鋭利

ある日

瑠璃の虫は目覚めた。

瞼はなけれども、

目覚めたと、はっきりと、わかるように活動を開始した。


大きく身をよじる。

地面を鞘翅で押し出して。

体を起き上がる。


その顎には、体の大きさの割には大きいながらも。

洗練されたフォルムの大顎がついている。

とんでもない鋭さで、触っただけでも、引き裂かれてしまうだろう。


これさえあれば、あの糸を引き裂くことができる。

そう考えたのか、真っ先に断崖絶壁へと最高速度で走り抜ける。


特にこれといった葛藤もなしに、

瑠璃の虫は糸の海へと飛び降りる。

繊細な脚をもつ虫の位置の目星がついているのだろう。

迷うことなくまっすぐに落ちる。


糸を、一文字に開かれた鋭利な大顎を使い、引き裂き進む。

糸の主を発見し顎に触れるその瞬間。

大顎を閉じた。

繊細な脚をもつ虫は胴体を切断され、死んだ。

瑠璃の虫は糸に絡まりながらも勝利を誇っていた。


瑠璃の虫はそのまま糸に絡まりながら餓死した。




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