カクコンへ向けての近況と児童小説の難しさ

 カクヨムコン10まで、残り一週間を切りましたね。私自身の準備といえば、残念ながらまったく追いついておりません。当初の予定どおり『ミストリアンクエスト』のみに集中していれば間に合ったのかもしれませんが、色々と手を出しすぎたせいですね。タイミング悪く、現実の様々な問題が重なったという点も大きいです。


 とはいえ、『ミストリアンクエスト』のみに絞れば絞ったで、おそらくは作業は思うようには進まなかったであろうと推察できます。感想企画をやりたい、新作を書きたいという思いを悶々と抱えたままでは、作業に集中できないからですね。ですので、いずれにしても現在の状況は、なるべくしてなったといった感じではあります。



 さて、感想企画はお休みするとお伝えしたので、いったん脇に置くとして。新作の方ですね。そうです。異世界冒険部門に応募する予定の〝児童小説〟です。


 ミストリアンクエストの改稿を進めがてら、どうにか〝これ〟の執筆にも着手でき、現在は第2話までは完成しております。しかし、なんなんでしょうね。児童小説ということで、表現や言葉選びには細心の注意を払ってはいるのですが、いきなりシリアスな内容になってしまったんですよね。これは私の作家性なのでしょうね。


 元々は少年たちが世界を救うべく、愛と夢と希望でいっぱいの旅をはじめる話の予定でした。そういった物語を読むのは好きですし、いつか書いてみたいと思っていましたからね。しかし、いざ書きはじめてみると、どんどんダークな方向へと進んでしまったんですよね。なんと言いますか、〝優しい世界〟を私は信用できなかったのだと思われます。他者が書いた作品であれば、「こういう世界なんだな」と納得はできるのですが、やはり自分が書くとなると「そんなわけがあるか」と感じるのです。


 やはり最も難しいのは、子供だけで旅に出る動機づけ、理由づけなんですよね。海外で「子供だけで旅をするのはけしからん」という声があったのか、ポケモンのどれかの作品においては、大人が同行していたものもあったと記憶していますが、大人が同伴していては、冒険も何もあったものではありません。ちなみにポケモンの世界では、10歳で成人です。ですので厳密には子供ではありません。車にも乗れるし結婚もできると、最初の段階からしっかりと明言されているんですよね。



 せいぜい、途中で大人が仲間になるくらいの塩梅ならばいいのですけどね。最初から同行していては、ただの安全な旅行です。ネックとなるのは大人の排除方法、子供だけを分断する手段なんですよね。ここに無理が生じると、親世代からのブーイングを受けてしまいます。「子供を危険に晒すなんてけしからん」と。


 簡単に思いつくものといえば、子供だけが異世界などへ吸い込まれるといったものでしょうか。しかし、これには問題がありまして、こうした物語の最終目標は「元の世界に帰ること」で固定化されてしまうんですよね。これが私にとっては「非常にツマラン」と考えております。そもそも私は、本気で異世界転生したいと思っているような人間ですからね。元の世界に帰るという目標を、本気で描く気になれません。


 いっそ、異世界に親を呼んでしまいたくもあるのですが、そうしたらそうしたで「親の仕事は。会社にも迷惑が」「元の世界では一家失踪事件になってる」「元の世界の友達とも会えなくなる」といった批判の方が多くなるのは明らかですからね。



 そうなると、もう親には、早々にいなくなってしまう他ありません。いないものは仕方がないですからね。異世界転移よりも異世界転生の方が人気があるのは「元の世界では死んでいるんだから、戻るという選択肢が消える」という部分であると考えております。さすがに「生き返る」というのはナンセンスですからね。トラックにひかれてグチャグチャな肉体や、司法解剖で切り開かれた体に戻るのは嫌でしょう。


 私がカクヨムで拝読した児童向け作品においても主人公は親を失っておりますし、親が亡くなったからといって悲しい物語にする必要はありません。行方不明になった親を探す物語でも良いのですが、それはそれで「子供の自立」には繋がらないんですよね。親を見つけたあとは当然ながら、家に戻って日常に戻ることを求められるのですから。私が描きたいのは、非日常の冒険です。



 では、〝親には死んでもらう〟ことが決定事項として、次に問題になるのは時期ですね。物語開始時点で亡くなっていては、別の問題が浮上します。親がいなければ当然ながら、孤児院なりの施設にて保護されることになるわけです。親の呪縛から逃れたとしても、結局は別の大人からの束縛を受けてしまうわけですね。

 

