第5話
第四章
何年かが過ぎ去り、古賀のNPO法人ヘルプも地道な努力を重ねて、アンナのような新人も入所して来るようになった。
ある日、古賀に同じ業界で働いている幼馴染みから連絡が入った。
「玲さん見つけたで。今ナンバのホテルKに泊まってる。明日また中東に発つらしい」
古賀はホテルKに急行した。ロビーで待つこと四時間、夜の帳がすっかり降りた頃、古賀の前に出先から戻って来た玲の姿があった。
「玲!」
「いっちゃん!」
「それにしても激太りやなあ! 一目見てもわからんかったわ」
「それ、セクハラ発言やで。奥さんのことやら色々あったさかい、辛うてな。つい大食いの癖が出来てしまったんや」
笑いながら身体を揺すってみせる玲に、古賀は握手を求めた。
玲はその手をゆっくりと握った。
「明日もう発つんか? もうちょっと居れんのか?」
「いっちゃんの顔見たら、もう少し日本に居とうなったわ」
そう言って玲は微笑んだ。古賀も微笑みを返した。
「それより、亡くなった奥さんの墓参りに連れて行ってよ」
玲の口からある意味思いがけない言葉が飛び出した。
「そうか。参ってくれるか」
古賀は玲の肩を抱いて、ロビーのソファに座った。
翌日、二人は新潟行の特急に乗り、新潟駅で支線に乗り換え、海沿いの小さな駅で降りてタクシーで墓地に着いた。
風が強くて白波の立つ日本海を臨む古賀の妻の墓前に二人で花を供えて、両手を合わせた玲はやっとひとつの心の区切りが出来たように感じていた。
二人は白波が押し寄せる海を眺めながら、墓に眠る人のことに想いを巡らせていた。
「もしもよ、奥さんに子供がいれば、まさかあんなことはされなかったと思うわ」
「俺には子種がなかったからなあ」
古賀がポツリと言った。
「奥さんもきっとお寂しかったんやと思うわ。奥さん確か一人っ子よね。だったら、ご両親もお孫さんがいないわけや。それもねえ」
「子供ちゅうのは授かりもんや。今更どうこう言っても始まらん。ほいでお前はどうなんや。子供が欲しいなら今のうちに他の男と一緒になれよ」
「何も子供をつくるためにあんたと同棲してたわけやないわ。あんたの考え方おかしいよ」
「そらそうやな。ごめん」
古賀は風で乱れた白髪混じりの髪を撫でた。
「どっちみちわたしは奥さんとのこと、この激太りの身体と一緒に一生背負っていかなあかんから」
海風が一段と激しく吹き付けて来た。二人は襟元を押さえながら墓地の階段を下りて行った。
古賀は頃合いを見計らって、玲にヘルプに戻るように説得を試みた。玲は今の難民キャンプの仕事を仕上げたら帰国してヘルプで働くと約束した。
時が熟し、ヘルプに復帰した玲は、再び古賀とコンビを組み、今回のマー君を扱う仕事に関わることになったのだ。
チンタオを飛び立った飛行機が間もなくウルムチに到着するとのアナウンスがあった。
中国語と英語のアナウンスだけで、日本語はない。
三人とも中国語が出来るので、それでもいいが、拙い英語のアナウンスは聞けたものではない。一体何を言っているのか、殆どわからない。
日本語のアナウンスがないのは、ウルムチ観光に行く日本人が少ないということなのか。だが、こちら方面なら甘粛省の敦煌観光は日本人が外国人で最も多いと聞いているのに。アンナは首を傾げた。
機は無事着陸し、三人は迎えのバスに乗り換え、空港ターミナルに向かった。
バッゲージ・クレイムで荷物を確認し、出迎えロビーに出ると、深夜なのに出迎え人口が多い。
玲が手配してくれたホテルは空港を出てすぐのところにあったので、旅行カバンをゴロゴロ転がしなら目の前に見えるホテルのネオンを頼りに歩く。
駐車車両の間をすり抜けて、どんどん出迎えロビーに近づいて来る迎車とすれ違いながら、三人は眠気を我慢して歩いていた。
