大顎
ある日
瑠璃の虫は目覚めた。
瞼はなけれども、
目覚めたと、はっきりと、わかるように活動を開始した。
大きく身をよじる。
地面を鞘翅で押し出して。
体を起き上がる。
その口元には、太く力強い大顎がついていた。
その大顎で挟み込めば大抵の虫であれば、つぶすことができるだろう。
胴体の大きさに不相応な大顎を瑠璃の虫は誇らしげにかかげるのであった。
とはいえ、すべてがよいことであるはずがなく。
その顎が大きすぎるがゆえに、移動しずらそうだ。
力強い脚を使うことで、かろうじて歩くことができるものの、翅を使って飛び上がるの難しそうだ。
翅はせいぜい空気抵抗を増やすことができるくらいだろうか。
その大顎を掲げながらいつの日かの、断崖絶壁へ歩を進める。
遥か下に雲のような白いものが見える、断崖絶壁へとたどり着いた瑠璃の虫。
意を決して飛び降りた。
結果として、
大顎を使って、糸を引き裂こうとするのはよかったが。
残念ながら鋭さが足りず、切り裂くことのできずに、糸に引っかかってしまう。
本体である繊細な脚をもつ虫は、大量の糸に守られた中心部にいる。
これでは倒すのは難しそうだ。
そんな思考をしながら瑠璃の虫は糸にまかれ、
硬い外殻がゆえに食べられることのないまま餓死するのだった。
頑張れ!瑠璃の虫
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