第7話 運命の日①

はい、康孝やすたかです

今日は待ちに待ちに待ちに待ちに待ったと見せかけて待ちに待った・・・

あ~ちょっと、待って?何言ってんだろう俺

一回落ち着け


「やばい、緊張する」


そう、今日は待ちに待った優衣ゆいさんとの遊園地の日

俺にとってめちゃくちゃ重要な日

そのせいで緊張しすぎて待ち時間の1時間弱前に来てしまった

普通に馬鹿だし、何もすることが無い


ふと、優衣ゆいさんと初めて会った時のこととか、昔のことがなんとなく自分の頭の中に浮かぶ

優衣ゆいさんとの馴れ初めから今まで、一度自分の中で整理しておこう



       ~~~~~~~


まずは俺と優衣ゆいさんの馴れ初めからだ

今年俺は高1になった訳だが、入学式が終わって最初の学校の日

優衣ゆいさんが座っていた席がちょうど俺の席の隣だったんだ


めっちゃ可愛かった、一目惚れに近い

だけど、可愛いだけでは別にここまで好きになってなかった

あの時俺がスマホを落として、それを拾ってくれたんだ

その時に一言


「落としましたよ。ロック画面のワンちゃん、可愛いですね」


うん、可愛いよね。俺の愛犬のチワワだ。名前は麦茶

俺が小さい時からずっと一緒にいる愛犬だ、もはや俺の一部と言ってもいい

ただ悲しいことにそのときは俺の頭の中には麦茶のことは浮かんで無かった

俺の愛犬よりも可愛い目の前の女子をただ見つめるしか出来なかった


こんなことがあって俺が優衣ゆいさんを好きになって、はや半年強

時間の流れというものは早いもので、隣の席だからたまに喋りはしたものの

今まであまり進展なく今日まで来てしまった


ただ、この前の遠足でようやく俺の理想の状況になった

優衣ゆいさんからの誘いで

本当は俺が好きなんだから俺が誘うべきだったのに


だから今日は俺が頑張ることにした

最近遊園地とか行ってなかったけど、予習してきたし

遠足行く前にかぼちゃパイをあげるって言ったから、今日持ってきた


しかも、このパイを作ったのは親ではなくて俺だ

父さんに手伝いをするという口実で


「手伝いするから俺が作ったパイをくれ」


という事を伝えた。そしたら父さんは


「なんだお前、最近いつも手伝わないのに。お前が作ったパイ?そりゃあ売り物になるわけないから逆に作るなら自分で責任取れ」


って言われた。酷すぎる父親だ

確かに父さんと同じレベルでは絶対にないのだけど

だけど、俺も小さい頃は手伝っていたからある程度はできる

過去にかぼちゃパイを教わった記憶をおもいだして、なるべく手間暇かけて作った


       ~~~~~~~



「喜んでくれるかなぁ」


何だか不安になってきた

早く来すぎたのも相まって、余計に不安になる

不安というかなんというか・・・日本語って難しいな

この気持ちを日本語にすることが出来ない


「あ、あれ?やすくん?」

「え?」


この声は・・・いや、まさかな

今は予定待ち合わせ時刻よりも30分早い

こんな早く優衣ゆいさんは来ないだろう

そう思いながら後ろ振り返る


「ゆ、優衣ゆいさん!?」

「やすくん、早いね!私張り切ってちょっと早めに来たのに!」

「俺も、早く来すぎたんだよね。だけど優衣ゆいさんもそうだったなら丁度よかった」

「やすくんも早く来ちゃったんだね!でも二人とも予定より30分も早く行動できるなんてラッキー!」

「確かに、それじゃ遊園地入ろうか?」

「うん!入ろう!」


遊園地の受付窓口でフリーパスを買う

幸い、お小遣いは俺も優衣ゆいさんも全然使わないタイプだったからなんとかなった

それにしてもラッキーだな、俺は待ち時間まで虚無になろうと覚悟していたのに


「それにしても今日空いてて良かったね!」

「確かに、もう少し混んでるかと思ってたけど」

「ラッキー、これで2回目!」

「今日は運勢いいかもしれないね」


これは俺の運勢が良いのか、優衣ゆいさんの運勢が良いのか?

出来れば俺の運勢が良い方が良いな

これには理由がある


実は一つ、今日やると決意したものがある

それは・・・『告白』だ


「ねえねえ!やすくんは最初どれに乗りたい?」

「俺はどこでもいいよ、でも最初だし目の前のアトラクションでもやる?」

「うん!そうしよっか!」


そんなに急に告白って思うかもしれないけど

俺は入学当初から好きだったから、今日遊べたことは凄く大きな進展

しかも、次いつ遊べるのかも分からない


だから今日告白する、決意はもうかぼちゃパイを作ってる時に

パイと一緒に固めてきた

全然上手くない、こんな言葉しか言えないくらい本当は緊張している


「空中ブランコだって、やすくん乗れる?」

「全然大丈夫だよ、優衣ゆいさんは大丈夫?」

「もちろん!あと私のことは呼び捨てで良いよってこの前言ったでしょ?」

「あっ、ありがとう」


そうだったそうだった

この前、呼び捨てで良いよって言ってくれてたんだった

うわ~完全に忘れてた、今までの癖でこうなっちゃうんだよな


「まもなく、空中ブランコが開始いたします。シートベルトをしてください」


おっと始まるみたいだ

さっさとこのシートベルト?をしないと

なんというか、本当にこれをシートベルトと呼んでいいのかは怪しいものがあるが


「それでは空中ブランコ、スタートです!」

「あ、始まるって!」

「すごい、なんか懐かしい気分」


ブランコがまわりはじめる

高校1年生の今でも普通に楽しい

まぁ、優衣ゆいと一緒に遊んでるからかもしれないけど


「風が気持ちいい!」

「でもちょっと寒いね!」


今の季節は秋と冬の境目くらいの10月中旬

今日も上着を着てきたが、風が気持ちいい反面普通に寒い

ただ、そんなことを言ってる間に直ぐに終わった


「お疲れさまでした!気を付けてシートベルトを外し、降りてください」

「楽しかったね!」

「うん、思ったよりもこれ良かった」


これ、俺好きだな

普通にもう一回やってもいいくらい気に入った

ただ他にもアトラクションはいっぱいあるし、一通り回ってから戻ってこようか


「やすくん!次あれ乗ろうよ!」

「おっけー、行こう」


ご飯食べる前に沢山アトラクションに乗っておこう

食べた後気持ち悪くなって吐いたら、告白どころじゃないからな

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