ホテルのレセプションで予約を確認し、キーをもらってそれぞれ部屋に向かう前に、明日の予定をロビーで確認し合った。
「さあ、明日からの英気を養うために、すぐ横になろう」
玲の号令で、それぞれの部屋のベッドに倒れ込んだ。
翌朝のウルムチは雲一つなく、晴れ上がっていた。ウルムチは天山山脈の北のふもとにあり、モンゴル族の言葉で『美しい牧場』という意味があるとガイドブックにあった。
せっかく遠い、めったに来られないところに来たのだからと、玲は二人に博物館を見ようと提案した。
ひょっとしてマーが何かを思い出すきっかけになるかも知れないと思ったからだ。
博物館には約四千年前の『楼蘭の美女』と言われるミイラが眠っている。
二十代、面長で小顔、高い鼻、窪んだ眼、長いまつ毛、薄い唇というヨーロッパ人種の特徴を備えた美女は、昔ウルムチ近郊にあった楼蘭という王国とヨーロッパの交流を象徴している。
三人は幾つものミイラが「展示」されている部屋を見て回った。
「凄いねえ。ミイラといったらエジプトが有名やけど、あれは人が作った人工的なミイラや。これは乾燥した自然が作ったミイラや。しかも、国際交流の舞台やったから混血の美が光ってるんやな」
三人は美女に見入った。
「顔料が羊の乳の成分で出来てるって。乾燥から肌を守る乳白色のクリームやな」
玲とアンナがキャッキャと言いながら美女と対面している間、マーは独りで黙ってミイラを見つめていた。
玲が気付いて声をかけた。
「何か思い出した?」
「……何処かでミイラを見たことがあるような気がする。でも、ここのミイラだったかわからない。何か遺跡のようなところの長い階段を下りて、洞窟のような狭い空間の奥で見たような気がする。ここではない他のところ」
「そう。砂漠の中にある遺跡の下にはまだ千体ものミイラが埋葬されているて言うしね。最近も発掘調査が続いているそうよ」
マーは棺に収まっている六十代女性のミイラに興味を示した。
鼻が高く、歯が出っ張っている。小さな仮面を被り、マントに青銅の飾りが毛糸で縫いつけてある。腕に玉(ぎょく)、帽子に子供のイタチが二匹ぶら下がっている。
「面白い。イタチはきっとこのおばあさんの守り神だ。日本でイタチはボクのリュックを守ってくれた。ボクの守り神でもある。イタチに感謝しなくちゃ!」
そう言って、二匹のイタチに手を合わせた。
マーがトイレに行っている間に、玲がアンナに言った。
「マー君をウルムチ、トルファン、敦煌などをあちこち連れ回って、色んな文物を見せて、感じさせて、体験させて、その刺激で記憶の扉が開くかも知れないような気がして来たんや。そやからできる限り回ってみようと思う。どうや?」
「いい考えやと思います。笑いが健康につながるって言われるみたいに、人間のいい感情や刺激が記憶回復につながっていくような気がしますから」
「了解。それではここで一句や。楼蘭の美女と出会い、詠めり」
趣味でEメールを利用した句会に参加している玲は、呼吸を整えて俳句を披露した。
『幾千年眠りし美女と面会す』。
「季語なしの自由句やけど、どや出来栄えは?」
アンナの感想は聞かずに玲は笑い、その巨体を揺すった。
一行は町でチャーターしたマイクロバスでトルファンに向かった。盆地の砂漠様の大地を行くと、灌木が地を蔽い、百日紅(さるすべり)に似たピンク色の可憐な花が殺風景な環境に色彩を添えている。ドライバーはタマリスクという花だと言った。
大きなプロペラが回る風力発電施設が地脈うねる丘の上に忽然と姿を現した。
「トルファン近郊は石炭の埋蔵量が多いから火力発電が盛んらしいけど、風力発電もあるんや。何しろ砂漠の風が恐ろしく強いからね」
