人間性

観ること自体に嫌悪感を覚える作品がある。しかしその壁の向こうにその作品への理解と深い感動を感じた。敢えてステレオタイプに物申すが、男性の客が好まない映画の代表に「セックス・アンド・ザ・シティ」という洋画がある。視点を変えずに観れば、女性が男を目の敵にしたり時には蔑んで奔放に喋り倒すだけの映画に感じてしまうことも多いだろう。この映画のミソは、陰に隠れたハイセンスな文化的要素を嘲笑うかの様に下品と趣味の悪さが散りばめられていることにある。日常に絡めてキャラクターの魅力を引き出しつつ女性の普遍的願望及び欲求を等身大に描くという非常に高度な技術でつくられている。その上で前述の要素を殺さずに世俗にマッチしたハプニングを極めてナチュラル且つ感情豊かに織り交ぜてくる。普段、ビッグタイトルに手を出すことは余りして来なかった自分が、これ程までに大ヒットした映画を評価するのには理由がある。固定概念の払拭ほど楽しいことは無い。作品に対して尻込みするときは必ず立ちはだかる壁がある。これを認めてしまうと立つ瀬が無くなる、といった自己のアイデンティティに関わる場合だ。ここに鍵というかヒントが隠されている。主語が大きなお友達は話を真髄から理解しようとせず、枠内から弱者に向けて矢を放つ。自らの立場を平坦にすることで丸に見えていたものが横から見たら円錐状であることに気付くことになる。上から見なければいけない、なんてことはなかったと理解する。人と人は蹴落とし合いでなく、相互理解のもとに関係が成り立つ。よく見聞きすること、物事の本質を理解しようとする姿勢そのものが人間ではないのか。主張ばかりの人間になりたくないとひしと願った。

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