第20話 安藤ラム視点
わたし、安藤ラム。
出身はTS市で、学校はTS市内の男女共学の中・高・大学の一貫教育校TS学園……だけど、大学には進学しないで美容系の専門学校へ進んだ。
TS学園には「なんかむかつく〜」って言った子が、それがトリガーなのか突然「美少女に」なるなんて日常茶飯事なのでTS娘は別に珍しくもなかった……そんな男子がクラスの三分の一位いたかな……?
専門学校ではメイクアップアーティストやエステティシャン、ネイリストを目指せる『トータルビューティー学科』を選んだ。
美容師は国家資格なんでパス……勉強はあんまり――ってか全然――好きじゃなかったしね……手先には少し自信があったんで、就職に有利って聞いて民間の『なんとかネイリスト協会』団体名覚えてないや……の技能検定試験の『3級』に合格してネイリストになることにしたんだ。
就職先も、社長が同じTS学園出身だというネイルサロンTSに推薦で、あんまり考えずに決めてしまった。
今考えると専門学校から就職まで結構安易だったかな……あはは。
ネイルサロンTSでは、新卒は二ヶ月間本社のネイルアカデミーで実技と接客やマナーの講習があって、専門学校とは違ってより実践的なことを教わり、もちろん最終的に試験を受ける。あとから聞いたんだけどTOPで合格した。そしてお店に配属されることになったんだけど……。
配属されたのは中央店……ここは社長と店長が一番最初に会社を立ち上げた、いわば本店みたいなところ。
そんなお店でわたし、やっていけるんだろうか……と最初はかなりのプレッシャーだった……。
その店長なんだけど、ネイルサロンTSだけあって、TS娘だったんだよね……会社説明会で聞いた気がしてたけど……忘れてた。
年はたしか七歳上で、二十七歳。
身長は165センチくらい……高身長じゃなくて威圧感がない普通の人でよかった。
メガネかけてて、乱視らしく「裸眼だと星を見るとたくさん見えてキレイなんだ〜」なんて面白いことを言うけど、普段は不機嫌っぽい感じ。
本人曰く「不機嫌なんかじゃない、無愛想なだけ」とか言ってる。
で、店長は新人教育――つまりわたしのね――とか指名が入った時に女子るんだけど……わたしよりちっちゃく若返っちゃって、見た目十六、七歳、身長148センチ、体重45キロくらいでロングの金髪で、目が赤くってめっちゃ可愛くなっちゃうんだよ!
ヘア(スタイリング)とメイクとコーデは自分でやるのが面倒なのか上手くないのか、わたしがトータルビューティー学科だというのを知ってから店長専属で任されちゃった。
それまではず〜っとTS学園の制服ばかり着てたらしい。
本人は寸胴幼児体型――確かスリーサイズは上から72・60・75……かな?――を気にしてて、黒い瞳、黒髪ストレートロングに憧れているらしいんだけど……。
ちなみにわたしは身長160センチ、スリーサイズは84・65・92で52キロ……ちょっとお尻が大きいけどなかなかなもん……でしょ?
あれから五年、店長は女子ると相変わらず金髪赤目の美少女のまま。
見た目の年齢が変わらないとか、男子のときより大幅に身長体重が減る……それがレアスキル認定されてて、検査は他の店長と違ってお泊まりで検査を受けている。
わたしはいまだに店長専属のヘア&メイクとコーデ担当してるけど、こんな可愛い子、わたし一人っ子だから、妹ができたみたいに思えて結構嬉しいんだ……。
男のときの店長は相変わらず無愛想……でも、お店の為なんだろうけど、「チーフ、チーフ!」って、わたしを全面的に信頼してくれてて、本社に行く時や店長会議、お得意さんのカネコさんのヘアサロンでのサービスのときは「チーフに全て任せるから思った通りにやっていいよ〜 全責任はわたしが持つからね〜」って言ってくれるし、わたしがフレンチ(ネイル)不得意だからって、特別講習してくれたり普段からなんだかんだ色々気遣ってくれる……。
あ、同期で入ったぴーちゃんもいるんだけど、わたしは入社三年めにチーフになったんだ……。
そんなある日、店長から近い将来、男に戻れない……TS娘じゃなくなるからもう店長ではいられない……と聞かされて……思わずというか今までの感情が一気に吹き出して店長にしがみついて――女子ってヘアサロンに行ってたから抱きしめる格好になっちゃったけど――大泣きしてしまい……初めて自分の気持ちに気がついた……。
わたし、店長のこと……好きだったんだ……。
店長が本社に行って、お店に帰ってから、ちょっと気まずい感じでギクシャクしてたけど……。
お店のクローズ処理をした帰り際……店長から告られちゃった……。
でも、素直になれなくて、お店飛び出して家に帰っちゃった……。
あ〜あ、わたしってば何やってるんだろう……。
明日、謝って、仲直りして……それから……。
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