第22話 女の子同士デート
*** 童貞? 処女? ***
今日はカネコさんが閉店前の十九時にご来店予定。
バックヤードで……「チーフ、今日はどんなコーデがいいと思う?」
「ん〜そうですね……いつものJKじゃマンネリですしねぇ……ピンクのフリフリ……」
「あ、あれはダメ。絶対!」
「じゃぁどうします〜? 最近、お洋服全然仕入れてないから、もうありませんよ〜」
「ん〜制服の替えはTS学園にまた発注するとして……じゃ今度の日曜日、女子ったままでいるから午前中一緒に買いに行って選んでくれるかな?」
え〜それじゃデートにならないじゃないですか……と不満げにラムがつぶやく。
「とりあえず女の子同士デートですね……」
「っていうより、姉妹でお買い物……みたいじゃ」
「誰と誰が姉妹なんですか!」
「あ……ス、スイーツの美味しい所に行こう? だから怒らないで……」
なんだかもう尻に敷かれてる……。
結局今日もJK制服でサービスすることに。
十九時にカネコさんご来店……。
「しのぶちゃん、さっきムツミから聞いたんだけど……」
「はい?」
「女の子のままになっちゃうんだって?」と小声でカネコさん。
「心配しちゃった……」
「……ええ、そうなんです……」わたしも小声で。
「お気遣いありがとうございます……」ムツミさんたら……口が軽いなぁ。
なんか話がどんどん広まっていく気がするなぁ……。
1mほど離れた隣の席でサービスしているチーフが聞き耳を立ててる。
「オーダーはいかがします?」
「今日はこの桜ネイルにしようかな?」
「承知しました……AパターンとBパターンどちらにします?」
「じゃぁ……こっち、Bにしてもらおうかな〜 爪の長さは……そうね、伸びた分だけ(カット)ね」
「形はラウンドで良いですか?」
「ええ、いいわよ〜」
「では、先にオフしますね〜」
「じゃ、しのぶちゃんは将来お嫁さん❤︎になるのかな……?」
「ぶっ!……し、失礼しました」な、なに突然……。
チーフも吹き出しそうな顔をしている……。
「あ、いや、もう少し、男でいたいですし……男とえっちするなんて」
「それはそうよね〜 心は男だもんね〜❤︎」
「あ、当たり前ですよ……わたしは女の子が、好きです……それに……しょ、処女ですしぃ」
チーフ、笑いを堪えて苦しそうだ……。
おいおい、サービス中だぞ〜人のこと言えないけど……。
「あらまあ〜かわいいこと〜 いい男の子紹介しようと思ったんだけどな〜」
「いくらカネコさんでも、それはお断りです……それに彼女だっているんですから」
チーフ、咳き込む……。
「え!? だれだれ?」
「絶対に秘密ですっ!」
カネコさんがお会計を済ませた後、閉店時間なのでお店の子たちはクローズ準備をし始める。
わたしはバックヤードに戻る……と、サービスが終わったチーフがついてくる。
「店長〜、カネコさんまで『あのこと』知ってるんですね……?」
「社長から聞いたって言ってた……」
「なんか面白半分で……でも、気を紛らわそうとしている感はありましたね」
「うん、そんな気がする……」
「ところで、てんちょ〜も処女なんですかぁ? おまけに童貞だったりして〜」とニヤニヤする。
カネコさんとのやりとりから話が変な方へ……。
「しょ、処女だけど……? ん? 『も?』って、チーフもまだだったんだ……ふ〜ん❤︎」
「あ、い、いえ、一人としか……あの、その……だから『ほぼ』ですってば!」
「うんうん、それくらいが可愛い❤︎」
「そ、そうじゃなくって……店長は……?」
「あ、もちろん童貞じゃないぞ これでも大学のときには彼女の一人や二人いたんだぞ」
「意外! フツメンなのに〜?」
「失礼な……でも付き合ってしばらくして『今度女子ってデートしよ?』って言われて女子ったら『自分より若くてかわいい』からって……別れちゃった子がいたんだよな〜」
「あ〜なんかわかる気がする〜 でもわたしは大丈夫ですからね〜❤︎」
「えっ?」
「へへへ〜 じゃ、お先に失礼しま〜す」
「……」
*** 女の子同士デート ***
日曜日、朝十時にラムとTS市駅で待ち合わせ。
一応、『店長用服飾品購入』の名目で休日出勤なのでラムはスーツ姿、わたしはTS学園の制服。
普通に買い物するだけなんで、『デート』とはほど遠いからラムはちょっと不機嫌……そうでもないな。
「あ〜あ、せっかくの休日なのにほとんどお仕事なんだもんな〜、『誰か』とデートとかしたいな〜」とか言いながら手をつないでくるし。
一緒に手をつないでお買い物……。
身長差と格好でぱっと見姉妹だろうな……っとこれは口に出したら後が怖い。
駅ビル内のブティックやら、レディースフロアでわたし用のお店で着る服を何着か選んでもらう。
そういえばラムが入社するまでは制服か、ムツミさんに洋服を選んでもらってたな。
靴屋さんの前でラムが立ち止まる。
「いつもペタンコパンプスとか、今日みたいなローファーだから、思い切ってたまには5センチヒールにしません?」
「JKだからいいの! それに5センチなんて履いたことないし……怖いからヤダ! ずーっと爪先立ちで脚痛くなりそうじゃん?」
「それじゃさっき買ったブラウスとタイトスカートと黒ストに合わないですよ? 5センチならそんなことないですし、大人女子ならヒール履いてないとカッコつかないですよ……第一少しでも高い方が、ちびっ子に見えなくなりますよ〜」
「ま〜たちびっ子って言うし〜」
結局、取り替え用のいつものより少し高い5センチのパンプスと、黒で7センチのチャンキーヒールパンプスを選んだ……踵が太いから怖くなかった……。
「ね、お昼ご飯何にする?」
「えーっと……久々に牛タン食べたい……かな……」
ラムって意外に肉食系?
