第6話 火竜、現る
今日も魔物を倒す生活。理由としては、最近依頼が減ってきているからだ。
具体的な原因こそわからないが、実際に依頼は少なくなっているので事実としか言いようがない。ましてや、統計とかがあるわけでもないのだから。
広い野原で食事に使えるようなハーブを取りつつ、様々な魔物と相手している。
例えばスライム。スライムといえば弱いイメージがあるが、それは小さいやつの話。
小さいやつは切ってしまえば核に届いて倒せるのだが、大きくなると話が違う。そもそも、刃が届かないのだ。毎度、短剣のリーチで痛い思いをしている。
そんなわけで魔法で倒していく。今までは火属性だけだったが、ちょっとずつ別の属性を使う練習もしなくちゃいけない。
この世界の魔法はイメージが主になっているとはいえ、ざっくりと属性があったりする。
火、水、土、雷、風、光、闇。この7つがあって、これらは生まれ持って、もしくは多少の鍛錬で使えることが多いから属性としてなっているみたいだ。
それ以外の隠密だったりは専門性が高かったり多量の魔力が必要だったり。あとは現実で使うことが少ないなどの理由らしい。例えば、隠密なんて人から隠れるという意味では便利そうだが、慣れていないと金属でできたマントを背負っているようで重苦しくて仕方ないというデメリットがある。
そんなわけで7つの属性をすべて一通り理解しつつ、それらで魔法弾を作ろうと模索する。
水はそこまで難しくないが、そこまでの威力も出ず。
土も簡単だが、水以上に使い道がなさそうだ。
風はちょっと難しいが、当たった場合に剣で何度も切り裂いたようなイメージになる、比較的強い。
光と闇はいまいち使い道のイメージが湧かなかったので、途中で考えるのをやめた。
他にもオークだとかの魔物にもちらほら会うが、適当に避けつつ、目的を終わらせて冒険者ギルドまで。また前みたいに気づいたら特定の魔物を狩りつくしてるとかそんなことがあったら困る。
「あ、デュークさん、クエストお疲れ様です!」
いつもの人に依頼されていたものを渡して、報酬を受け取る。今の時間はお昼過ぎくらいか。ここまで早く終わるとは思ってなかったので、午後どうするかの計画が何一つない。
図書館に行って魔法とかの勉強でもするか、それとも散歩でまた街中をぶらぶらするか、そんな程度の想像力を働かせていたが、その必要はなくなったみたいだ。
そんなわけで来たのは、いつものギルドの隠れ家の地下、さらに奥深く。こんな場所に存在するのが暗殺ギルド一の、といっても一人しかいないマッドサイエンティストの研究室だ。ちょっと前に余ったトレントの根っこを渡したら、薬を作ってくれたらしい。
禍々しいほうの緑色をした、瓶に入った液体。気になって渋い顔をしながら一口なめてみる。苦いと渋いと変な舌触りをすべて混ぜ合わせた、そんな風味。とてもじゃないが飲むもんじゃない。
「いや、それ普通に塗って使ってもらって構わないんだけど...」
本当に飲むものじゃなかった。
といっても、普段あまり傷を負うようなタイプではないし、負うような戦闘スタイルはしないので、また使いどころが難しいものだ。
荷物の奥底に眠ることになりそうか。
そうだ、科学派ならこういう物事に詳しいだろうか。ふと思い出したことがあるので尋ねてみる。
「なぁ、現実的に不老不死になんてなれると思うか?」
「不老不死、ねぇ」
そしてその科学者が答えを言おうと口を開いたとき。とてつもなく大きい音と経っていられないほどの振動。地下室が危険なのは言うまでもないので外に急いで出る。
そして見えたのはとんでもない大きさのドラゴンだった。
この周りの家を3つ4つくらい縦に並べたような大きさの赤い竜、おそらく火竜か。まだ遠くにいてスローペースだが、確実にこちらに歩いてきている。このままではここら一帯の被害は時間の問題だ。
とはいえ、冒険者ギルドはすでに招集がかかって、実績のある冒険者は集まってきているらしいし、特に出る幕もないかと思っていた。
「おいそこの兄ちゃん、冒険者だろ?」
「お前さんも火竜討伐、協力してくれや」
いかにも焦りながらの様子で声をかけられ、そのまま走り去っていく冒険者。
こうなってしまっては断れるわけもなく。
さっきまではスライムとかばかりの平穏を絵で描いたようだった平原は、今ではあっという間に緊迫で埋め尽くされている。
実際に目の前に立つと尚更でかく見えて、その分冒険者の負担もとんでもないもんだろうと思っていたが、大半はそれ以上に金に目がくらんだようだ。とはいえ、剣を振ったりしている割には大したダメージもないのでほとんど膠着状態。
とりあえず加速してナイフで切り込む。周りよりは多少しっかり傷が入ったが、まだまだ致命傷なんかには程遠い状態で。
とはいえ少し刺激を与えたのか、竜の咆哮が聞こえた後、辺り一帯を焼き尽くす火炎のブレス。
大きく避けるが、それでも熱風が肌に痛い。そしてそれは周りはなおさら被害が大きいことを示していて。
後衛にいるヒーラー達に例の回復薬を渡した後、改めて倒すための作戦を考えながら、前衛に戻るのだった。
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