 もちろん、引き取った家なり施設なりの扱いが酷く、脱出しようと試みるのもアリだとは思います。ハリー・ポッターなどもそうですからね。――あれは異世界の方から招待してきたので、少し毛色が違いますか。ともかく、親元から離れて「二度と戻りたくない」と思わせるということに関しては成功していると言えるでしょう。また、あの作品は少々特殊ですからね。あくまでも目的は両親の死の真相を追うことであり、現実の家云々はあまり関係してきません。


 しかしながら、自ら脱出したという展開になってしまうと、今度は〝主人公の目的〟が漠然としたものになってしまうんですよね。脱出した時点で最初の目標は達成されておりますので、そこで新たな目標を示さなければなりません。ここが作品それぞれの個性を出す部分であり、難しいところなのではないでしょうか。


 やはり子供が主役である以上、子供らしい理由でなければなりません。間違っても「ハーレムを作る」なんてありえませんし、「スローライフを送る」というのも――私自身は好きなのですが――、おそらく多くの読者からは受け入れられないでしょう。子供なんて、人生で一番活発な時期ですからね。「大人の作者が書いている」ということが透けて見えるようでは、物語への没入はできません。それでいて、現実の親世代からの目も気にし続けなければなりませんからね。作中での〝親〟は回避できたとしても、現実世界の〝親〟たちの監視には晒され続けることになるのです。


 そうなると「子供だけの世界でハッピーに」というのは、かなり難しくもなるのです。どこかで親の気配や親の影、親という存在に関連するものを描いておく必要があります。児童小説は親も読みますからね。親から子供に与えるものですので「親なんてクソくらえだ」と言っているものは、親の検閲によって弾かれてしまうでしょう。


 たとえ親への反発があったとしても、物語を通して親のありがたみや感謝の気持ち、または親への郷愁めいた感情を想起させる必要がありますね。まさしく親自身も「童心に返って読める」作品に仕上げる必要があるわけです。


 と、ここまでのほぼほぼすべてが〝いかにして子供たちが旅立つか〟といった悩みに集約されております。ここが児童小説の難しいところですね。たとえば『大長編ドラえもん』のように、「子供たちが夢のような大冒険の末に日常に戻ってくる話」ならば選択の幅は広がるのですが、あくまでも「夢のような」どまりなんですよね。


 あの作品でも、時おり別のエピソードの内容が登場したりもいたしますが、基本的には物語が終わった時点でリセットが入ります。主要人物らの関係性にも変化はありません。あの二人は嫌な奴のままですし、主役の小学生は弱いままです。心身共に成長をしたわけではなく、ただただ「戻ってきた」だけです。それが嫌なんですよね。



 やはり私が物語を描く以上は「成長」と「変化」が欲しいです。加えて何か重要な「宝物」を手に入れたりもしたいですね。魔法の杖でも不思議な宝石でも何でもいいですが、「冒険に行ってきたんだな」と感じとれるようなアイテムが欲しいです。いつもの日常に戻って、いつもどおり学校へ行くなんてエンディングは、私にとってはバッドエンドでしかないですからね。次の非日常へ出発する終わり方がいいですね。


 そのように考え続けた結果、どうにか物語の案も固まり、先に述べた物語を書きはじめるに至りました。とはいえ、まだタイトルも決まっていない状態なんですよね。毎回そうなのですが、タイトル決めが最も難しいです。



 私は特に気にしないのですが、「タイトル回収」を気にする読み手もいるでしょう。いつ頃から言われはじめたんでしょうね、これ。気づけばカクヨム内外の評論においても「タイトル回収」に言及されるようになりました。それほど重要だとは思わないんですけどね。特に長文タイトルなどは、最初の第1話にしか関係しないタイトルが付けられていることも多いですし。そうした部分から発生したのでしょうか。


 とはいえ、私も書き手の際には「タイトル回収」を気にしてはおります。たとえば『ミストリアンクエスト』の場合、よく〝霧〟が出てくるタイミングにて「タイトル回収ですね」とコメントされることが多いですが、正確には違います。第1章の第1話の段階にて、すでにタイトルは回収されております。もしかすると『ミストリアンエイジ』から先にお読みになられた方ならば、お気づきになるかもしれませんね。もしくは第3章のある部分にて、あからさまな表現が出てきます。以前から匂わせてはいたのですが、先日の改稿の際に、さらに明確にいたしました。



 はい、話題が〝児童小説〟から逸れてきておりますので、そろそろ締めとまいりましょう。ミストリアンクエストは私が中学の頃に読んでいたノベルスのような作品をイメージしながら書いておりますので、近いものではあるんですけどね。やや硬い表現もありますが、それにも理由があったりいたします。タイトル回収ですね。


 それでは今回は長くなりましたが、お読みいただきありがとうございました。

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