まん丸大団円
何!?何が起きたの!?この人めっちゃかっこいいんですけど!?
「ほわぁ……」
「どうしたの?行こうか」
目からハートが出る勢いで見とれる私を、神さま (イケメン)が不思議そうに見下ろしてきた。背も高い。声もめっちゃいい。神主さんみたいな水色の着物姿もイケてる。私は思わず彼の着物の袖を掴んだ。
「私と結婚してください!!」
「だからそういうのいいよ」
「いいえ!私、あなたの嫁になります!」
「はぁ?」
それから私は目が点になっている彼をグイグイ引っ張って村に戻った。最初は生贄が戻って来たって大騒ぎになったけど、神さまが事情を話してくれて、皆の前で蛇の姿も見せてくれたから一応その場は収まった。私が嫁になってもならなくても、村にとって損がないならいいのだろう。
ケッ、ゲンキンな奴らめ。でもそういうとこ嫌いじゃないよ!湖よりも広い心で受け止めるわ!
お祖父ちゃんはお祖母ちゃんが生きていると知って喜んでいたけど、本当は行かせたくなかったのに、頑なに因習を守った自分が情けないとずっと落ち込んでいた。
でも数年の後、やはり死ぬ前に故郷で過ごしたいと帰って来たお祖母ちゃん。大蛇のご加護か、都会で大成功して会社を幾つも持っているそうだ。ブイブイってそういうこと?
夫婦の間でどんな話し合いがあったのか分からないけど、2人は今、仲良く暮らしている。
そして私は改めて神さまとの結婚を宣言し、「なんでも叶えてくれる」という言質を振りかざして見事プロポーズに成功した。
今日も優しいイケメンの旦那さまと、湖の縁に座ってあの日のような綺麗な満月を眺めている。
そういえば結婚する前に兄が言ってた。
『奈々は誰にも似てないって嘆いていたけど……多分お前はお祖母ちゃんにそっくりだよ』
お兄ちゃんや私が生まれる前にいなくなってたんだから、そんなの知らないもんね。クスクスと笑う私に彼が「どうしたの?」と首を傾げる。そんな仕草もカッコ可愛い。
「ううん。誰にも似てなくて良かったなって」
「そうか」
深くツッコまない大らかなところも素敵!私は彼の肩に頭を預け、夜空に浮かぶ真ん丸な黄色の月と、湖に映る銀色の月を眺めた。
誰にも似てない 鳥尾巻 @toriokan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
あたし免許を鳥に行くの/鳥尾巻
★103 エッセイ・ノンフィクション 完結済 11話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます