第2話 魔法少女ぷるり誕生!!
何が何だか分からなかった私は、不思議な水色の生命体の言われるがままに窓を開けて中に入れた。
正直入れるのには抵抗があったが、入れないとこのままずっと騒ぎ続けると脅迫まがいなことを言われたため仕方なくだ。
「あの…それで…あなたは…」
「僕の名前はとるぷんプルよ!!」
「と、とるぷんさんは、私に何のようでしょうか…?」
私がずっと気になっていることだ。さっきもなんか色々言っていたが、初めて聞く言葉ばかりでなにがなんだか理解できなかった。
「さっきも言ったプルが、君に世界を救ってほしくてここにきたプルよ」
「え…?わ、私に…?私なんかが世界を救うだなんて、できるわけないじゃないですか…」
「そんなことないプル!!君には他の人にはない、特別な力があるプル。その力を使えば、やみやみダーク軍団にも太刀打ちできるプルよ!」
「力…?やみやみ…?」
「まあすぐ理解するなんて、特に今の君の状態では難しいプルよね。まあまあ、とにかく話を聞きたまえプル!」
そう言うと、彼はドヤ顔で私を指差した。
なんで私の今の状況を知っているんだと疑問に思ったが、そんなのお構いなしに、やつは話を進めた。
なんでも、今私たちが住むこの世界はやみやみダーク軍団という名前の集団に征服されそうになっているらしい。
その証拠として最近犯罪が例年に比べて多いらしく、犯人の共通の特徴として、自分が犯罪を行ったことを全く覚えていないらしい。
「あれはきっと、やみやみダーク軍団に洗脳されているに違いないプルよ…!!」
「それだけで…?ていうか、本当にそれ現実で起きてるの?聞いたことないんだけど…」
「言うと思ったプル!じゃあ、ちょっとリモコン拝借するプルねー」
「あっ!何して…!」
いきなりとるぷんが机の上に置いてある埃被ったリモコンを手に取ると、テレビに向かってボタンを押した。すると、とある番組が映し出された。
『…の大人気フルーツパフェの店の前にやってきました!』
流れたのは、いたって普通のニュース番組のようだった。
「普通のテレビ番組だけど…」
「ちょっと待ってプル!」
「ひっ!は、はい、ごめんなさい…」
静かにとるぷんの言うことを聞いていたら、次のニュースが流れ出した。
『次のニュースです。毒入り饅頭事件の犯人である山中仁さんの取り調べが終わりました。聞き取りの内容によると、全く身に覚えがないと容疑を否定しており、近年起きている事件と何らかの関係があるのではと警察は調査を…』
流れたニュースでは、さっきとるぷんが言っていたことと同じ内容が報道されていた。嘘だと思ったが、実際に事件は何件も起きているらしい。
「嘘じゃ…ないんだ…」
「やっと信じてくれたプルか!さあ、僕と一緒に世界を救わないプルか!?」
本当に事件は起きているが、それがなんちゃら軍団と本当に関係しているとは思わない。
第一、今の私にできるわけがない。もし仮に話が本当だとして、私には無理だ。自分のことで精一杯なやつが、世界のお荷物みたいな私が、世界を救える力なんてあるはずがない。
でも私がここで選ばなかったせいで、世界が滅んだとしたら?全部全部、私のせいだ。それなら、やらなければならない。でもどうすれば…
「今は、もう自分のことで…精一杯で…これ以上無理して悪化しちゃったら、周りにも迷惑かけちゃうから…」
「それで心配してるプルか?それなら大丈夫プル!変身したら、ぷるぷる魔法の力で体も心も全て明るく元気になるプルし、空を飛んだりまほうをかけたり、何でもできるプル!変身し終わったら元の状態に戻っちゃうプルけど疲れるなんてことはないプルよ!」
とるぷんは澄ました顔でそう答えた。
そんな全てうまくいくみたいなものは全て詐欺だから気をつけろとよく母が言っていた。
だけど、これでみんなの役に立てたら、お父さんもお母さんも、少しは安心してくれるのだろうか。生活も、少しは元に戻るのだろうか。
「私なんかに、できるの…?」
「もちろん!だから僕がきたプルよ!」
「そ、それなら…」
やると言いかけた時、耳にキーンと響くような悲鳴が聞こえた。
「キャーーーーーー!!」
突然の非現実的な事態に頭がパニックになる。一体何が起こっているんだ。何も分からない。
「やみやみレーダーが反応してるプル…!麻奈ちゃん!早く変身して助けに行くプルよ!」
「え、ちょっと待って、まだ心の準備が…!」
「早くここのボタンを押してプル!!!」
全てがいきなりすぎて何もかも考えられない。視界がぼやける。私はどうすればいいんだ…、何が正解なんだ…?
「麻奈ちゃん!早く!」
とるぷんが私の手を無理やり引っ張り、ゼリーのような形の謎の紫のボタンを押した。
その瞬間、私の周りがカラフルな光に包まれた。
(ま、ぶしっ…)
しばらくの間目を必死に瞑っていた。ふと、体が軽くなり、頭のモヤモヤが晴れてハッキリとした感覚がした。
ゆっくり目を開けると、そこには笑顔のとるぷんがいた。
「ふふん、やっぱり君には才能があったプルね!僕が目をつけただけあるプル!」
とるぷんが私の枕の上で腕を組んでいる。自分の体を見ると、本当に魔法少女のようなフリフリの服を着ていた。
なにより、今まで私に絡みついてきた体のだるさや頭に残るネガティブな考えがすべてなくなっていた。
「これ、本当に私…?体が…軽い!!今なら、私何でもできそう!」
「その心意気だプル!さあ!助けに行くために、窓から飛び出してみるプルよ!」
「うん!」
私は言われるがままに窓から勢いよく飛び出すと、体がふわっと浮かんだ。
「僕の手を掴んで!案内するプル!」
そうして彼の手を掴み、輝きあふれる世界に飛び出していった。
生き苦しいやつが魔法少女になってどうする? うおき @uoki
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