第12話
中々乗らない電車に20分程揺られ、駅から10分ほど歩いたら昔ながらの木造の大きな建物が見えてきた。
建物の前の大きな門の表札には鷹藤と書いており、この建物が私の家でもある鷹藤邸になる。
門をくぐると広い庭に様々な木や花が植えられており、季節が変わるごとに庭師の方が剪定をしているのを見かける。特段目立つのは大きな松の木で、この木は家が建てられた時に一緒に植えられたものだそうでもう数百年はここにあるものだそうだ。
建物の外観は趣があるが、中も木造なのかというとそうでは無く時代ごとにリフォームをしており中は他の家と変わらないつくりになっている。しかし客間や大広間などはお客様も上がられるため品位があり、歴史も感じられるように畳や使われている木も拘って作られている。
玄関を潜りリビングに入るとキッチンのほうから聞きなれた声が聞こえてきた。
「おかえりなさい、凛」
「お母さんただいま」
私の母である鷹藤 瞳(たかとう ひとみ)だった
元モデルでスタイルも良く、モデル時代も様々な雑誌やテレビにも出ておりこれからもっと売れだす!というときに芸能界からの電撃引退から今の鷹藤家当主でもあり、私の父と電撃結婚をするという、中々の人生を歩んでいる人だ。
綺麗な黒髪に整った顔をしており、学生ですと言っても信じる人もいるくらい若々しく私の外見は母の遺伝子を色濃く受け継いでいると思う。
「今日は少し遅かったわね?また玲さんと遊んできたの?」
「いえ、今日はクラスの男の子のお家にお邪魔してきたの」
私がそういうとお母さんは持っていたお玉を床に落として、絶句をしていた。
「り、凛が男の子の家に・・・?」
「お話したいことがあっ・・・」
私がそう言いかけたところでお母さんは料理を放り出して興奮した面持ちで私のところに駆け寄ってきた。さすがに火は止めてきてから来てほしい。
「ど、どんな男の子なの?!何かされたわけじゃないわよね?もし何かされたならしっかり言って!そしてその子を家に連れてきて!」
「落ち着いて!私は別に何もされてないし話したいことがあったから行っただけなの!あと料理の火は止めてきて!」
「ああ、そうね・・・ごめんなさい」
お母さんはそういうと素直にキッチンに火を止めに行き、それからまた私のところに来た
「それで凛が男の子の家に行ったって本当なの?全く男っ気が無かった凛が自分から?」
「恋愛感情なんてないし只のクラスメイトの家に行くくらいおかしくは無いでしょ。それに彼のお家は喫茶店だから!正確に言えば喫茶店に行っただけ!」
私がそういうとお母さんは露骨に残念がっていた。何が不満なのだろうか
「なーんだ、つまらないの。凛にもやっと春が来たのかって喜んだのに損した」
「別に私には春が来なくても良いんだけど・・・」
「何言ってるの!高校生の時に恋愛しないと一生恋愛できないかもしれないのよ?!凛はもっと異性に対して興味を持ちなさい。せっかく綺麗な顔で生まれたのだからもっとそれを有効活用しないと」
「実の娘にそんな事を教えないで」
「そう?綺麗な顔っていうのは涙と同じくらい女の武器なのよ。凛に言い寄られて落ちない男なんて絶対にいないから自信を持ちなさい」
「その根拠は?」
「私の経験から」
「ああ・・・」
私の母はどうしてこうも娘に対して恋愛をさせたがるのだろうか?私が悪い男につかまっても良いのだろうか
それにしてもお母さんそんなに他の男の人に言い寄ってたの?知りたくなかったし、顔が似ている私にもそれができてしまうというのも知りたくなかった。
「男の子ってどんな子なの?かっこいい?」
「なんでそんなこと知りたいの?お母さんには関係無いでしょ」
「娘の友好関係が気になるのは親としては当然でしょ?それにもし悪い男だったら凛がその気がなくても相手に襲われることもあるのよ。『男は獣』これは覚えておきなさい」
「翼くんはそんなことはしない」
「ふーん、相手の男の子は翼くんっていうんだ」
「そうですよーだ!写真は見せないけどね!」
私はこれ以上お母さんに何言っても無駄なのは分かったためやけくそで名前だけ教えて、すぐに部屋へと向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます