第18話
「凛!おい!明何してるんだ!」
翼君だった
彼は随分焦った様子で、汗もかいているためどうやら走って来たらしい
「翼君・・・?どうしたんですか?・・・ひゃあ!」
気が付いたら私は彼の胸に抱かれていた。いや正確に言うと頭から覆いかぶさるように守られるように優しく抱かれているが正解だろう。彼の香水のような甘い良い匂いが鼻をくすぐる。彼の体温が伝わってくる・・・
まずい・・・このままだとブレーキが外れてしまう・・・
「明!お前姫に何かしてないだろうな!」
「何もしてねぇよ。それより早く姫を離して差し上げろ。顔真っ赤だぞ」
そう言われた彼はパッと私をすぐに離してくれた。よかった・・・あのまま抱かれていたら倒れていたかもしれない
「わ、悪い!り、じゃなくて姫!咄嗟のことだったから・・・怪我とかしてないか?!」
「だ、大丈夫です・・・それと少しの間私の方を見ないでください・・・」
私は顔を背けながらそう言う
今の私は彼の顔を真っ直ぐに見ることはできない。流石に恥ずかしすぎる・・・
「翼?戻ってこい・・・まあそう言われるのはしょうがねぇって・・・いきなり抱きつくのはお前・・・」
「しょうがないだろ!お前と引き離すためにはこれくらいしか思いつかなかったから・・・あ~姫?マジでごめん!」
彼は私に対して謝ってはいるが、本当に私の方は見ておらず明後日の方向をみながら謝っていた。
その姿がどこか面白く笑ってしまいそうになったが、それだけ彼は誠心誠意謝っているのだろう
「別に怒ってないので気にしないでください・・・でもそれはそれとしてこっちは向かないでください」
「そ、そう・・・わかった・・・」
「まあ、ドンマイ・・・」
彼の友人でもある木戸さんは彼の肩に手をやり、同情するように慰めていた
本当に彼にはパーソナルスペースというものはないのだろうか?今のが翼君じゃなかったらそのまま地面に叩きつけていたぞ?
彼はずっといたたまれない様子でいたが、急に「それより!」と言って今度は木戸さんに対してまくしたてるように質問を始めた
「なんで姫と明が一緒にいるんだよ?」
「別に?俺が姫に聞きたいことがあっただけだけど?」
「お前姫に何か変なこと聞いてないよな?」
「何も変なことなんて聞いてねぇよ。本当にただの世間話程度だ」
「それじゃあ姫に触ったか?」
「指一本触ってません。なんだ?なんでお前がそんなことを気にする?」
「それは・・・」
「ていうかお前さっき姫のこと凛って呼んでたよな?二人って名前呼びするくらい仲良かったの?」
「・・・お前には関係ない」
「・・・! ああそうかい。まあ仲がいいことは良いことだ。これ以上は俺も何も言わないよ」
「なんだその顔!マジで俺たちはそういう関係じゃないからな」
「それは分かってるよ。俺はただ翼って案外かわいいとこあるなって思っただけだよ」
「お前にかわいいとか言われても気持ち悪いだけだ」
「俺も言ってて鳥肌が立ったよ。じゃあ俺は帰るから姫のこと頼んだぞ。姫!今日は突然ごめんね!あとは翼を頼って!じゃあね!」
木戸さんは足早にそう言うと行ってしまい、気まずいままの私たち二人が残されることになった
「凛?大丈夫か?」
「はい・・・落ち着いて来ました」
「そうか・・・それじゃあ俺たちも帰るか」
「今日も翼君のお家に行ってもいいですか?」
「もちろんいいぞ。今日は何飲みたい?」
「WIngブレンドが飲みたいです・・・」
「そうか。じゃあ行くか。とっびきりうまいやつ作ってやるよ」
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