第24話 初デートです
*** 明日はデート 中島忍・前日の夜 ***
明日はラムと男での初デート……なにしろ女の子同士デートのが先だったからなぁ。
今日は先に男に戻っておいてからお風呂に入って……もしかしたらもしか……なので丹念に身体洗っておこう!
ちょっと緊張してオフを始める……。
え? なぜって?
ほら、この前みたいに男に戻る時間がすごくかかった時あったじゃん? あれ以来、オフするのがちょっと怖いんだよね……そのまま女子のままなんじゃないかって。
けど、今日はそれほどかからず、無事男に戻れて一安心。
この何週間かは女子化も男に戻る時間もそれほどあのときみたいにかかってないから、女体化促進剤の作用も少なくなってる? ……といいな。
久々に男の姿で湯船に浸かって色々妄想……。
この前、泣いてる時とか帰り際にハグして気づいたんだけど、ラムって結構スタイルいいんだよなぁ……一緒に店の子たちと女子ってプールにも行ったりもした。五年も一緒にいたのに女の子として見てなかったから気にもしてなかったんだろうな。
胸、女子ったオレより大きいのわかってたけど、柔らかかったな〜久々の感触だったな……。
あ、やべっ! 勃ってきちゃった……。
そうだ、明日コンビニで……。
*** 明日はデート 安藤ラム・前日の夜 ***
明日は男の店長と初デートです……女の子同士デートのほうが先だったなんてもう〜!
そうだ、もしかしたらもしか……なので丹念に身体洗っておこう❤︎
お風呂に浸かって色々想像……。
この前、泣いてる時とか帰り際にハグしたけど、あのときは店長、女の子だったしな〜男のときの店長は中肉中背でわたしより5センチしか背が高くないけど、どんな感じで抱っこしてくれるかな?
下着……何にしよう……やっぱり可愛いのにしておいた方がいいよね。
あ、そういえば店長、わたしのことちゃんと『ラム』って名前で呼んでくれてるけど、わたしってば、いまだ『てんちょ〜』としか呼んでなかったかも……
ちゃんと『忍さん』って呼ぼうかな……そうだよね……。
「忍さん……、」
あ、口に出すとめちゃくちゃ恥ずかしいなぁ……『てんちょ〜』でいっか~
お風呂から上がって髪、乾かしてから……下着選びしよっと❤︎
あ、それから……そうだ……。
*** 初デートです ***
春分の日も過ぎた、春めいて桜もそろそろ満開になりそうな、いい天気の日曜日。
十時にラムとTS市駅で待ち合わせ。今日はTS市を離れてTOKYOの水族館へ……そのあとは『あまり高級じゃない』レストラン――流石にファミレスじゃない――のプランを考えた。
『初デートで行きたい場所ランキング』を参考にして、ラムに「水族館ってどう?」って前日にこっそり聞くと、「TS市には水族館ってないから行きたいです!」と、好感触だったし。
そして、あまり高級じゃないレストランってのは理由があって『初デートで行きたくない場所』の上位は『高級レラストラン』なんだよね。
理由は『背伸びしたような〜』とか『緊張して食べにくい』ってのが多かったんだ。
ま、でも今まで付き合ってたわけじゃないけど、同じ職場で五年も一緒だからお互い緊張も何もないんだけど、一応初デートだからね……。
九時四十五分にTS市駅につくと、もうラムがいた!
「え〜、ラムちゃん早い!」
「だって……待ち遠しかったし……」
今日のラムは胸元がくしゅっとなっているホワイト系ワンピースにこちらもホワイト系のシースルーメッシュブーツ……セミロングヘアにお似合いだ。
「ラムちゃん、お嬢様みたいで可愛い!」
「え、え、ふ、ふつうですよ〜」
オレは紺ブレ――制服じゃない――にチノパン、茶色のローファー――まぁ普通かな?
「てんちょ〜は……相変わらず普通ですね〜 ふふっ」
「まぁね……」
行きの電車はちょっと混んでたんで、今日はわたしにラムが抱きつくような格好で電車に揺られて目的地の駅まで……今までとは逆で新鮮!
