第28話 そうだ、花見行こう

 桜が満開直前に、何日か雨が降ったり、寒い日が続いた土曜日。 

 うん、明日の天気は『晴れて暖かい』って予報だからお花見に行こうかな! 

  

 携帯で再度明日の天気と、TS市の桜の名所をポチポチ見てると……。 

「店長、何見てるんですか?」と、ラム。 

「うん、明日天気良さそうだから、お花見にでも行きたいな〜と思ってさ……」 

「お花見! いいですね〜 ……ね、店長、たまにはお店のみんなで行きません? 去年はちょうど見頃の日曜日は雨で行けなかったし……」 

「え? 明日は二人きりじゃなくてもいいの?」 

「……来年は店長、男じゃないかもしれないから……そのこと、まだお店の子はだれも知らないから、今のお店のメンバーで行きたいかなって……」 

「……」 

「そんなしょんぼりしないでくださいよ……みんなの思い出づくりですよ〜」 

「う〜、それってなんか亡くなった人を偲ぶ会……みたいな複雑な感じ……」 

「そ、そうですね……イヤですか?」 

「大丈夫。じゃ、みんな明日お花見に行けるかどうか聞いてみて? あとオススメのお花見の場所とか……」 

「は〜い」 

 そっか……来年は男じゃないかもしれないんだよな……うん、今を楽しむしかないよな……。

  

「店長、ぴーちゃんがお花見の穴場知ってるんですって! そこなら人も少ないし、今なら満開らしいですよ〜」 

「へ〜どこ?」 

「TS市駅からちょっと奥の方の『TS市立森林公園』って所らしいですよ〜」 

「行ったことないなぁ〜TS市に住んでても知らない所ってあるんだなぁ」 

「明日はみんな行けるっていうし、お弁当作れる人はお弁当作って持ってくるって言ってるから……わたしも今晩、お弁当作ろっと! あ、あとお酒も持ってかなくっちゃ!」 

「ほんっと、お酒好きだな〜」 

「お花見にはお酒は付きものですよ〜」 

  

 仕事帰りに一緒にいつものスーパーで夕食と明日のお酒とお弁当用の買い物をし、てラムの家に。 

  

 ラムが夕食とお弁当の仕込みをしている間に男に戻る……今日はいつもよりまた少し時間がかかる……少し不安だけど、そのときはそのときだな。 

  

*** 公表 *** 

  

 日曜日、いい天気だ! 

 六時に起きて支度して、荷物を用意してお弁当も詰めて……。 

  

「こんなに早起き、久々〜 空気が気持ちいい!」 

「今日は楽しみだね〜」と言いながら、待ち合わせの八時より早めにTS市駅に二人で到着。 

 と、ぴーちゃんもう来ている! 

  

「あっれ〜? 店長とチーフ今日もいっしょですねぇ〜❤︎ やっぱり付き合ってるんじゃないですか〜」 

「あ、いや、たまたまだよ、たまたま!」 

「そ、そうよ、ぴーちゃん……」 

「ま、そういうことにしておきましょうかねぇ〜」 

 と言ってる間に、バイトのユリちゃんとユユちゃんも到着。 

  

「これで全員かな〜? じゃ、ぴーちゃん、ガイドよろしく〜」 

「はいは〜い」 

  

 みんなでTS市駅から約三十分の『TS市立森林公園駅』まで、電車に乗り込んでわいわいとピクニック気分。 

  

 目的地の駅の改札を出ると、目の前はもう公園で、桜が満開! 

  

「うわ〜キレイ!」 

「ん〜みごとだね〜」 

「ほんと、思ったよりこんな近いところに桜の穴場あるなんて知らなかった! さすがぴーちゃん!」 

「えへへ〜」 

「早い時間だから、まだ人も少ないね〜」 

  

 早速、一番大きな桜の木の下にレジャーシートを広げて……。 

  

「朝早かったから、朝ごはん食べてないんです〜」とぴーちゃん。 

「じゃ、せっかくお弁当もみんな持ってきたから、もうお花見始めようか!」 

 と花より団子でお弁当を広げる……当然お酒も朝っぱらから。前にも話したかもだけど、ネイリストは喫煙率と飲酒率が高い。 

  

 みんな自撮りで全員の写真を撮ったり、わいわいと賑やかだ……。 

 ラムはなんだかいつもよりお酒のピッチが早いような……そのうち隣にぴたっとくっついてくる。 

  

 それを見て「ぴーちゃん先輩、チーフと店長って……やっぱり付き合ってるんですかね?」とユリちゃんが聞いてるのが聞こえる……。 

「うん、二人は絶対付き合ってる! 間違いない!」 

  

 それが聞こえたのか、ラムが突然、「うん! わたしとてんちょ〜はつきあってますよ〜だ! ね、しのぶさん!」と言い出す。 

  

 あちゃ〜、言っちゃった……。 

「うわ〜、忍さんだって〜」 

  

「ラ、ラム少し飲み過ぎ……」 

「え〜ほんとのことじゃないですか〜 いい機会だから記者会見しちゃいましょうよぉ~」 

  

 あ〜もうなんだか完全に出来あがっちゃってる……。 

  

「うわ〜! やっぱりぃ! あやしいとは思ってたんです〜」 

「ひゅーひゅー」 

「お似合いですよ〜」 

「子供は何人欲しいですか〜」 

  

 あとは野となれ山となれ……。みんなも酔っ払ってるし……。 

  

 ま、これでこそこそしないで付き合えるからいっか〜って、こそこそしてなかったな? 

  

  

 わいわいやってる間にあっという間に日がかげる時間、少し肌寒い。 

  

「じゃ、もうそろそろ夕方も近いし、今日のお花見はお開きにしようかな?」 

「そうですね〜」 

「じゃ、片付けしますか〜」 

  

 TS市駅まで戻って、解散。 

  

「じゃ、また明日からよろしく〜」 

「は〜い、お幸せに〜」 

「はいはい」 

  

 二人でラムの家に戻る。 

「忍さん、ちょっと早まっちゃってごめんなさい……」 

「いいんだよ、これで。みんなも薄々気がついてたみたいだし、良かったと思うよ」 

「うん……」 

  

 軽くお弁当の残りで夕食を摂って、お風呂は狭くて一緒に入れないから、先にラムが入って、その後お風呂から上がると……。 

 ラム、タオル一枚だけでベッドに座って、「みんなに祝ってもらって嬉しかった……。ゆ、ゆうべはしなかったから……今日は……いっぱい抱いてください……」 

  

「うん……ラム!」 

「忍さん、大好き……」

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