玲が大きく開けた車窓から顔を出していた。自慢の黒髪が砂漠を渡る風に揺れている。
マーは疲れたのか、後方の座席で舟を漕いでいた。
途中で瓜を売る露店があった。バスを停めて覗きに行く。砂漠の商人が早速瓜を切り分けて試食させてくれた。
「甘あ~い!」
アンナが叫ぶ。
「ホント、最高やな、この甘さ!」
玲が唸る。
マーは黙々と食べ続けている。瓜の皮をビニール袋詰めにして売っていた。アンナが買おうとしたが、玲が止めた。
「聞いたところによれば、瓜の皮にハエが卵を産みつけているって言うのよ」
「いやあ、気持ち悪い!」
アンナが眉をひそめた。
再びマイクロバスに乗り、一路トルファンを目指す。バスの車内がムッとするので窓を開け放したが、風は何処かに行ってしまっている。玲は上着を一枚脱いでハンカチで汗を拭いた。
天門橋筋の銭湯の出来事が玲の脳裏を掠めた。
アンナとコンビを組むことになり、お互いを良く知ろうとしていた頃、一緒に横丁の銭湯に行った。別に裸の付き合いをしようというわけではなかったが、二人で湯につかり、後輩の話を聞いてやった。
アンナは京都生まれで、高校まで市内の学校に通い、大学から大阪に通った。
英文科の学生で、興味が合って少しだけ中国語を勉強し、卒業した。
卒業後はプータローを決め込んで親べったりで暮らしていたが、ある時ふと入ったギャラリーで、マンホールの中の劣悪な環境で暮らすモンゴルの子供や栄養失調のアフリカの子供らの写真を見て、心を揺さぶられた。
少しでも貧しい子供たちのために役立ちたいと、パソコンを叩いていた時、NPO法人・ヘルプが目に留まった。
古賀の面接を受け、「いい加減な気持ちで職に就こうというのならやめて下さい」と念を押されたが、写真で貧しい子供が助けて欲しいと訴えていた目が忘れられないなどと、意欲の片鱗を見せて、何とかスタッフに加えてもらった。
そんな身の上話を聞かされて、少々のぼせて来た玲が湯から上がろうとした時、アンナは玲のお腹に比較的目立つ傷跡があるのに気付いた。
その時は敢えて尋ねなかったが、マーを連れて居酒屋で飲食した帰り、そのことを思い出し、ふと玲に尋ねてしまった。飲酒がアンナを少し大胆にさせてしまっていたのかも知れない。
玲は一瞬顔を曇らせたが、たった一言「不倫の代償よ」とサラリと言ってのけて足早に去って行った。
不倫をした女性を刺すのは、不倫相手の奥さんやろか。ひょっとして不倫相手というのは理事長ではないかと思い至ったが、玲が触れられたくないであろう事柄をうっかり尋ねてしまったことを悔い入り、そのことは封印してしまった。
何時間も揺られ、トルファンに着いた頃は陽も沈みかけていた。
「今のうちにブドウ祭りを見ておこうよ」
玲は二人を連れて会場に向かった。
「バッグなどひったくられないようにね」
玲が言うと、アンナはぎゅっとバッグを握りしめた。
祭りの会場がある真直ぐな通りの両側には食材・雑貨・工具などを売る露店が軒を連ね、アーケード状になった頭上にはブドウ棚がずっと続き、たわわなブドウの房が幾つもぶら下がっていた。
辺りには民族調の音楽がスピーカーから流れ、お祭りとあって、少数民族の正装を纏ったご婦人方などの買い物客で通りはごった返していた。
「トルファンはやっぱりブドウなのね。甘い香りが漂っていていい感じ。ところで、今夜食事はどうするんですか?」
食いしん坊アンナが尋ねた。
「前回お世話になったウイグル族の家でご馳走になる。今夜予約しておいた」
「ウイグル族の料理ってどんなのかしら」
アンナはスマホを取り出して検索を始めた。それを見た玲がアンナに言った。