水族館は、『あの高いビル』にある水族館……二人とも初めて行ったけど、白い砂の海底が広がってるラグーンとかイワシの群れとか幻想的な無数のクラゲとか……手を繋いで二人で結構長い時間見入ってた……
屋外エリアの天井水槽を泳ぐペンギン! これにはラムは大はしゃぎ! 子供みたいだ……。
「てんちょ〜、こっち、こっち! ここで二人で写真撮りましょうよ〜!」
とスマホ取り出して二人並んで……「もしかして、初めての二人だけでの写真ですねっ! あとでプリントしちゃお!」
嬉しそうだ……こっちも嬉しくなるな〜
屋外エリアのコーヒーショップで一休み。
「天井の水槽泳ぐペンギン、すごかった〜」とラム。
「うん、あんなの初めて見たよ」
「アシカのパフォーマンスも可愛かった!」
ゆっくりまわったんで、二時間半くらい観てたかな?
TS市からの移動時間もあったから、そろそろお腹も空いてきた……。
「お昼、何にしようか?」
「ん〜今日は……パスタの気分。……かな?」
「炭水化物はダメなんじゃないの?」
「いいの〜」
「じゃ、このビルに『洋麺屋 次元』があるからそこかな?」
「うん!」
ラムはボンゴレビアンコ、オレはペペロンチーノ……あ、ニンニク……ニオイやばかったかな? ま、ボンゴレにも入ってるから、いっか。
TS市とは違った大都会でウィンドウショッピングしながら二人でぶらぶら……。
「あ、てんちょ〜、今度このワンピなんて可愛いんじゃないかな〜」
「え、なんでオレの服……」
「あ、あはは 自分のは好みわかってるから、てんちょ〜だったらどれが可愛いかなぁ〜って」
「う〜 オレは着せ替え人形か!」
「え〜、だってちっちゃくって可愛いし〜」
「ね、ラム……オレのこと、『てんちょ〜』って呼ぶよね〜 おんなじように名前で呼んで欲しいな〜」
「え……は、恥ずかしいですよぉ……」
今どきの高校生よりも初心いなぁ。
「じゃ、し、しの……うっわ〜恥ずかしい〜だめ〜 やっぱり『てんちょ〜』としか呼べなぃ〜」
「じゃ、こっちはチーフって呼ぼうかな〜」
「そ、それはダメです〜」
「なんだよ〜」
いちゃいちゃしてると時間が経つのも早い……。
「もう夕ご飯の時間ですね……てんちょ〜、どうします?」
「ん〜実は『肉バル』に行こうかな〜って思ってるんだけど……どうする?」
しばらく黙ってたラム……意を決したように、
「……わ、わたし……ほ、ほんとは、てんちょ〜のマンションに行って晩御飯作って……」
うわっ、ラムって意外に大胆!
「で、でも、女性専用マンションですよね? だからわたしの……う、うちで一緒に……」
「えっ?」
*** ラムの手料理 ***
「ラ、ラム? それって……」
「は、はい……わたしのうちで手料理……食べてもらいたいんです……わたし、料理得意なんですっ!」
「う、うん! 嬉しいなぁ〜」
「……良かったぁ〜 ダメかと……」
「え、なんで? 断るわけないじゃん!」
「じゃ、おうちに帰る途中で食材買いましょっ! 何が食べたいですか?」
「やっぱり肉……ジューシーなステーキ!」
「じゃ、安くてもいいからお肉に合う日本酒も買っちゃおう〜」
「えっ? 赤ワインじゃないの?」
「え〜、てんちょ〜知らないんですか? 味付けの濃い肉料理や、ステーキには純米酒が合うんですよ〜 特に純米吟醸酒がおすすめですよ〜お客様~ お肉と日本酒との相性の良さにびっくりしますよ〜」
「へ〜知らなかった! さすが日本酒好きなラムちゃん」
「へへ〜」
「じゃ、肉と日本酒だけはTS市じゃなくて、こっちで買った方が種類もあるからそうしない?」
「うんっ! じゃ〜まずは……」
買い物を済ませて、お酒と食材が重かったので帰りはTS市まで特急の指定席に乗車……約三十分のプチ旅行……行きもそうすればよかったかな。
ラムの自宅は、TS市駅からお店のある西口とは反対の、東口から歩いて十分の住宅街にあるというので、東西自由通路にあるスーパーでカートを押しながら野菜類とかおつまみを買う。