「へー、ちょっと意外! 肉食系?」
「そうかもですね〜、でもお肉って脂質多いけどご飯食べなきゃ糖質摂らないんで太らないし……てんちょ〜身長低い割に体重ありそうだから気をつけた方がいいですよ〜」
「ぐっ……最近体重計乗ってないし……たしか45キロちょっと……もっと増えたかも」
「あ〜じゃ、わたしがダイエット指導しますよ〜」
牛タン屋さんの『岸根』でラムはご飯なし、わたしはやっぱりご飯ないと満足できないので牛タン定食……。
「あ、さっきご飯は食べない方がいいって言ったばっかりなのに〜」
「え〜牛タンには麦飯外せないよ〜」
「ま、麦飯ならいっか……」
お昼ご飯の後、「デザート食べたい! そういえば、『スイーツの美味しい所に連れてってくれる』って言ってましたよね!」と言い張る。
結局めちゃ高い『タカイフルーツパーラー』で奢らされることになった。
「ん〜、ここのマスクメロンパヘアっぱりおいしぃ〜❤︎とくに奢りだとぉ〜」
「いいなぁ〜、わたしなんて一番安いプリンアラモード(303kcal)なのに……それにそんなに甘いもの(429kcal)……」
「えっ、これは別腹ですよぉ〜 甘いものは一ヶ月に一回食べるかどうかなんですから」
「へ〜色々大変だなぁ……あ、そういえば……下着なんだけど…最近サイズが……」
「あ〜そうですよね……女の子の下着選びって大変だし……今まではどうしてたんですか?」
「『ミッセン』の通販で……」
「あ〜それ、一番ダメなパターン!」
「え、だって一人で下着屋さんに行くの十年経っても恥ずい……」
「も〜女性としての自覚ゼロ! 特にブラはちゃんとサイズ測ってもらって……」
「ん〜そうだよな……これから先……女子化固定の確率はほぼ100パーセントだもんな」
「ご、ごめんなさい……思い出させちゃいました?」
「い、いや、大丈夫……覚悟はできて……るかなぁ……でも男の間は……いや、女になってもラムのこと、好きだし大事にしたい……」
「……パ、パフェ食べてる時に告らないでください……」
「いいだろ〜本音なんだから」
「ば、莫迦ぁ〜」
ランジェリーショップで、「この子、ちゃんとサイズ測ってないんで見ていただけますか?」とラムが店員さんにブラを選んでもらうようにリクエスト。
見た目ラムのが年上だし、こっちは制服だから店員さんも普通に対応してくれる……かと思ったら、
「あ、TS学園の制服ですね? もしかして」
「は、はい……TS娘です」バレちゃった。
制服の胸ポケットにTS学園のエンブレムが付いているしなぁ。
「じゃぁ、初めてですね〜ブラのサイズ測るのとか……最初は慣れないでしょうけど、ちゃんとしたのを着けないと形、悪くなっちゃうんですよ」
ま、とりあえず『初女子化から十五年』は黙っておこうっと。
う〜ブラのサイズ測ってもらうの……やっぱり恥ずいなぁ……72センチでトップとアンダーの差約10センチ……Aカップ。やっぱりチッパイだった……。
薄い紫とピンクのブラ一つずつと、ついでにパンツも……一通り揃ったかな?
「今日はいっぱい買ったな〜、ほんと今日はありがとう、ラム……二人で買い物してると時間経つの早いね」
「休日出勤半日で、その後デートのつもりだったのに……もう夕方になっちゃいましたね……今度の日曜日は、絶対男で来てちゃんとデートしてくださいね!」
「う、うん」
帰り際、女子同士だったけど物陰で軽くハグとキスして別れた……。
女の子同士? 姉妹? デートだったけど、初めてのデートとしてはこんなもんかな?
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