一本

ある日

瑠璃の虫は目覚めた。

瞼はなけれども、

目覚めたと、はっきりと、わかるように活動を開始した。


大きく身をよじる。

少しだけ動いた。

本来であれば脚がある部分に一本だけ脚がついている。

長く鋭い脚だ。

しかし、細く簡単に折れてしまいそうにも見える。

そんな脚が、

一番頭側の左についている。


脚の力を使い、

地面に背を向けていた体をどうにか起き上がらせる。


一本だけ。

しかし、無いよりはましと言わんばかりに、

力強く動かし、

地面を這っている。

地面と腹がすれてがりがりと削れる音が聞こえる。

虫の体の材質はなかなかに硬いようだ。


虫はひたすらに這って行く。

ただ一本しかない脚を使って。


あ、

ちぎれた。

一本しかない脚が、

ちぎれた!


こうして虫は力尽き、

瑠璃色の硬い殻を残し、

腐り果てるのだった...

なんて貧弱なのだろうか。

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