第33話 綺麗になった下水道
ミナトが下水道清掃を始めてから一週間目のお昼ごろ。
ミナトとスライムたちは最後まで見つけられなかった瘴気だまりをやっと払うことができた。
「やったー!」「ぴぎぴぎ~~」
特に分厚い壁の向こうに隠れていたので、見つけることがなかなかできなったのだ。
「大変だったねー」
「ぴぎぃ~」「ぴぎぴぎ」「ぴぃぎぃ~」
百二十匹を超えるスライムたちが、一斉にブルブルした。
この一週間で、聖獣ではないスライムは百匹以上増えている。
聖獣スライムと合わせて百二十匹以上のスライムが総出で、下水道を探索したのだ。
もちろん、ミナトも一生懸命探した。
「でも、なかなか見つからなかったおかげで、きれいになったね!」
「ぴぎ~」
ミナトもスライムたちも掃除しながら探索していた。
そのおかげで、下水道は本当に綺麗になった。
「ごみもないし、瘴気の気配もないし、臭くもないし!」
「ぴぎぴぎ!」
スライムたちは「ミナトありがとう、これからは僕たちが頑張るね!」という。
「こちらこそありがとだよ」
「ぴぎ~~」
「そだね、これからは聖獣スライムたちも解呪できるし瘴気も払えるもんね!」
ミナトと契約したおかげで、聖獣スライムたちは解呪と瘴気払いの能力を得た。
再び汚染されることがあっても、聖獣スライムたちだけでも対処できる。
「ぴぎぃ」
そのとき、フルフルが「ミナトについていく」と言ってプルプルした。
「え? ついて来たいの? 僕はうれしいけど……ここは大丈夫?」
フルフルはスライムたちのリーダーなのだ。
「ぴぎぴぎっ」
みんな強くなったし、スライムたちも増えたから大丈夫と堂々とプルプルしている。
「ぴぎ~ぴぎぴぎ」「ぴぎぴっぎぃ~」
スライムたちが口々にフルフルを連れて行ってあげてという。
どうやら、フルフルがミナトについていくことは昨夜話し合われたことらしい。
「どうして?」
「ぴぃぎぃ~」「ぴぎぴぎ」「ぴっぎ~~」「ぴぎっぴぎぃ~」
フルフルとスライムたちは口々に言う。
第一にミナトに助けてもらった恩返しがしたいということ。
それにフルフルは、自分をフルフルと名付けた人間に再会したいのだという。
「どんな人なの?」
「ぴぎ~ぴぎぴぎ」
それはリッキーという名の小さな男の子だったという。
柵に引っかかって脱出できなくなり弱っていた幼いフルフルを助けてくれたのだ。
どうしてリッキーが下水道にいたのかはわからない。
だが、一週間ほど、フルフルはリッキーと暮らしたのだとという。
リッキーは持っていた少しの食べ物を、弱っていたフルフルに分けてくれた。
それから、フルフルはリッキーに下水を浄化して飲ませたり、食べ物を逆にわけたりした。
そうやって、力を合わせて生き延びたのだという。
「それから、リッキーはどうなったの?」
「ぴぃぎぃ」
一週間後、大人がリッキーを探しに来て連れ帰っていったという。
「ぴぎ」
リッキーと暮らしたいわけではない。ただ幸せかどうか、元気かどうか見てみたい。
そうフルフルは言う。
「それってどのくらいまえなの?」
「ぴぎ~」
フルフルは「よくわかんないけど三年ぐらい前かも?」という。
スライムたちはずっと下水道にいて、時間の感覚も季節感もはっきりしないのだ。
数年の誤差があってもおかしくないと、ミナトは思った。
「でも、王都は広いから会えるかどうかわかんないよ?」
「ぴぎ~」
それでもいい。それにリッキーが語ってくれた地上を見てみたい。
そういって、フルフルはプルプルした。
「そっか。じゃあ、一緒に行こうか」
「ぴぎ~」
「でも、本当にリッキーに会えるかわからないからね。王都は広いんだから」
「ぴぃぎぃ~」
そうして、フルフルはミナトと同行することになった。
「じゃあ、みんな下水道のことはお願いね」
「「「ぴぎ~」」」
「また会いに来るからね。それに困ったときは神殿に言いに来てね」
「「「ぴぃぎぃ~」」」
ミナトは、百二十匹を超すスライムたち全員を、順番にぎゅっと抱きしめた。
それから、ミナトとフルフルは一緒に下水道を出る。
「わふ!」
「ただいま、タロ。知らない人について行ったりしてない?」
「わぁふう~」
そんなことしたことないとタロは言う。
「そっか、えらいねぇ。あ、タロ。この前も紹介したけどフルフル」
「ぴぎ~」
一応聖獣スライムたち全員を、二日目にタロに紹介してあるのだ。
「フルフルはね、会いたい人がいるんだって。それでね……」
「わふ!」
ミナトがこれからフルフルが同行することを説明すると、タロは嬉しそうに尻尾を揺らした。
ミナトたちは、神殿に帰ると神殿長にスライムたちが来たら教えてと伝えた。
神殿長はスライムが来たら自分に報告するようにと神官に周知する。
スライムたちはサラキア様の命を受けて、下水道を守っているのだと。
これにより、スライムはサラキア様の使いの聖なる生物だとみなされるようになった。
ミナトが自室に戻ると、ピッピがすでに戻ってきていた。
「ピッピ。調査は順調?」
ここ数日、ミナトが清掃中、ピッピは飛び回っていた。
それだけでなく、夜中にこっそり王都の上空を飛び回っていた。
「ぴい~ぴぃ」
もう少しかかりそうだとピッピは言う。
「手伝ってほしいことがあったら、いつでも言ってね?」
「ぴぃ~~」
ピッピは羽をバサバサさせながら「その時はお願いね」といった。
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