「うるさいオネエさんやと思われるわね、きっと。けど、わたしらの仕事はね、物事を自分の目で確かめて、肌で触って体感するのが一番大切なんよ。だから先入観なしに、今夜ウイグル料理をとにかく自分の舌で味わってみて欲しい。便利なスマホやガイドブックはあくまで参考よ」
「すみません」
アンナはスマートフォンをバッグにしまい込んだ。
夜の帳が降りた頃、マイクロバスは街灯のない通りに停車した。通りには一軒だけ煌々と裸電球を点けた商店があった。
よく見ると皮を剝がされた豚が二匹、軒から吊るされている。
玲の案内でその店の向かいにある庭の広い家に入って行った。家の主人らしい中年の男性が出迎えてくれた。
入り口の軒にはマスカットのブドウ棚が天井くらいの高さにあった。三人は母屋の手前にある部屋の板の間に絨毯が敷かれている低いテーブル席に案内され、腰を下ろした。
「この後ろの仕切り板、背もたれにしては大きいし、背が高いわね」
「そうね」
玲が仕切り板を叩いてみた。
「痛っ! これすごく頑丈だわ」
玲が手を抑えた。
主人の母親らしいお婆さんが料理を作ってくれているようだ。母屋の入り口には奥さんらしい女性が乳飲み子を抱いて椅子に座っていた。大皿で色々な料理が運ばれて来た。
「あっ、シシカバブー」
マーは直ぐに手を出して一本手に取った。マーが言った通り、こちらのシシカバブーは肉だけが串に刺してある。
食べ物の記憶というのは他の事柄の記憶よりも強く残るものなのだろうか。アンナはふとそんなことを考えた。
広く長いテーブルにもやし炒め、スープ、きくらげ炒め、ジャガイモの炒め物、ヌードル、ナツメ、干しブドウ、スイカ、メロンなどが並んだ。
アンナはその一つ一つを味わってメモを取った。感想も記した。玲の一言がなければ、ただ食べて通り過ぎてしまった料理なのかも知れない。シシカバブーはお代わりも出て来た。マーは早くも数本平らげていた。
壁に英字新聞が貼ってあった。マーケットでレースのヴェイルで顔全体を覆い、白枠のサングラスを掛けているウイグル人女性の写真が掲載されていた。記事の見出しはこう書かれている。
Ban on Islamic dress creates resentment in Xinjiang, hurts business
『新疆ウイグル地区でイスラームの民族衣装禁止に反発。衣裳店、商売出来ず』
少数民族でイスラームのウイグル人が民族衣装の着用を禁止され、漢族支配の中国政府による民族差別に反発して暴動が起こったという内容だった。
壁の穴を隠すためもあるのか、わざわざ英字新聞を窪みのある壁の上に貼り付け、同時に問題提起をする姿勢にも見えた。
「わたし達にはとっても優しくて親切なウイグルの人々がこんな問題を抱えているのやなあ」
アンナはひと時箸を止めて新聞に見入った。
「まあ、ポリティカルな問題は一応避けときましょ」
玲は声をひそめるようにアンナを促した。
主人は民族楽器を持ち出して、ソロ演奏をしてくれた。夜の涼やかな空気を震わせている民族楽器の哀愁を帯びた音色は、アンナの旅情をくすぐっていた。音色にはウイグルの人々の長い物悲しい歴史が刻み込まれているようにアンナには聞こえた。
その音色が突然途絶えた。
パン! パン! パン!
突然銃声が響き渡った。主人は玲ら三人の客に大声でテーブルの背後にある壁に身を屈めて、隙を見て家屋の中に入るように叫んだ。
主人の家族もあっという間に家屋に走り込んだ。すれ違いに家屋から数人銃を握った男らが飛び出して来て、応戦した。壮絶な撃ち合いが辺りを包み込んだ。
パン! パン! パン! パン!
家屋の屋根にある物干し場からスナイパーが侵入者目がけて撃ち込んでいた。
ドキュン! ドキューン!
