第一章
第3話 冒険者ギルド
結局あの一撃は、一日に一度だけ撃て、当たった対象は消滅する。そんなスキルなことが分かった。対象は生物である必要もないらしく、一本の木を打ち抜いて消すこともできた。ただ、対象をちゃんとイメージしていないと森全体を消そうとしたりするようだが。
◇
初めての依頼から10年ほど経って、当時とは体が大きく変わった。
今は黒髪短髪、身長は180くらい。この世界だと結構高いほうだ。そしてリーダーにとんでもないほど体術を叩き込まれたので、今ではリーダーに負けず劣らず筋肉質な体にもなった。相変わらずやせ型だが。
普段は主に羽織りものを着て、その内側にナイフ。魔法拳銃は普段はしまってあるし、持ち物はこれ以外だと硬貨くらいだ。
普段暗殺ギルドにいる人間ではあるが、この世界でずっと隠れている人間というのは不審がられる。いかんせん、人が大勢いるような街でもないので、あまり見ない人だとすぐ目についてしまうのだ。
なので時々街中に顔を出して、散歩なり外食なり、冒険者ギルドで冒険者になったりしている人もいるみたいだ。
とりあえずやることも大してないので、その冒険者ギルドとやらに行ってみることに。
「いらっしゃいませ。初めての方ですね?」
「でしたら、まずはギルドのシステムとギルドカードの作成をしましょうか」
冒険者ギルド。国が魔物討伐等を依頼するときに人を集めたことから始まったといわれる、冒険者の大半が所属する組織。
基本的にギルドの役割としてはクエスト依頼の仲介、報酬の受け渡しとクエストで採集した素材の依頼者への受け渡し、あとは一応裏にある居酒屋の運営。
ほかにも、冒険者が必要となる武器などの生産、値段調整を国に代わって工房に依頼するのもここらしい。
で、あと説明されたうえで重要なのはランクの概念。依頼の達成率や身体的、魔法的強さなどによってAからEの5段階になるらしい。そんなわけで別室に通されて、ランク計測をする。
基本的にはダミーのかかしに剣なり魔法で攻撃すればいいらしい。とりあえずスキルも使わず、走って、切る。結構しっかり傷がついたが、攻撃をしないで数秒置くと自動的に元の状態に戻った。
「こんな感じで大丈夫ですか?」
「全力でやってもらって構いませんよ」
せっかくなので、一度本気で切ってみるか。魔法で足を速くして、風のようなスピードでかかしに接近。ナイフの間合いに入ったら、そのスピードを生かして横側を切る。
抉れたような跡のない、真一文字とでも表現するようなきれいな切り傷。とはいえ、ナイフじゃ全体をスパッと切るとかはできないな。
「お、おぉ...すごいですね」
ちょっと引き気味なのが気になったが。
そして待つこと3分ほど。ギルドカードができたらしい。
「そういえば聞きそびれていましたが、お名前は?」
名前、か。結局あの時名前を聞いたわけでもないし、
「デュークです」
とりあえず偽名を名乗る。本名がないのもあるが、本名があってもそれがばれると職業上不都合が多そうだからだ。
「デュークさんですね、はい、これでギルドカードができましたよ」
どうやらいきなりCランクのようだ。カードを受け取って会釈した後、左側にあったクエストの貼ってある掲示板を見る。
とりあえず、このあたりがいいかな。トレント5体の討伐および根っこの納品。トレントは木の姿をした2mくらいの魔物で、根に似た足を器用に動かして移動する。どちらかというと本来は苦手なタイプだが、むしろそういうのの練習だ。
そのクエストの紙をはがして、ギルドの人に渡し、クエスト受注。特に難しいことはない。
そんなわけで近くの森に来た。お、さっそく見つけた。
隠密を使って静かに接近し、根を切る。正直これだけでも依頼は完了できるが、根は後から生えるかつそうすると狂暴になってしまうので基本的にはそのあと倒すように言われている。
とりあえずナイフで思い切り切りつける。コン、って感じの軽い音はするが、あまり傷はつかない。
「やっぱりか...」
そんなとき、ふと魔法の存在を思い出す。この世界の魔法は何ら難しいことはない。ほとんどイメージだけで解決する。今まで使っていた隠密や足を速くする魔法もイメージでほぼできている。
ろうそくの火をイメージする。いや、これじゃ弱い。燃え盛った焚火をイメージして、圧縮。手のひらでつかめるボールくらいのサイズにする。そして
「ファイアボール」
火球がそこそこのスピードで出て、トレントにヒット。燃え移って、そのまま倒れた。
そのままトレントを倒しつつ、魔法の修練。そして周りのトレントを大体狩り終えてしまったのか、12体ほど倒したころには見当たらなくなっていた。
「では、お預かりしますね」
依頼品の根っこを渡して、報酬をもらう。今回は5体で1回分なので、2つほど根が余ってしまった。さてどうするか。毒とか詳しいあいつが引き取ってくれるかなぁ。そんなことを考えつつ、今日の飯どころと宿を探すのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます