数は正義
瑠璃の虫は目覚めた。
見渡す限り木々が生い茂る。
瑠璃の虫には三対の脚と、短いながらも丈夫そうな一対の大顎、
背には硬い甲殻に覆われた薄い翅がついている。
目覚めた直後から瑠璃の虫はただ、一方を見つめ進みゆく。
どれだけ進んだだろうか。
景色がどこまで行っても変わらないがために正確に把握するのは不可能だろう。
『ブーン』
鋭い羽音だ。
聞こえたと同時に、瑠璃の虫が羽音の方向を向き。
翅を動かし飛び立った。
先手を打つつもりなのだろう。
顎針の虫の姿を捉えた瑠璃の虫は、より速度を出しながら大顎を広げ...
勢いに任せて顎針の虫を切断した。
一瞬での出来事だ。
顎針の虫も立派な複眼で瑠璃の虫の存在には気づいていたはずだがなぜよけなかったのか?
疑問こそ残れども、勝利には違いない。
瑠璃の虫は寄り道をさせられたことを少しばかり不機嫌そうにしながら、一方を見つめ、進みだす。
『ブーン』『ブーン』『ブーン』
鋭い羽音の大合唱だ。
大量の羽音がする。瑠璃の虫が羽音の方向を見やると…
顎針の虫が大量に飛びながら今にも襲い掛からんとしているではありませんか。
勢いに任せて顎針の虫が何匹も襲い来る。
瑠璃の虫も何匹か大顎を使い切断することに成功したが、
数の力にかなうことは無く、ボロボロになった甲殻に無数の針を突き立てられ
絶命した。
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