第3話

昨日の翼くんの店員姿を忘れることができずに夜を悶々と過ごし寝不足になりながらも、私は学校に登校をするために通学路を歩いている。すると目の前に見覚えがある栗色の髪の毛の女子が歩いていた。


「玲さんおはようございます」


「姫!おはよう~!今日も随分とお嬢様してるね」


「私は姫でも無いです!何回言わせるんですか?」


「はははっ、ごめんごめん。姫って本当にお姫様に見えるからさ。別に悪口を言われてるわけでもないから少し多めに見てよ」


「私の名前に姫なんて文字入ってないのに・・・」


この姫と呼ばれているのが私。

学校で皆には愛称として姫と呼ばれている。私の名前には姫なんて文字は入っていないから本当に第一印象から決められた愛称らしい。知らない間に呼ばれていたから、誰がそう呼び始めたかは分からない。もし呼び始めた人が分かったら一発殴りたいと思っている。


そして今私と喋っているのが友人の安藤 玲(あんどう れい)

入学初日に仲良くなったショートボブが可愛い女の子だ。染髪をしておりその髪は栗色になっており、廊下ですれ違う人の目を奪っている。彼女の少し儚げな顔立ちにはミスマッチな髪色かもしれないがとても似合っている。校則違反のはずなのだが、教師陣からは特に何も言われていないため不思議なものである。


「姫は姫だから今更名前で呼ぶのもね~、まあ可愛いって事には変わりないし私は好きだよ?この愛称」


「可愛いのは分かりますが・・・でもなんで玲さんも姫呼びをするのですか?入学当初は普通に名前で呼んでくれていたのに・・・」


「うーん、姫って呼び方があってるから?」


「どこらへんがですか?」


「その綺麗な言葉遣いに、さらには絶世の美少女、さらには血筋も良いと来た!そりゃあ皆お姫様呼びしたくもなるよ」


「私は普通のお家生まれですよ」


「よく言うよ!あの鷹藤家(たかとうけ)のご令嬢が!私以外には普通のお家生まれとか言っちゃ駄目だよ?」


「はいはい」


「はいは一回!」


「はい・・・」


そう、私は普通の家の生まれでは無い。

私の生まれの家である「鷹藤家」は所謂名家と呼ばれる家である。昔から代々続く由緒ある家であり、政治界や財政の人物ともコネクトを持っているため外交関係などの話も入ってくる。

そして、その家の一人娘が私ということになる。


「こんなこと言うべきじゃないっていうのは分かってるけど、もっと外での振る舞いには気をつけなね?家の評判にも繋がっちゃうんだから」


「分かってますけど・・・元々の性格がぐうたらなのでしょうがないです」


「開き直らないでよ・・・」


元々私はぐうたらな性格なのだ。家では大体寝っ転がってだらだらしているし、休日なんて外に出ないときはずっとパジャマの時もある。別に誰も見られないからいいよね?


「私はご両親にも娘が外で粗相をしないようにって頼まれてるんだから少し口うるさくなっちゃうけど許してね?まあ姫がそんな粗相をするとは思ってはないから大丈夫だとは思うけど・・・」


両親は玲さんの事を大層気に入っており、この前家に遊びに来た時も私よりも玲さんと喋っていたと思う。まあその喋っている内容が学校での私の様子や、振る舞いなどについてなどだったため私は両親から見たら相当ぐうたらに見えているらしい。


「それは分かっているので大丈夫ですよ。私自身も家の評判は落としたくはないので気を付けます!危ない時はお願いしますね?」


私は少しいたずらに笑いながらも玲さんに引き続きこのぐうたらのフォローをお願いすることにした。

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