第9話 クイーンエリザベスⅡ世
「ジェイムス、あなた何て事してくれたの」
その時、大きな甲高い声が響いた。
その声の主を見たジェイムス・ポンドは、反射的に
カレンはその隙にポンドの手を離れジュリーの元に駆け寄った。
「女王陛下、なぜここに?」
そこには、クイーンエリザベスⅡ世、その人が立っていた。
黒いロールスロイス・リムジンが数台停まり、屈強なSPたちがすでに取り囲んでいる。女王の側にはMi7の最高責任者MMが控えていた。
クイーン・エリザベスⅡ世の怒りに震える声が響く。
「こんな幼い子を人質にしてまで、恥を知りなさい」
「…………」
ジェイムス・ポンドは声が出ない。
「こんな卑怯で下劣なこと、イギリスの男がすることじゃないわ、ジョンブル魂は何処に行ってしまったの、ああ情けない。欲しい物があるなら正々堂々と盗みなさい。分かったわね、ジェイムス」
ジェイムス・ポンドは、MMから
「最近、手柄がなかったので焦っていたのかもしれないけど、幼い子の誘拐というのは、さすがに感心できないわね。陛下のお怒りもごもっともよ。どこかの将軍様の国じゃあるまいし、しばらく謹慎しときなさい」
「しかし、MM、正々堂々と盗むというのは、どういう風に盗むんですか」
「そんなの知らないわよ。自分で考えなさい」
しかし、ポンドには腑に落ちないことがあった。この計画は、ポンド自身が情報を入手し、単独で実行したものだ。MMにも報告はしていない。誰も知るはずはないのだ。誰が女王に知らせたのか。
答えは簡単である。
カレンがポンドのパソコンを操作し、何重ものガードを破り、パスワードとIDを解読しながら女王のパソコンまで到達したのだ。ポンドがトイレに行っている間、わずか数分ほどで終わった。ポンドはカレンのIQがすでに300に達し、ジュリーを超えてすでに人類の頂点に立っていることまでは調査していなかった。普通の小学校四年生だと思っていたところに大きな敗因があったのだ。しかし、それも仕方がない。母親のジュリーでさえ、まだ、そのことには気が付いていないのだ。
その時、スバルサンバーが緑のプラズマに包まれ始めた。中からカレンが女王に手を振っている。女王もにこやかに手を振っている。そして、突然、消えた。
女王は、しばらく
緑のプラズマに包まれ、ジュリー、カレン、渡辺の三人を乗せたスバルサンバーは、元のガレージまで戻ってきた。
「やれやれ、なんとか無事で戻ってこれたぜ」
渡辺は、ハンドルを持ったまま大きくため息をついた。
「畜生、もうちょっとでこいつをタコ部屋に放り込めたのに」
ジュリーが毒づく。
「本気だったのか?」
「当たり前よ、本気も本気、大本気」
「…………」
「それにしても渡辺、お前、臭いぞ、しばらく風呂にも入ってねぇだろ」
「…………」
「さあ、カレン、早く帰って、ご飯食べて、お風呂入って、寝ましょうね」
「はーい」
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