三人の侵入者のうち二人は即死。あと一人は腕を撃たれて、その場に倒れ込んだ。
その男は両手を挙げて立ち上がったが、背中に隠し持っていた銃を取り出して片手で発射しスナイパーを撃った。
なおも抵抗しようとする男は別のターゲットを狙おうとしたが、「殺すな!捕らえろ!」という主人の一声で一旦は投降する振りをしたが、俄かに用意していた毒薬を口に含み、苦しみながら絶命した。
主人は男らに指示して遺体の処理にかからせ、遺体は速やかにその場から運び出された。
テーブル席付近は割れた皿などが散乱し、壁に張り出されていた新聞記事は弾丸で吹っ飛び、くしゃくしゃになってテーブル席の床の隅に散っていた。
主人の安全宣言を受けて、玲らは恐る恐る家屋の扉を開けて外の様子を窺った。
「あの連中は反ウイグルの与太者です。残忍な権力者に札束で頬を撫でられてわれわれを狙ったのでしょう」
「それにしても、随分と防備が万全ですね。乳飲み子を抱いたお母さんも立ちどころに家の中に身を隠したし、家の中から武装した男の人が飛び出して来るし。あの客用のテーブルの仕切り板は弾除けだったのですね。道理で背もたれにしては大きいと思いました」
楽器が壊れていないか確かめながら主人が答えた。
「われわれは常に敵対者から命を狙われているんです。だから、常日頃から非常対応の訓練を欠かしません。いざという時に誰がどう動くか意識しながら暮らしています。折角皆さんが楽しんでおられたのに残念ですが、事情をご理解いただいてお許しください」
主人が頭を下げた。玲らは恐縮するだけだった。こちらの怪我人はスナイパーの男性だけで、右腕を負傷しただけで助かった。
「あなたたちこれから何処まで行かれるのですか。少年をお連れだし大変でしょう」
主人が楽器を鳴らし、音を確かめながら尋ねた。
「とりあえず敦煌まで行こうと思っています。そこにわたしの上司の知り合いが住んでいますので」
まだ見ぬ赤間を想像しながら玲が答えた。
「これからもひょっとしたら危険な状況が待っているかも知れません。だから今乗っておられるマイクロバスを帰して、うちのマイクロに乗り換えては如何ですか。ドライバー兼ボディ・ガードにうちの若い者を一人付けます。如何ですか」
玲が渡りに船と協力をお願いすると、主人は傍に控えている屈強そうな若者に早速その旨を伝え、随行を命じた。
日に焼けた若者は玲らにほほ笑み、任せておけとばかり厚い胸板を叩いてみせた。
「こいつはトホティ・モハメドです。トホティと呼んでやってください」
主人は若者の肩を抱いてほほ笑んだ。
玲らは両肩から銃弾ベルトを十字に垂らし、戦士然としたトホティに挨拶し、握手した。
玲はとりあえず古賀に緊急事態などを報告する電話を入れた。
「おお、玲。どないや、そっちの様子は?」
古賀の信じられないほどのんびりした低音が玲の耳に届いた。玲は古賀が酒でも飲んでいるのかしらと思った。
「いっちゃんもこちらに来るべきやったなあ。事態はなかなか深刻やで」
玲は詳しく事情を説明した。
古賀はじっと耳を傾けていたが、玲の事情説明が終わるとこう返した。
「それは危険な目に合わせてしもたな。ゴメン。皆に謝っといてくれ。どうやら俺の見通しが甘かったようやな。今実はドイツのミュンヘンにあるウイグル族の世界組織の本部に問い合わせをしているとこや。もう間もなく確たる返事が返ってくる頃や。いや、実は最近トルファン近辺で支配階級の漢族の不穏な動きがあるちゅうんや。ちゅうことはウイグルの絡みに違いない。その辺の事情と、マー君の置かれた立場、それにご両親の行方が本部でわからないかと思って、問い合わせ中や。も少し待ってえな。連絡するから。とにかく危険を出来る限り避けて行動してくれ。琴平君もマーも元気にしとるか?」
「ええ、元気や。でもやっぱり銃撃戦に巻き込まれそうになったから、口には出さんけど、そら不安やと思うよ」
「わかった。また連絡する」
そう言って電話は切れた。
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