二本

ある日

瑠璃の虫は目覚めた。

瞼はなけれども、

目覚めたと、はっきりと、わかるように活動を開始した。


大きく身をよじる。

少しだけ動いた。

本来であれば脚がある部分には二本の脚がついてる。

太く力強い脚だ。

そう簡単にちぎれたり折れたりはしないだろう。

そんな脚が、

頭側の一対についている。


脚の力を使い、

地面に背を向けていた体をそこまでの苦労もなく起き上がらせる。


一対の脚を使い力強く速く地面を駆ける。

速い速い。

しかし、頭側に脚が寄っているせいか、

腹が地面に削られている。

腹の耐久度が心配だ。


ひたすらに、

どこへ行くべきかわかっているように、

虫は駆ける。


おや?

虫が止まった。

虫の先を見てみると道はなく、

ただただ白い雲のようなものが、

遥かに下のほうに見える。

断崖絶壁だ。

虫は迷っているのだろうか...


あ、飛び込んだ!


すると、

雲のような白いふわふわに引っかかる。

雲のようなそれの中から巨大な、

それでいて、繊細な脚をもつ虫が現れる。

脚は長く、先端は細い糸の上を渡るためなのか非常に細い。

長い脚をたどって胴体を見てみると、とても小さなかわいらしい胴体があった。

もっとも、全体でみるとおぞましい見た目をしている。

アンバランスで不安定な見た目だ。


そこで気が付いた、

この雲は罠だったのだと!


瑠璃の虫は繊細な脚をもつ虫に糸でぐるぐる巻きにされながら、

足りない脳みそで考えようとした。

が、

無理だった。


少し経った後、

中身を食べつくされた瑠璃色の虫の残骸があった。


あれだけ硬い殻をもっていながら、

なぜ食べられたのかと。

まじまじと見てみると腹に削れたような大きな傷があった。

きっとそこから食べられたのだろう。


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