第34話 綺麗な王都の散策
下水道を綺麗にした次の日。
朝からミナトとタロ、フルフル、ジルベルト、サーニャは街を散策した。
フルフルの思い出の人リッキーを探すためだ。
もちろん冒険者ギルドと神殿にもリッキーという名の子供の情報を探してもらっている。
「フルフル、リッキーを見つけたら教えてね」
「ぴぎ~」
ミナトは空を見上げる。今日もピッピは空高くを飛んでいる。
「あ、ピッピ、どこかに飛んで行った」
ピッピはたまに上空から消えて、どこかに行くのだ。
「ピッピは一羽でしらべているのかな~」
心配そうにつぶやくミナトの頭を、ジルベルトがワシワシと撫でた。
「まあ、一羽で頑張りたいんだろう。きっとピッピにも事情や意地があるんだろうさ」
「そっか。でも心配だよ」「わふ~」
「信頼して、任せるのも仲間なら大切だぞ?」
「そっか」「わふわふ」
湖の精霊メルデやスライムたちなどのたくさんの聖獣たち。
ミナトは、みんなのことを信頼して、その地域を任せている。
「僕とタロができることは、かぎられているものなぁ」
だから、仲間を頼らないといけない。
「あ、それがサラキア様がさせたかったことなのかも?」
だから契約して力を借りる能力を自分に授けたのかもしれないとミナトは思った。
「あ、ミナト! タロ様、こっちこっち」
少し先行してたサーニャが笑顔で手招きする。
「どしたの、サーニャ」「わぁふ?」
「これが前に言っていた王都ファラルド名物よ」
それは串に刺した鶏皮をカリカリに焼いてあまじょっぱいたれをつけたものだ。
「この店が一番おいしいんだから」
「おお、サーニャちゃん、うれしいこと言ってくれるねえ! おまけしちゃうよ!」
どうやら、サーニャ行きつけの屋台らしい。
「この子に食べさせてあげたかったのに、屋台が出てなかったから。病気?」
「うちの子の看病だ。もう治ったがな。それに、この辺りは特に下水の臭いがひどくてな……」
「あー、それはきついわね」
強烈な下水の臭いが漂っているところで、食べ物の屋台を開いても売り上げは望めない。
「下水の臭いがせっかくの鶏皮やたれにしみついて、食えたもんじゃなくなるからな」
「そっか」
「だから、やっと今日から営業再開だ!」
屋台の主人は嬉しそうに笑顔で言った。
「再開のお祝いもかねて、鶏皮串を十本ちょうだい!」
「まいどあり! 三本おまけにつけちゃおう」
そういって、店主は余分に包んでくれた。
「神殿の夜ご飯でも出たけど、やっぱり屋台のは、一味違うのよ!」
そういって、サーニャは鶏皮串を買ってくれた。
「ありがとー」「わふわふ」「ぴぎ」
ミナトとタロはパクリと口に入れる。
「あ、おいしい! 脂なのに、脂っこくない! 不思議!」「わふ~」「ぴぎ」
「そうだろう? 炭火で焼いて余分な脂を落としているからな!」
おいしそうに食べるミナトたちを見て、店主もうれしそうだ。
そんなミナトを見て、食欲が刺激されたのか、串を買う通行人が増えた。
「ミナトとタロ様は、本当においしそうに食べるなぁ」
ジルベルトもほほを緩める。
「すごくおいしいからね!」「わふぅ」
「そっか、どんどん食べて大きくなれよ! あ、カステラが売ってるぞ。買ってやろう」
昨日、今日で、一気に営業再開した屋台が増えたのだ。
「いいの?」「わふ?」「ぴぎ?」
「いいぞ。どんどん食え」
「やったー」「わふわふ」「ぴぎ~」
今日はミナトとタロにとって、久しぶりの休暇と言ってよかった。
ミナトは連日下水道に十時間ぐらい潜り、タロは留守番していたのだから。
リッキーを探すという目的はあるとはいえ、緊急性はない。
ミナトたちは、初めてのんびりと王都を歩くことができたのだ。
「ぴぎぃ~」
「フルフルも楽しい?」
生まれて初めて地上に出たフルフルは、きょろきょろ周囲を見回している。
フルフルは、これがリッキーが語ってくれた王都の街並みなのかと感動していた。
「ねえ、ジルベルト、サーニャ、王都っていつもこんなに元気なの? お祭りみたい」
「活気があるかってことか? そうだな、ここまでにぎやかなのは久しぶりかもな」
「最近はメルデ湖の事件とかいろいろあったからね。にぎやかで私もうれしいわ」
メルデ湖の事件があり、同時に下水道の環境悪化が始まった。
街が悪臭に包まれ、病人が増え、街自体の活気が失われていたのだ。
「ミナトたちがメルデ湖を浄化して、下水道を綺麗にしたおかげね」
「ああ、サーニャのいうとおりだ。誇っていいぞ。ミナト、タロ様、それにフルフル」
「そっか、うれしいかも」「わふ」「ぴぎ!」
ミナトたちは、のんびり王都を散策しながら、おいしいものを食べつつ、リッキーを探した。
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