第2話 2st
不規則に乱れる呼吸
痛みを伴い苦痛の声も混じる
あちこち痛すぎてどこが致命傷か分からん
新宿の寂れた路地裏の一角
俺は無様に横たわっていた
隣には事切れた相手
反社会勢力の抗争の一幕
まあ、位はよく分からんが
相手は大分上の人間のようで
仕事は充分にした
した、けど、、
生憎これからのステップアップはなさそうだ
俺はもう死ぬと思う
相討ちとそう変わらないけど
俺の方が後に死ぬからまあ勝ったって事で良しとしよう
刃物の刺し傷、銃も数発もらった
服はビリビリに破れてなんとも情けない
首から胸にかけて斬られて、腹部に数発銃撃
即死じゃないってすげえな
うずくまって、近くにトドメをさしにきたとこで近くにあった割れたビール瓶を全力投球し、怯んだとこを詰めて首の骨を折った
その力任せで更に出血と痛みが増して
目の前がぼやけて、力が入らず倒れた
まあ、こんなもんでしょ
行き着く先なんて
一般人を巻き込まなくて良かった
俺の唯一のボーダーライン
反社会勢力って時点でアウトだけど
クズだけど一般人を脅かす外道にはなりたくなかった
つーか、そもそも最初に巻き込まれそうになった女の子は無事に逃げれたかな
まあこいつがこと切れてるから無事か
良かった
寒くなってきた
死ぬんだな俺
まあ自分で望んだ道だ仕方ない
「あの」
ぼやける視界でも巻き込まれそうになった子だと分かった
なんで戻ってくる
気にすんなよ、そのまま逃げろよ
あんたは被害者なんだから
って思った瞬間激痛が走った
彼女に抱きしめられた
激痛は一瞬だったが、すぐに温かさが伝わってきた
最後を看取ります
強い意志を感じる声で言った
まあ、このまま朽ち果てるよりは
成り行きとはいえ助けた子?助けたに入るのかな
まあ誰かに看取られるのも悪かないか
「怪我は、大丈夫か」
「はい、助けていただいたお陰で」
何よりだ
悪くない
助からないのは自分で分かるが
ふと思った
看取ります?
普通、救急車とかじゃないのかこういう時って
助からなそうだけど、救急車を呼んでその間に出来る措置をってのが普通とやらじゃないのか
どっちでもいい些末な事なんだが、ふと気になった
「人、、じゃない?」
何を血迷ってるのか、不意に口にした
彼女の手は俺の頬を撫で、優しく背中をトントンと叩いた
子供を寝かしつけるように
何も答えにはなってないけど、なんとなく確信に近いもので思った
俺を迎えに来たなにかのだと
むさ苦しいヤローとか漫画に出てくるような死神じゃなくて良かった
そんな奴に看取られるなら逃げて朽ち果てて死ぬよ
「怖くないから大丈夫。って怖がってないか」
やっぱり
「ほんとにそんなもん居たんだな」
穏やかな優しい笑みで返された
途切れそうな意識も、もうもたない
目の前が暗くなってきた
「上出来だ、ありがとうよ」
頬が濡れた
涙?俺のじゃない
ほんと、上出来だ
人でも人じゃなくても俺なんかの為に涙を流してくれる人が最後を見とってくれるなんて
「あり、、が、とう」
笑えたか分からないが笑いかけたつもりだ
彼女はどんな表情なのだろうか
きっと泣きながら優しい笑みを浮かべてる
そんな気がした
俺は深い闇に落ちた
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