第31話 甘いパン
「ミナトさん、タロ様、ピッピさん、一緒にパンを食べましょう! ミルクもありますよ」
「いいの?」「わふ?」「ぴ?」
「もちろんです、一緒に食べましょうね」
「わぁ! ありがとう! お腹空いてたんだ!」「わふわふ」「ぴ~」
いただきますと元気に言って、ミナトたちはパンを食べる。
「あ、クリームパンだ!」「わふわふ!」
そのパンの中には、甘いカスタードクリームが入っていた。
「おいしい!」「わふ~」「ぴぃ~」
久しぶりのクリームパンは信じられないほどおいしかった。
甘くて、現代日本で食べたどのクリームパンよりも、おいしく感じたぐらいだ。
異世界にクリームパンが存在したことに、ミナトとタロは感謝した。
「お口に合ったみたいでよかったです」
アニエスたちもクリームパンを笑顔で食べている。
「おいしすぎる……あ。サラキア様にお供えしよう」
「ばうばう」
「そうだね、至高神様にも供えよっか。供えてもいい?」
「もちろんです」
聖女はにっこりと許可を出す。
「ありがと」
ミナトはサラキアの鞄から、サラキア像とうんこみたいな至高神像を取り出した。
それぞれ像の前に一つずつクリームパンを置いて、
「サラキア様。至高神様。いつもありがと。これはおいしいクリームパンです」
「ばうばう~」
ミナトは手をパンパンと叩き、タロは頭を三回、上下に動かした。
すると、スーッとクリームパンが消えた。
「よかったよかった。もう一個食べよう」「ばふばふ」
「ふぁ!?」「え? 消えたぞ?」
アニエスとジルベルトは驚愕して目を見開いた。
残りの者たちも驚きのあまり固まっている。
「サラキア様たちが食べたんだから、消えるよー、ね~」
「ばう~」
「そ、そうなのか。知らなかった」
普通はお供えしても消えたりしないのだ。
だが、ミナトは使徒でタロは神獣、しかも神像自体も特別。それゆえに起きた奇跡だった。
すかさず神殿長が言う。
「あっ、ミナト様! タロ様! そのお願いが!」
「どしたの?」「わふ?」
「ミナト様とタロ様がお作りになられた神像を譲っていただきたいのです!」
「いいよ! いっぱいあるからね!」「わふ!」
「ありがとうございます。もちろんお代はお支払いします」
「ただでいいよ?」「わふ~?」
「いえ! こういうことは大事ですので! きちんとさせてください!」
そういって、神殿長は代金を払うことを譲らなかった。
ミナトとタロは、神像を五十体ずつ合計百体を神殿長に販売することになった。
一体につき百ゴルドでいいとミナトは言ったが、神殿長は百万ゴルド払うと譲らない。
最終的に、アニエスの仲介で、一体十万ゴルド+滞在中の食費と宿代に落ち着いた。
それでも一千万ゴルドだ。菓子パンを大量に買える額である。
「こんなに……沢山もらって申し訳ないし……これもおまけでつけるね?」「わぅ」
ミナトとタロは拾って磨いたザクロ石を十粒ほど神殿長にプレゼントした。
「ありがとうございます! ほんとうに、ありがとうございます」
神殿長は本当に感動して、涙を流さんばかりだった。
像を販売した後も、ミナトとタロは菓子パンを食べる。
クリームパンの他にも揚げパンやフレンチトーストもあった。
「おいしいおいしい!」「わふわふ」「ぴぃ~」
ミナトはゆっくりと菓子パンを食べた。ゆっくりだが沢山食べる。全部で五個も食べた。
タロも同じくらい食べたが、ピッピはミナトから少し分けてもらった分で満腹になった。
「ごちそうさまでした」
「わふわふ」
「食べた食べた、おいしかったねぇ」「わふ~」
満足げに食後の牛乳を飲むミナトとタロにジルベルトが尋ねる。
「ミナトとタロ様はクリームパンが一番好きなのか?」
「一番、一番をきめるのはむずかしい……あんぱんも同じくらい好き」「ばう~」
「あんぱんってのはなんだ?」
「えっと、小豆をゆでて柔らかくしてから砂糖を入れて甘くしたのをいれたパン」「わふ~」
「ほう、それはなかなかおいしそうだな……。もっと他においしいパンはないか?」
「えっとね、クリームパンにカスタードクリームだけじゃなくてホイップを……」「わふわふ」
ミナトとタロはおいしい菓子パンについて、饒舌に語ったのだった。
そして、それを聞いた神殿長が「ふむふむ」といいながらメモを取っていた。
食事が終わり、ミナトとピッピはジルベルトと一緒に自室のお風呂に入った。
「下水は臭かっただろ」
「くさかったー」
「それなのにミナトが臭わないのは、メルデ様の魔法か」
「そう! タロのことも洗おうねー」
ジルベルトに頭を洗ってもらいながら、ミナトは浴室の外のタロを綺麗にした。
「何度見てもミナトの魔法はすごいな」
「えへへ。ピッピもきれいにしようねぇ」
「ぴぴぃ~」
「下水道清掃はどうだった?」
「なんかねー。瘴気がたまってたから、普通の人は入らない方がいいかも」
「なに? 瘴気だと」
「たぶんだけど、メルデ湖から汚染された水が流れてきたせいだと思う」
「なるほど……それは厄介だなぁ」
そんなことを話しながら、ミナトたちはお風呂タイムを過ごしたのだった。
風呂を出た後、ジルベルトは部屋を出ていき、ミナトはピッピたちとサラキアの書を確認する。
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ミナト(男/5才)
HP:353/333→353 MP:472/472→492→497
体力:339→359 魔力:448→468→472 筋力:316→336 敏捷:327→347→352
スキル
「使徒たる者」
・全属性魔法スキルLv→5・神聖魔法Lv20→23・解呪、瘴気払いLv59→62
・聖獣・精霊と契約し力を借りることができる・成長限界なし・成長速度+
「聖獣・精霊たちと契約せし者」
・火炎無効・火魔法Lv+56・悪しき者特効Lv223→243
・隠れる者Lv70・索敵Lv42・帰巣本能Lv25・鷹の目Lv75
・追跡者Lv84・走り続ける者Lv50・突進Lv30
・登攀者Lv20・剛力Lv45
・水魔法Lv+127→130・水攻撃無効
・状態異常無効
契約者
聖獣191体 精霊1体
称号:サラキアの使徒
持ち物:サラキアの書、サラキアの装備(ナイフ、衣服一式、首飾り、靴、鞄)
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「あ、【状態異常無効】が増えてるよ!」
「ぴぃ~~」「わふ!」
スライムたちが持っているのは毒無効だ。
だが、二十体とまとめて契約したことで、毒無効が状態異常無効に進化したのだ。
「ピッピ、何かしてほしいことあるんでしょ?」
「ぴ~~」
「そっか、その前に調べないとだめなんだね。手伝えることある?」
「ぴっ」
ピッピは「大丈夫ありがとう」と言って、ミナトにほおずりした。
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