第21話 ギックリ腰
先日以来、ラム(チーフ)とはなんとなくお互いを意識し始めて、なんとなく付き合い始めた……。
って、まだキスもエッチもしてないけどね……。
せめて男の間だけでも……一緒にいたいって感じかな……。
オレがTS娘なのは特に気にしていない……聞けば同じTS学園出身だった! どうりで!
なんだ……五年も一緒にいるのにオレってなんだかなぁ……。
男としていられるのもあと少しの間だということを知っても別に構わないと言う……なんかいじらしい。
近い将来……女子化したままになる。
でもラムやムツミさんが言う通り、男が女子化したんだからTS娘だよね……?
考え込んでてもしょうがない……か。
身辺整理じゃないけど、気晴らしで不要品整理でもしよう……。
まずはあれかな……。
と、店長専用クローゼットの上のハコを眺めていると……。
「店長……? なに見てるんですか? あ、あのクローゼットの上のハコ……何が入ってるんですか?」とチーフ。
「ん〜……あれは……開けてはいけないハコだ」
「えっ? な、なにかヤバい物でも……」
「い、いや、あれだ。バニーさんとか、去年の忘年会の猫耳メイド服とか……」
「ああ! 店長の黒歴史ハコですね! ネコ耳メイド服とかお正月の着物や『しのぶ』って書いてあるスク水とかですね〜 『猫耳メイドだにゃん〜』って店長、可愛かったですね〜❤︎」
「あ〜それ言うな〜」
む〜店に置いとくと開けられちゃうし、自宅に持ち帰るか……と、脚立を使えばいいのに、無理してクローゼットの上のハコを取ろうとして……「!!!!!」
腰に激痛!!
う〜……やっちゃった〜しばらく床に座り込む……。
この体勢じゃ痛いな……どうしたもんだろう……あおむけに寝てみる……あ、これなら大丈夫かも……少し楽になった。
そこへチーフが「店長、明日のコーデですけど……って何やってんですか?」
「……ギックリ腰っぽい」
「えっ?……ど、どうして……」
「クローゼットのハコを取ろうとして……」
「あ〜黒歴史ハコですか? どうしてまた……そ、それよりその体勢じゃまだ痛みますよね……」
「う〜〜」
「え〜っと、じゃ今のままあおむけに寝ててくださいね。ひざを軽く曲げて、膝の下にクッション入れますから……」
「チーフ、なんで詳しいの?……あたたた」
「実家の父がよくギックリ腰してたんで……膝の下にクッション……あ、これでいいか……はい、入れますね」
「ありがとう……あ〜、だいぶ楽になった……かな?」
「明日の指名、お客様にお断りして、指名代えてもらいましょうか?」
「ん〜そうしたいけどなぁ……プロとしては」
「こんなときにプロもなにもないですけど……」
「サポーターとかあれば巻いてサービスするか……」
その日はとりあえずクローズをチーフに任せてタクシーで帰宅。
チーフが買ってきてくれたサポーターを巻き、痛み止めを飲んで腰を冷やして寝る。
*** な、治った? ***
翌朝……。
まだ痛いけど、指名が入ってるのでお店に行かなくちゃ……タクシーで出勤。これ、経費で落ちるかな……?
「おはよう〜 チーフ、クローズとオープン、ありがとう」
「あ、おはようございます店長。腰いかがですか? ほんと無理しちゃだめですよ、ほんとは二、三日安静にしてなきゃいけないんですから。ギックリ腰はクセになりますからね!」
「うん、そうしたいけどね座っててもなるって検索したら出てたしねぇ……とりあえず指名時間に間に合わせて女子っておくよ」
「絶対中腰とかになったりしちゃダメですからね!」
慎重に椅子に座り、ジェルネイルを塗ってしばらくすると……今日は普通に動悸、頭痛、めまいが始まり、数分後に女子化完了……。
んんん? あれ? 腰、痛くないぞ?
最初は恐る恐る動いて……痛くないことを確認して屈伸してみたり、足をあげてみたり……。
「おお! すげぇ〜! どんだけ動いても、腰全然いたくないぞぉ〜」思わず大声になる。
「店長! パンツ一枚でなにやってんですかっ! あ、そんなに動いちゃ……って、腰痛くなくなったんですか?」チーフが飛び込んでくる。
「うん、女子ったらギックリ腰、治ったみたいだ!」
「それって店長が前に言ってた丸ごと生まれ変わるようなもの』だからなんですかねぇ〜 女子るとメガネ要らなくなるのとおんなじ様なって……でも! しばらく様子見ておかなきゃダメですからね!」
ん〜まるで『お母さん』だな……。
「何か言いました?」
「い、いや 別に…」なんて感が鋭いんだ?
「じゃ、速くブラ付けて! ヘアとメイクし始めますからね!」
女子化、いや女子恐るべし……。
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