第29話 に、妊娠?
通い夫をし始めてもうどれくらいだろう……二ヶ月? もう一緒に住もうかな。
ん〜そうするとやっぱり部屋も狭いしなぁ……やっぱり引っ越そう。
そんなある日曜の朝、ラムが……。
「生理、いつもよりも一週間以上遅れているの……」
「!」
「基礎体温も測ってたんだけど、『高温期』が三週間くらい続いてる……それに、ニオイで時々気持ち悪い……」
「!!」
「もしかしたら……」
「うん……」
「今すぐ検査キット買ってくる!」
オレは急いで服を着てドラッグストアに……あ〜そういえば、日本酒飲んで『つけない』でした時もあったな〜なんて思いながら駆け込んだ。
でもいきなり『妊娠検査キット』ください!って言って売ってくれるんだろうか? どんなのがあるのか? 幾らなのかなのも考えずに来てしまった。
幸い、感じの良さそうな中年の女性の薬剤師さんがいたので、聞いてみた。
すると、「五百円代から二千円くらいのがありますけど、はじめてですか?」と聞いてくる。
「あ、はい。生理が一週間以上遅れてて、基礎体温が三週間くらい高いみたいで……」と聞いたことを伝える。
「じゃ、初めてなら二回検査できる、これで大丈夫かな〜」と千円台で、『99%以上の正確さ! 1分から3分待つだけで妊娠の判定ができるキット!』を勧めてくれた。
勧めてもらった検査キットを買って、急いでマンションに戻る。
「ラム! 買ってきたぞ〜 早速検査してみよう!」
「う、うん……でもちょっと待って。まだ心の準備が……」
「そ、そうだよね……ごめん、先走って」
「いいの。気遣ってくれて……」
「じゃ、落ち着いたら検査してみようか」
「うん……だから……抱っこしてて……」
しばらくして、検査キットを持ってラムがトイレへ……なかなか出てこない。
あれ? 一分から三分で判るって説明聞いたと思ったんだけど……結果でないのかな?
十分くらいしてやっと出てくる……。
手に持った検査キットには『赤紫』の線……『陽性』……つまり妊娠!
「うわ〜オレ、パパなんだ〜! ラムはママだよ〜!」
「ええええ、産んでいいの〜?」
「あたりまえだろ〜! 二人の赤ちゃんじゃないか〜!」
「良かった〜嬉しい〜」ラムが泣き出す……。
「わたし、てっきり忍さんが『産むな』っていうかと……」
「オレがそんなこというわけないだろ〜……それで出てくるのが遅かったんだ……」
「う、うん……」
「明日時間作って、産婦人科に行こう……」
「うん!」
昼過ぎムツミさんに、明日ラムとオレが有給を取るため、連絡をした……。
「有給は構わないけど……え? なんで二人ともなの? お店どうするの〜?」と聞かれたので、ラムと付き合ってること、そして妊娠の可能性があることを伝えると……。
「あらあら〜 しのぶちゃんも隅に置けないわねぇ〜 わかった、お店は……カズミさんに一日代理で店長入ってもらうから、安心して行ってらっしゃいね。ん〜そっか〜、しのぶちゃんがねぇ〜ふふふ なんか私、おばあちゃんになった気分だわ〜」
「お、お母さんかい!」
「あはは〜 あ、報告待ってるからね〜」
う〜、ムツミさんはいいけど、カズミさんに借りができてしまった……しかもこれで全社員に知れ渡っちゃうなぁ……ま、いっか〜
「ね、どこの病院がいいかな?」
「やっぱり大きい『TS市民病院』がいいんじゃないかな?」
「ね、予約って必要なのかな?」
「ちょっと待ってね……あ、WEB予約取れる。明日の十三時空いてる!……予約取る?」
「う、うん」
「じゃ予約ページ……ラムの名前で……住所・電話番号……携帯でいいよね? ……あ、あと保険証番号……よし! 取れたよ〜」
「ありがと〜 ね、明日は保険証と……お金はいくらいるのかな? あとどんな服装かな? やっぱりパンツ脱ぐからワンピースのがいいかな? あああ不安だぁ〜」
「大丈夫だよ、診察室には入れないけどオレも一緒に行くし……」
「そ、そうだよね〜」
ラムの不安、少しでも和らげなきゃ……オレだって不安だけど……。
「あ、『服装は触診、内診があるので、スカートでもパンツでも、シンプルで着脱のしやすいものがおすすめです』だって」
「そっか〜 ようだよね……忍さん以外に触られるのやだなぁ……」
「ば、莫迦」
「あ、『基礎体温表』と『生理用ナプキン』持ってくといいって書いてあるよ……お風呂やシャワーは前日でもいいって」
「基礎体温つけといて良かったぁ〜」
「そうだね……でもラムがつけてるのは知らなかったなぁ」
「ん〜、これは女子の基本だよ〜?」
「そっか〜 オレ、女子っても全然気にしたことないや」
「あははは」
「あといろいろあるな〜『最終月経の開始日、過去にかかったことのある病気などの既往歴。いつ頃、どんな病気だったか。親族の高血圧などの既往症……』あ、あと『妊娠検査薬を使用した人は、どんなタイプの検査薬で、結果が、いつ、どのように出たか』だって。これは検査キット持っていけばいいかな?」
「うう〜いろいろ面倒だねぇ〜」
「最初の関門だね……」
「今日はおとなしく早寝しようか……」
「そ、そうだね……赤ちゃんびっくりしちゃうし~」
「あははは」
*** 産婦人科 ***
翌日十二時半過ぎにTS市民病院の産婦人科へ。
予約番号を伝えて、初診受け付けしてから『問診票』をもらい記入……十数項目、結構多い。
「これってWEBでも入力できたんだ……ごめん気づかなかった」
「え、いいよ〜 忍さん予約してくれたおかげで来れたんだから」
「そ、そう? よかった」
「安藤様、安藤ラム様〜」
「あ、呼ばれた……じゃ、行ってくるね〜」
「う、うん……なんかわかんないけど、頑張って!」
「あははは」
ん〜待ってる間、手持ち無沙汰だなぁ〜周りを見るとペアで来てる人や、女の人だけで来てたり……妊婦さんやそうじゃない人とかいるな。
オレも女子ったままになったら、ここにお世話になるのか……なんか複雑。
四十分くらい経ったころ、ラムがにこにこして戻ってくる。
周りを気遣ってか小声で「忍さ〜ん、パパおめでとう〜」
「やったね!」
「うん! 妊娠五週めだって〜」
「五週間前? いつ頃だろう?」
「あ、妊娠は、最終生理開始日が起算だって教わったから、実際に『した』時じゃないんだって……だから」
「ってことは……あ、もしかしてあの花見の日? ラムったら積極的だったし」
「あ〜〜〜そうかも! 照れちゃうな〜」
「とにかくおめでとう! ラムママ!」
「うん! あ、あとね早くて十四週くらいで男の子か女の子かわかるって……それから『安定期』まで、えっちしちゃだめだって……それからえ〜っと、あと八ヶ月くらいで生まれる予定!っ てことはもしかしたらクリスマス? あとはお酒もタバコも控えて……『母子手帳』も役所で……」
「うん、うん、わかったから少し落ち着いて……今日はお家に帰ろう?」
「あ、ごめん……なんか興奮しちゃって」
「やることいっぱいあるから、『やることリスト』作って……前から考えてたんだけど、二人……いや三人で暮らすために引っ越ししよう」
「そうだね!」
二人に幸せが訪れた……かのように思われたが……
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