なんかめちゃカップルっぽくてこそばい……同棲したり夫婦になると毎日こうしていられるんだな……でもそれは……。
「……どうしたんです?」
「あ、いや……二人で買い物って初めてで嬉し恥ずかしいっていうか……」
「あはは、わたしもですよ〜」
「ず〜っとこうしていられたらな……って」
「……」
「あ、デ、デザートにプリン買おうかな……」
「てんちょ〜、デザートなら用意してありますよ〜」
「え? それって……」
「へへ〜 最初っからおうちで一緒にご飯食べるつもりだったんですよぉ〜だ❤︎」
「うっわ、確信犯!」
「それって、正しい言葉の使い方じゃないですよ~だ」
「し、知ってるわい!」
買い物を終えて、ラムの自宅へ……閑静な住宅街の四階建てのマンションの四階の一室。
「お、おじゃましま〜す」
「おかえりなさ〜い! なんてねっ!」
「あはは」
1LDKでちょっと狭いけど、南向きで眼下には二階建ての一軒家ばかりだから、昼間なら明るくて気持ちいいだろうな。
物が少ない綺麗に整理されたラムらしい部屋だ。
「いい部屋だね~ 家賃、結構高いんじゃない?」
「そうですね……だからお店に入ってから自炊始めて、料理得意になっちゃったんですよね〜」
「そうなんだ〜」
「ブレザーは……あ、このハンガーに。壁にかけてくださいな。わたし部屋着に着替えてきますんで……覗かないでくださいよ〜」
「覗かないでって……いつも人の着替え見てるくせに!」
「あれは『覗き』じゃなくって、お仕事でお手伝いですってば~」
「はいはい」
しばらくして……「じゃ〜ん! うさぎさんだぴょん!」
「うっわ、白いモコモコ〜 一気に幼い〜」
「う、それは言わないで〜」やっぱ、女の子なんだな〜可愛いもの好きって。
「じゃ、ちゃちゃっと料理するんで、てんちょ〜はそこに座って待っててくださいな〜 お手伝いはいいですから、ゆっくりしててくださいね〜」
小さなテーブルと、それを挟んで小さなクッションが二つ向き合って置いてある……。
「あ、その前に……コーヒー淹れますね。インスタントしかないですけど〜」
「うん、いいよ〜 ありがとう」
マグカップにコーヒーを淹れてくれる。
待ってる間、手持ち無沙汰だな〜
「あ、タバコ吸っていい?」
「電子タバコですよね〜? いいですよ〜」
そういえば今日、一本も吸ってないことに気づく……ちょっと緊張してたかな?
そんなことをしている間、ラムがステーキを焼いたり、副菜を作っている……。
いいなぁ〜こうした光景……。やっぱり……もうしばらく……男でいたい……。
「お待たせしましたぁ〜」
「あ、取りに行くから待ってて!」
「いいですよ〜そんなにないですから〜」
といいながらステーキと副菜の乗ったトレイを持ってくる。
「お皿、同じのないんでバラバラですけど〜味に変わりはないですからね〜」
そうそう、独身だと同じもの揃わないよね……。
「お肉も美味しそうだけど、これ何?」
「あ、これは『さつまいもとお豆のマスタードサラダ』ですよ〜 お野菜も食べなきゃですしね、粒マスタードを使ってるんで意外とあっさりしてますよ」
「では、いただきま〜す」
「いただきます!」
「ん! うまいっ! やっぱりステーキは塩胡椒にかぎるね〜」
「てんちょ〜の好み知ってますしね〜 わたしはお醤油とわさびですよ〜 あ、サラダも食べてくださいね」
「うんうん、これ所々にあるさつまいもの甘みが絶品だね!」
「良かったぁ〜 あ、お酒忘れてた! 今、もってきますね〜」
と、冷やした純米吟醸酒を開けて……これも小ぶりの揃ってないグラスで……。
「では、かんぱ〜い」
「今日は、一日楽しかったよ! ありがとうね! ラム!」
「こちらこそ楽しかったです! そして、おうちに来てくださってありがとうございます〜」
「うん、また来ちゃう〜」
しばらくラムの作ってくれた夕飯とお酒を楽しむ……。
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