瑠璃の恩恵
瑠璃の虫は目覚めた。
見渡す限り木々が生い茂る。
どうやら森のようだ。
瑠璃の虫には三対の脚と、短いながらも丈夫そうな一対の大顎、
背には硬い甲殻に覆われた薄い翅がついている。
瑠璃色の石を手に入れる前は、どの部位も大きかったり鋭かったりと過剰な力を持っていたが、
どれも最適?な形に変化している。
瑠璃の虫が試しに翅を広げ、飛んでみる...すぐに木につかまる。
疲れてしまったのだろうか。もう飛ぶ気配はない。
瑠璃の虫よ、次はどこへ向かうのだ?と、心の中で問うと
それに答えるかのように木から落ち、のそのそと一方へと向かいだした。
どれほど時間がたっただろうか。
どこまで進んでも木ばかり、嫌になるくらいに緑が鬱蒼としている。
『ブーン』
どこからか鋭い羽音が聞こえる。
だんだんと音が大きくなっていく...
こちらに近づいているようだ。
それは姿を現した。
すらりとした攻撃的なフォルムで顔に小さくも力強そうな顎。
腹の先端には針のようなものが突き出している。
高速で2対の翅を動かしながらホバリングをしている。
顎針の虫とでも呼ぼうか。
瑠璃の虫がようやく顎針の虫の存在に気づき、それを見上げる。
瑠璃の虫が大顎を広げ威嚇をする。少しでも体を大きく見せようと前足で体を起こしながら、硬い翅を開いて。
威嚇によってだろうか。顎針の虫は瑠璃の虫を敵とみなし向かって来る。
瑠璃の虫が大顎で突進を受け止める。勢いだけはあったが、瑠璃の虫のほうが体が大きく有利そうだ。
瑠璃の虫がそのまま大顎を締め始める。『ギチギチ』と顎針の虫から嫌な音がする。
顎針の虫は、死を悟ったのだろうか。
それとも計算の内か、柔らかい腹を大きく前に突き出し、針を瑠璃の虫の口内に突き立てる。
針を突き立てられようとも構わず大顎を締め切り、顎針の虫を切断した。
瑠璃の虫がまた、森の中を歩み始める。
が、脚に力が入らないのだろうか。
その場で倒れた。
瑠璃色の甲殻をキラリと光らせながら。
あらら、可哀そうに
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