決論
------違和感があった。
それは多分些細なことで、取るに足らないことなのかもしれない。でも確かにそれはある。
電気をつけたり消したりしながら、六畳一間の狭い部屋を見回す。久方ぶりの外出が災いしてか、少し眩暈がする。
定まらない視界。
それでも俺は視線を巡らせ---------。
そして見つけた。
上がっていた。
両手を膝の上に乗せ、綺麗に正座していたはずの現川。その手が上がっていた。
まるで助けを求めて喘ぐ、今にも溺れそうな子供のように。その手は天に向けて伸ばされていた。
彼女は一体何を伝えようとしているのだろうか。なぜ今までなんのアクションも起こさなかったのだろうか。
分からない。分からないが、やるべきことはわかる。
彼女の安否を確かめなくてはならない。
そのためには同窓会に出なくてはならない。
そしてそのためには。
俺は再び錆びた家の戸を開けた。
そして走る。目的地へ向けて。
走っても歩いても這っても転んでも結果は大して変わらない。でも俺はその時なぜか走っていた。最も非合理的な行動をとっていた。それぐらいにはきっと、必死だったのだ。必死になれたのだ。俺は自分が「生きている」と、感じることができたのだ。それがたとえ思い込みだったとしても、一向に構わない。再び生きる目的ができたことに変わりはない。
あの挫折から一年、救世主のように三日とは行かなかったがしかし、
俺は-----有明五日は生き返った。
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