第9話
「それじゃあ、ご注文は?」
彼は腰のあたりに手を当ててそう聞いてきた。
彼の制服姿はやはりかっこいい。髪型も違うからかもしれないがまず、まとっているオーラが違っている。
私はメニューを見ながらもまた前回と同じ事で悩む
「うーん・・・そうですね、またWingブレンドでも良いんだけどどうせなら違うやつのも飲みたいですね翼くんのおすすめは?」
「俺?俺は本当にWingブレンドが一番好きだからなぁ・・・じいちゃんに聞いてみな。じいちゃんならしっかりとしたおすすめ聞けるだろうから」
「じゃあ誠さんのおすすめで!」
私は少し遠くで何か作業をしているようだった誠さんにおすすめを聞く
「私かい?私のおすすめはやっぱりマンデリンかな」
「マンデリンですか?」
「そう。マンデリンは酸味が控え目で苦みが強い豆なんだけど、コクもあって舌触りが良いから飲みやすいんだ。この豆は日本でも昔から飲まれている豆だね」
「へー・・・じゃあそのマンデリンをお願いします!」
「かしこまりました。マンデリンね」
彼はそういうとそう言うと、豆を取り出し前回のように手動のミルで豆を挽きだした。
このガリガリしている時の音は私は好きできっといつまでも聞いていられるだろう。
豆を挽き終わった翼くんは金属製のフィルターを用意してドリップする準備を始める。
「凄い手際がいいし、急いでますね・・・ゆっくりでも大丈夫ですよ?」
彼の動きは素早く、何か凄く急いでいる様子だったため、一応彼に言葉を投げかけてみた。
「ああ・・・これは違うんだよ。挽いたばかりの豆は空気に触れちゃうと酸化しちゃって味が落ちてしまったり、不味くなっちゃうんだよ。だからこうやって急いでるんだ」
「ああ、なるほど・・・てっきり私を待たせまいとしているのかと思ってたんですが、自意識過剰でしたね」
「いや、姫のために作ってるんだし実際待たせる訳にはいかないからこれでもいつもよりは急いでるよ」
「そ、そうですか」
危ない危ない危ない・・・急にそういう発言をするのはやめてほしい。私は学校での彼のイメージが強いのだ。そういう発言はギャップで心臓が悪い。
私が彼の知らないところで今の言葉をくらっているとどうやらドリップが終わったようで、カップに移していた。
「お待たせしましたっと、マンデリンになります。もしかしたら苦みが強いからミルクや砂糖を入れてね」
「ありがとうございます、頂きます。」
口に入れるとWingブレンドとは違い珈琲の苦みが強いが、酸味は弱く誠さんが言った通り飲みやすいと思う。
仄かにハーブのような風味も感じる。一言で言えば「良くイメージする珈琲」のような味だろうか。
「美味しい・・・」
「そかそか、姫にそういってもらえて良かった。飲みにくいなんて言われたら立ち直れなかったかもしれないからな」
「翼くんの珈琲を淹れる腕は先週来た時に分かってるので大丈夫ですよ?毎日飲みたいくらいです」
「嬉しいことを言ってくれるねぇ。それじゃあ一緒にいる時なら何杯でも淹れてやるよ。」
なんか今の言葉は最近見た少女漫画のセリフみたいだなと思い、勝手に恥ずかしくなり咄嗟に誠さんの方を見ると誠さんは私たちのそんなほわほわした会話を遠くで見ているだけだった。
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