第6話 力を借りるという言葉の意味

「不思議なとびかただねー」「わふぅ~」


 ミナトとタロは飛ぶフェニックスを眺めながらつぶやいた。


 普通の鳥が飛ぶような感じではない。巣穴の中を滞空しているのだ。

 かといって、滞空するハチドリみたいな鳥のように高速で羽ばたきしているわけでもない。

 ふんわりと羽ばたいて、宙に浮いている。


「聖獣だからかなー」「わふ~」


 ミナトとタロがそんなことを話していると、フェニックスが降りてくる。

 そして、ミナトの眼前で滞空する。


「きゅ~!」


 フェニックスは、ミナトとタロに助けてくれてありがとうとお礼を言った。


「いいよ~きにしないで」「わふ~」


 この三日間で、ミナトはフェニックスの言いたいことがどんどんわかるようになっていた。

 スキル「使徒たるもの」の効果、言語理解が成長したためだ。

 だが、ミナトはあまり気にしていなかった。


「きゅっきゅ!」

「友達になりたいの? いいよ!」「わふ~」


 ミナトもタロも、もう友達のつもりだったので、断る理由はない。


「ぴゅ~」

 フェニックスはミナトに名前を付けてほしいとお願いする。


「たしかに名前がないと不便だもんね。でも名前かー。タロ、なにかいいのないかな?」

「ばう~」

 タロは大好きなものの名前をあげた。


「あんぱんかー。でもこの子はあんぱんって感じじゃないと思う」

「ばう?」

「くりーむぱんって感じでもない思う」

「わふ~」


 却下されても、タロは「そっかー」という感じで気にしていない。

 こだわりがあったわけではないらしい。


「ぴ~」

「うーん。じゃあ、ピッピ! ピッピってどう?」


 残念ながら、ミナトにはネーミングセンスがなかった。

 ぴいぴい鳴くから、ピッピというだけの適当な名づけだったのだが、


「きゅ~!」

 ピッピはすごく喜び、はしゃぎながらも器用に洞穴の中を飛び回った。


 それからミナトたちは一緒に洞穴の外に出て、朝ご飯を食べる。

 今日はみんなで川魚を獲ることにした。

 ミナトたちにとって、川魚を獲ることも、楽しい遊びなのだ。


「今日は十匹もとれた!」「ぴ~」

 ミナトとピッピは協力して二匹。残りの八匹はタロが一頭で捕まえた。


「わふ~」

「そうかなー? 僕もだいぶ魚をとるのうまくなったかな?」

「わふ!」


 そんなことを話しながら、調理するために洞穴の前まで戻っていく。


「みててね!」

「わふ~」「ぴぃ~」

「むむ……はぁぁぁファイアアアア」


 タロとピッピに見つめらえながら、ミナトは気合を入れて、かっこよく指を焚き木に突きつける。


 ――ゴオオォオオオォォォォ


 ミナトの指から、直径一メートルの真っ白い火球が飛び出して、焚き木を一瞬で灰にした。

 ミナトはいつも通り小さな火を出したつもりだったのに、あまりにも火力が強すぎた。


「…………おお」「…………わふぅ」

「ぴっぴぃ!ぴいぴいぴい」


 ミナトとタロは突然のことに固まる中、ピッピだけが楽しそうにはしゃいで飛びまわった。


「おかしいな?」

「わふわふ~」

「そうだね。こういうときはサラキアの書だね!」

 ミナトはサラキアの書を鞄から取り出して、開いてみる。


 ----------

ミナト(男/5才)

HP:12/5→32

MP:35/5→47

体力:5→38

魔力:5→34

筋力:5→18

敏捷:5→26

スキル

「使徒たる者」

 ・全属性魔法スキルLv0・神聖魔法Lv10→12・解呪、瘴気払いLv10→12

 ・聖獣・精霊と契約し力を借りることができる・成長限界なし・成長速度+

「ピッピと契約せし者」

 ・火炎無効・火魔法Lv+56・悪しき者特効Lv26

契約者

 ・ピッピ(聖獣フェニックス)

※ステータスはこまめに確認しよう!

 ----------



「おお、すごく成長している!」

「わふわふ!」

「あれ? 契約? 友達になっただけなのに」

「きゅ~~きゅきゅ」


 友達になるということが、契約だったようだ。


「ばうばう!」

「そうだね、タロのもみようね」

 タロのステータスを見たら、ほとんど成長していなかった。


「……わぅ」

「タロは最初から強いからね。成長はゆっくりなんだよ」

 そういって、ミナトはタロを慰めた。


「わふ?」

「うん、タロは強いよー」

「わぁうわぅわう」


 ミナトに褒められて、タロは嬉しそうにしっぽを振った。


「ぴい~~」

「んー。ピッピのステータスは見られるかなぁ。試してみるね」

 ミナトはサラキアの書をめくる。


 ----------

ピッピ(男/8才)

HP:157/203

MP:38/241

体力:278

魔力:235

筋力:81

敏捷:157

スキル

「炎の聖獣」

 ・火炎魔法Lv112・火炎無効・悪しきもの特効Lv52

「サラキアの使徒と契約せし者」

 ・解呪、瘴気払いLv+6

契約者

 ・ミナト(サラキアの使徒)

 ----------


「おお、ちゃんとみられた。さすがサラキア様の神器!」

「きゅっきゅ」


 ピッピは食い入るように自分のステータスを見つめていた。

 それをミナトとタロも一緒に見つめる。


「僕に火炎無効と火炎魔法とかが付いたのはピッピと契約したからかな」

「わふ?」「ぴい?」

「こんなときこそ、本で調べよう!」


 ミナトは確認するためにサラキアの書のページをめくる。


 ----------

【使徒と精霊・聖獣との契約】

 使徒は以下の条件を満たした精霊・聖獣等と契約することができる。

 ・信頼関係がある。・互いに契約することを望んでいる。


 契約の方法

 ・互いに合意した後、使徒が精霊・聖獣等に名前を付ける。


 契約の効果

 ・使徒は精霊・聖獣等の持つ一部のスキルを獲得できる。ステータス増加効果。

 ・精霊・聖獣等は解呪、瘴気払いのLvアップ。


 ※契約することで、使徒は強力な力を得ることができる。

 獲得スキルLvやステータスの増加量は相性や精霊・聖獣等の強さ、格によって異なる。

 ----------


「強い精霊や聖獣と契約するほどスキルLvとかステータスがつよくなるってことかな?」

「わあぅ~?」


 精霊や聖獣も解呪のレベルアップするなら、しない理由がない。


「どんどん契約していった方がよさそうだね!」

「わふ~」「ぴぃ~」

 ミナトはどんどん契約して、強くなろうと心に決めた。

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