第10話 決戦

「そしてそのために、俺と戦ってください」


 数秒の沈黙が流れた後、リーダーは肯定的な反応を示した。

「いいだろう、そこまでいうならやってみろ」

 そして地下の演習場へ。スキルだとかを外で使うといろいろと迷惑なので、大体の施設は地下にある。そういう意味では面倒だと思うが、まぁしょうがない。地下にある分、あまり高く飛ぶことはできないからそこだけ気を付けないといけないか。


 リーダーが、拳銃を構える。スキルが俺と同じように拳銃を用いた能力で、とはいえ向こうは金属製で人を簡単に殺せるレベルの弾丸である。

 俺も拳銃を構えて、両者が引き金を引いた瞬間戦いが始まった。


 音もなく飛んでくる弾丸が頬を掠め、向こうはさも簡単そうに避ける。すでに実力差がにじみ出ているが、それでも勝たなきゃいけない。ナイフに持ち替えて加速しつつ突っ込む。

 しかし相手の拳銃にすべて弾かれる。ナイフを出すまででもないってか?

 滑り込んで足に浅い傷をつけることしかできない。

 そのあと即座に振り返って発砲。3発ほど撃ったがすべて避けられる。

 しかし相手から目は離さない。目を離すと避けられない速度で弾丸が飛んでくる。


 正直どれをとっても...くそっ。自爆覚悟で前に出て、ナイフを振りつつ左手で光魔法を使う。あの時情報屋が使ってた策の応用だ。


「なるほど、だいぶ手数が増えたな」

「だが、まだ甘い」


 右手で短剣を受け弾きつつ、左手で闇魔法。自分の右手とぶつかり、相殺される。そして隙のできてしまった右手を掴まれ、引っ張られる。まずい、このままだと急所を撃たれる!

 とっさに体全体を落として下から蹴り上げる。それをジャンプで躱されるが、狙いはそっちじゃない。魔法拳銃を構え、一撃必殺を撃ち込んだのは相手の拳銃。

 これは相手も想定外だったのか、命中して一番面倒な拳銃は消えた。


 このまま押し切ると思った刹那、自分の視野の狭さを後悔する。上に飛んでいたリーダーがあおむけの体勢の俺に蹴りを入れた。転がりつつ体勢を整えるが、そのころにはすでに目の前にいる。そして思い切り横蹴りを食らってしまった。腕を挟んだが、そのせいで左手はほとんど使い物にならなくなってしまった。ただ腕を挟まなければ確実に脇腹にダメージが来てもっとまずかったので仕方ない。

 そのまま追撃を狙うリーダーに改めてナイフを持ち直し、迎撃。ナイフを持つ手を抑えようと掴んでくるリーダーの手をうまく避けつつ、パンチを狙う。ただの肉弾戦だが、その一発一発に距離を開けさせないようにしたりする技術が見える。


 余りにも防戦一方なので、距離を開けるために蹴りを入れる。そして離れたリーダーにすかさず雷弾を撃つ。だけど今度は躱されるところまで想定内。なんならさっき撃ち込んで躱させたのも計算内。そう言い張るように避けた直後を狙って軌道を曲げる。

 相手に想定外を与え、やっと弾が当たったが、向こうも腕を挟んで防御している。それにちらっと服の内側に見えた黒いのはただの肌着か、それともゴムか。どこまでも抜かりがなさそうで、その完璧さに笑みすらこぼれる。


「いいぞ、その調子だ」


 ちょっとずつ詰めているはずなのに、それすらまるで向こうの計算みたいだ。だが今は、自分を信じるしかない。


 次に詰めてきたのは向こうから。牽制で何発か撃つが当然避けられる。それも織り込み済みなので曲げるが、それすら場所がわかっているかのように避けられる。後ろに目でもついてるのかよ。


「魔法は軽率に使うなといっただろ」

「こうやるんだ」


 完璧に間合いに入られた後、発勁。しかしただの発勁ではない。至近距離から、土の魔法を手に込めながら。防御する間もなく石、あるいはそれ以上の固さのパンチがもろにお腹に入る。後ろに吹き飛びながら思わず血を吐く。


「グハッ」

「どうした、俺を倒すんじゃなかったのか」


 そう、だ。正直立ち上がるのもつらいが、プライドだけで立ち上がる。

 今度は風弾を撃つ。当然避けられる、ようで。


「魔法弾、分解」


 その瞬間、弾丸だったそれは形が崩れ、風魔法として周囲のものを切り刻みに行く。

 リーダーの顔に、傷がつく。


「ハハハ、面白い」


 痛覚だとか壊れてるんじゃなかろうか。恩人にそんなことを思いつつ、改めて攻防両方のために構える。


「少し全力で言ったほうがよさそうか」


 そういい終わった瞬間、目の前から消えた。そして首の後ろに気配が、急いで姿勢を落とす。


「反応はいいな、だが体勢が悪いんじゃないか?」


 また攻撃を食らって、吹っ飛ぶ。

 やっと思いで立ち上がった瞬間、太ももを撃ち抜かれた。

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