第59話 海のF1
ダークエルフのエクレールたちが乗って来た船は大ダコに壊され。
大ダコは、エルフのシューさんに倒され。
こんがり焼けた大ダコは、シーサーペントに食べられてしまった。
そんな中、エルフのシューさんは、大ダコの魔石をちゃっかり手に入れていた。
長寿なだけあって、しっかりしているな。
シーサーペントは大ダコを平らげ満腹したらしく、満足そうに沖へ戻っていった。
白い砂浜に平和が戻ったが、ダークエルフたちの精神的なダメージは大きい。先ほどからエクレールが頭を抱え嘆いている。
「あー! 船が! 船が!」
「えっと……ドンマイ。海岸に様子を見に行こう」
俺たちは、海岸に戻り船……の残骸とご対面した。
既に原形をとどめていない。
恐らくこの木製の丸い柱はマストだろうなぁ……とか。
たぶん、この三角形の木片は舳先かなぁ…とか。
修理してどうにかなるレベルではないのだ。
「エクレール。この船はどんな感じの船だったの?」
俺はエクレールに船の説明を頼んだ。
エクレールは、砂浜に指で絵を描き、身振り手振りを交えて説明してくれた。
どうやら木製の双胴船で、俺の感覚だとヨットが近い。
「割と小さな船なんだな」
「うむ。小回りが効いて良い船だった」
エクレールたちが乗ってきた双胴船は、ダークエルフの村では一般的な船だったそうで、漁にも、旅にも使えて、使い勝手がよかったらしい。
壊れた船はダークエルフの里の共有財産だったそうだ。
なるほどな。
これではエクレールたちがダークエルフの里に帰るのにも困るし、共有財産を壊しましたでは怒られてしまうだろう。
俺の領地で魔物に襲われたなんて、俺の領地のイメージダウンになる。
移住を取りやめられては困る。
俺はダークエルフのエクレールに請け負う。
「わかった。船は俺が用意するよ」
「えっ!?」
エクレールは驚いているが、生産スキル【マルチクラフト】で何とかなる。
それに海は開拓したかったので、良い機会だ。
問題は船の種類だよな……。
スワンボートというわけにはいかないし。
大航海時代のガレオン船じゃ、生成も大変だし、船の操作も大変だ。
操作性を考えると、大ダコに壊された船と同じ双胴船が良いだろう。
「同じような双胴船で良いか?」
「ああ。慣れているからな。私たちは助かるが、本当に良いのか?」
「任せろ!」
実は作りたい船がある。
海のF1と呼ばれた高速船F50だ。
ジャンルとしてはヨットだが、普通にイメージするヨットとは違う。
なんと最高時速は100キロ超えだ!
細長い双胴艇。高いマスト。
そして可変式の水中翼を備えている。
スピードが出てくると水中翼が水をとらえるので、船体が海上に浮くのだ。
前世日本でF50のネット動画を見たが、非常にエキサイティングな高速ヨットレースだった。
興味を持って詳しい情報を調べたことがあるので、構造も分かる。
レースでは登場クルーが五人だったので、エクレールたちに丁度良いだろう。
後は、この辺り一帯の海岸から魔力を抜いておこう。
そうすれば、海の魔物が寄りつかなくなるだろう。
大ダコやシーサーペントは、もうゴメンだ。
「じゃあ、領主屋敷に帰ろう」
俺はみんなを引き連れて領主屋敷に戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます