第22話

「私の顔ってそんなに良いものなんですか?」


葵さんと別れ、学校に着いてからふと疑問に思ったことを翼君に聞いてみた


「急にどうしたんだよ?」


「いえ、私ってそれなりに顔が良いと言われるんです。お母さんにも言われたり、さっきも葵さんにそのようなこと言われたのですが、翼君にはそういうことを言われたことが無かったなと思って」


生まれてから今まで数えられない程の人間に外見を褒められた。身内、友達、まったく知らない人など様々だ。

そのため自分の外見が秀でていることは嫌でも自覚はしている。しかし私の記憶では翼君からは言われたことが無い。別に翼君がどう思っていても良いのだが、翼君にどう思われているかは私としても気になる。きっとこれからもずっと隣にいるので彼からの評価は聞いてみたい。


「翼君は私のことどう思っていますか?」


私は胸のあたりに手を置いて、少し彼を揶揄うように笑いながら聞いてみた。

普通の男子なら女性をストレートに評価するというのは難しいと聞いたが翼君はどうだろうか?


「どうって言われてもな・・・凜は確かに可愛いと思うぞ?いや、どっちかというと綺麗系の顔つきかな。綺麗なのにどことなく幼さを感じるみたいな?それに髪の毛も長いのにすごい綺麗に保たれていてめちゃくちゃ似合ってると思う。あと・・・」


「も、もう大丈夫です!具体的な評価ありがとうございます!」


「なんでだよ?まだまだ言えることはあるぞ?」


「うぅ・・・それ以上褒めると翼君を嫌いになりますよ!」


「えぇ・・・思ったこと言ってるだけなんだけど・・・」


彼はどうやら人を褒めるということに抵抗がないタイプの人らしい・・・自分から聞いといてなんだが、彼にこれ以上褒められると私が恥ずかしくて死にそうになる。というか、彼の歯に衣着せない褒め方はどうにかならないだろうか?あんなにストレートに褒められたら流石にどんな人間でも面を喰らうだろう


「凜の容姿が良いことはもう周知の事実なんだから、今俺が言った言葉は聞き飽きてるだろ?」


翼君は机に顎を乗せて、疲れた様子を見せた


「むぅ・・・確かにそうですけど流石にそんなにずばずば褒めてくる人はいませんよ。それが同級生になればなおさらです!他の女子に今みたいな褒め方したらだめですよ?色々と可哀そうなので」


「別に褒めてるんだからいいだろ・・・」


朝からこのような言い合いをしている所を見たクラスメイト達は、『またいちゃついているよ・・・』と声には出さないが内心全員呆れているのだった

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