大丈夫ですよ」
「そういうことは熱を測ってから言え。とにかく早く行くぞ。」
そう言うと彼は私の鞄と手を取って、保健室に足早に向かったため、私も観念してついていく。
途中ですれ違う人たちには指を差されながら色々言われていたみたいだが、そんなことはもう今更なので特に気にしない。前にいる彼も同じなのか特にこれといったアクションは無く、無言で保健室に向かって歩いていく。
「しつれいしまーす・・・って先生居ないのか。まあ別に良いけどさ・・・っと、ほらこれ」
彼は机の上に置いてある体温計を私に渡して、保健室内にあるソファに座りその隣を手でポンと叩いている。横に座って測れという意味だろう。
私は促されるままにソファに座り体温計を挟んでじっとする。体温計はひんやりするのが脇に当たるためあまり好きではない。
少しすると体温計が鳴り、ディスプレイに表示されている数字は『38.4℃』だった。
「ほらみろ。こんな高熱なのによく一日頑張れたな。つらかっただろ?」
彼は私が体調が悪いことを隠したことを怒るでも、詰めるでもなく最初に心配をしてくれたことが私にはとてつもなく嬉しかった。嬉しさで胸の中がぽかぽかしている。
「体調が悪いってよくわかりましたね・・・自分でもあまり分かっていなかったのに」
「まあ今の俺には凜とあの二人しか無いからな。熱があると分かっただけでも良かった」
自分には私しかいない・・・そうか。翼君の中で私は住谷さんと木戸さんの二人と同等の存在になれているのか。でもそれでも足りない・・・と思ってしまうのは流石に我儘かな・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます