神月 四頁

「じゃあ、この神様かみさまは、あたまうさぎだから半人はんじん半獣はんじゅうかな」

「いや、あたまだけですから……頭獣人とうじゅうじんじゃないですか?」

闘牛とうぎゅう?」

頭獣とうじゅう

 阿呆あほう会話かいわをする二人ふたり。そんなものどうだっていい。


 ぐうぅぅぅぅ。


 恵虹けいこうはらった。ちょうど、都合つごう頃合ころあいでったものだ。

 かおあかめて、やつはくも指示しじした。

「そ、そろそろふねもどりましょうか」

「かしこまー」


「あ、あのー」


 くもろうとする恵虹けいこうに、こえかった。それは、一人ひとり小柄こがらむすめだった。

 むすめは、すこまえから阿呆あほうどものやりとりをじっとていたが、やつらがかえっていくのをて、こえけたのだ。

 こえおどろきそちらを二人ふたり。そこで恵虹けいこうはさらに見開みひらいた。

 

 さらさらかぜが、かみころもをさらおうとする。せた黄緑きみどりいろ草木くさき生茂おいしげもりなか


 恵虹けいこうは、ひと途端とたんからそのむすめうばわれた。おしろ石垣いしがき歴史れきしの、はじめのほううつっていた、兎人とじんぞくであり、あわ黄色きいろの、ぶどうあめごとまるよっつらなったおさげかみ可愛かわいらしいと。

「……葉緒はおちゃん」

 恵虹けいこうは、ぽつりとつぶやいた。


 その葉緒はおほうは、きょとんと戸惑とまどっていた。

「あなたは……」

 恵虹けいこうは、はっとわれかえ葉緒はおあやまった。

「すみません。きゅうすぎて、戸惑とまどいますよね」

 そして、自己紹介じこしょうかいをした。

わたしは、せい石暮いしぐれいみなきょうあざな恵虹けいこうもうします」

 せいとは、そいつのいえあらわいみなは、まれたときおやからさずけられるで、あざなは、その成人せいじんしたとき自分じぶんでつけるだ。成人せいじんした人類じんるいは、種族しゅぞくわず、おおくのものつのっている。

「わたしは、せい阿月あづきいみな葉緒姫はおひあざなは……葉緒はおです!」

 むすめはまだ、成人せいじんとしにはない。そのあざなたった今いまつけたものである。

葉緒はおちゃん……」

 すると、恵虹けいこうは、きびすかえし、葉緒はお背中せなかけた。

わたしはそろそろ、ふねもどります。壁画へきがだってましたし、わたしつき信者しんじゃでもありませんから」

きましょう」とくも指示しじする。

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