第14話
少ししてディランが夕食の用意ができたと呼びに来てくれ、食堂に向かうと既にアナベルとマーサが待っていた。ディランとマーサに給仕をしてもらいながら夕食を食べる。今日の料理もどれも美味しい、さすがマーサだ。アナベルも気に入ったようで美味しそうに食べている。今日の出来事や学園でのことを喋りながら楽しく夕食を終え、食後のお茶の時間になった。食堂から談話室へと移動しお茶を楽しむ。しばらくするとディランから声をかけられた。
「お嬢様、二人が帰って参りましたがこちらにお通ししてもよろしいですか?」
「あら、ようやく帰ってきたのね。ベル、紹介したい家族が帰ってきたのだけど、こっちに呼んでもいいかしら?」
「もちろんです!」
「ありがとう。じゃあこちらに呼んでちょうだい」
「かしこまりました」
ディランは二人を呼びに一旦部屋を出ていった。
「ベル、さっきも言ったけど驚かせちゃったらごめんなさいね」
「心の準備はしてありますから大丈夫です!」
「ふふっ、頼もしいわ」
そして少ししてディランが戻ってきた。その後ろにジークとアンナを連れて。
「お嬢様お待たせいたしました」
「ディランありがとう。それじゃあ二人ともこちらに。紹介するわ。友人のアナベルよ」
「アナベル・ホワイトです。本日はお会いできて光栄です」
アナベルは丁寧にお辞儀をして挨拶をしている。礼儀がしっかりしており好感が持てる。
「あぁ、俺はジークだ。冒険者をしている。よろしくな」
「私はアンナです。ローズ商会で働いています。よろしくお願いしますね」
「はい、よろしくお願いしま……っ、えっ!?」
挨拶が終わりアナベルが顔を上げると、目の前の二人の顔に驚いたのか固まってしまった。おそらくそうなるだろうと思っていたので先に謝っておいたのだ。
「え、銀色の髪に冒険者、ジークさん…それにローズ商会のアンナ、さん……えっ、『銀の狼』と『商売の申し子』…?」
「ふふっ、さすがベルね。そうよ『銀の狼』のジークに『商売の申し子』のアンナよ。二人も私の家族なの」
「え、えっーーーっ!?」
ジークとアンナは今やカラフリア王国の有名人なのでアナベルも知っているかなと思ったが、やっぱり知っていたようだ。少し時間が経つとアナベルは状況を把握できてきたようで落ち着いてきた。
「先ほどは失礼しました…」
「ベルが謝ることじゃないから気にしないで。でもやっぱり驚かせてしまったわね。ほんとあなたたちは有名人ねー」
「リア…お前に言われたくない。それに『銀の狼』とか恥ずかしすぎる…」
「ジークの言う通りマリア様には言われたくないですね」
「それもそうね…。悪かったわ」
「…あのぉダリア様。お二人が言うリアさんとマリアさんというのはダリア様のことですか?リアなら愛称かもしれませんがマリアというのは別人では…?」
「…いいえ、それも私の名前なの。あのねベル、今から私の秘密を見せるからあんまり驚かないでね?」
私は変身魔法を使い、まずはリアの姿になった。
「リアというのは私の冒険者としての姿なの。そして、」
続けてマリアの姿に変身する。
「マリアはローズ商会での私の姿なのよ」
そう言い終わってから元の姿に戻った。何も反応が無いので不安になってアナベルを見てみると、手を組み目を輝かせて私を見ていた。
「『竜殺しの乙女』に『王国の女神』…。まさかこのお二人がダリア様だったなんてっ…!ダリア様素敵ですっ!!」
「あ、ありがとう。今まで黙っていてごめんなさい」
「いえいえいえ!全然気にしていません!むしろこんなすごい方が私のお友達だったなんて、こんな幸運はありません!」
「ベ、ベル、少し落ち着きましょ?ディラン、マーサ、みんなにお茶をお願いね」
「「かしこまりました」」
アナベルが落ち着くように新たにお茶を用意してもらう。ジークとアンナも空いているソファに座ってもらい四人で会話をする。どうやら私も二人に負けず劣らずの有名人だったので、アナベルはリアとマリアも知っていたようだ。冒険者と商会の登録はブルー領なのだが王都でもかなり有名らしい。あの名前は恥ずかしいけれど、私の努力が認められたようで嬉しくはある。そして落ち着いてきたアナベルに本題を切り出すことにした。
「驚かせてしまったけどこの四人が私の家族よ。これからもよろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします!」
「それと私の秘密はしばらくご家族にも内緒にしてほしいの」
「それはもちろんです!ダリア様の秘密は私が守りますっ!」
「ふふっ、頼もしいわね」
「えへへ」
「それとね、前から考えてたことがあるんだけれど、ベルさえ良ければ学園卒業後にローズ商会で働かない?」
「え、わ、私がですか!?ローズ商会に!?」
「そうよ。ベルと一緒に過ごすようになって、ぜひ一緒に働きたいと思ったの。友達だからという理由ではないわ。ただ純粋にベルの人柄や努力する姿をこの目で見てきたからこそなの。無理にとは言わないから、考えてみてくれないかしら?」
「ダリア様…。私、嬉しいです。こんな私を必要と言ってくれる人がいるなんて。しかもその人が私の大切なお友達だなんて、本当に嬉しい。…私のこの見た目を気にせずに仲良くしてくれたのはダリア様が初めてなんです」
そう言いながらアナベルは涙を流していた。一体どうしたのかと心配になって声をかけようとしたが、その前にアナベルが口を開いた。
「…私は幼い頃からこの白い髪と何色かも分からない不気味色の瞳でまわりから距離を置かれてきました。そんな私が学園に入学したとしてもお友達なんて出来ないだろうと思ってたんです。でもダリア様を見て素敵な方だな、お友達になりたいな、そう思って勇気を出して話しかけたらダリア様は私の見た目なんてこれっぽっちも気にせずに仲良くしてくださいました。それだけでも嬉しかったのに、私のことを見て、認めてくださって本当に嬉しいのです」
「ベル…」
ベルは涙を拭いながら、そして微笑んで言った。
「ダリア様のお力になりたいとずっと思っていました。私で良ければぜひ一緒に働かせてください」
その微笑みはとても美しかった。
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