因縁の対決

マリンとボルドーの試合を『見ていた』者が呟いた。


「ふむ、中間実技トーナメントの前には黒の宝珠を口にすると思っていたが、存外意思が固かったな。しかし、勝負に負けそうになって意思が揺らいだか」


クククッと嗤う黒いローブの人物は、試合が映された水晶玉を見てこれからの事を考えた。


「黒の宝珠が身体に馴染むには通常なら丸1日掛かるが………」


取り込んだばかりの黒の宝珠がどんな効果をもたらすのか楽しみだ。


黒いローブの人物は早くシオンとボルドーの試合が始まらないかと水晶玉を覗くのだった。




そして遂にシオンとボルドーの決勝が始まろうとしていた。


「ボルドー、お前何に手を出した?不器用なヤツだが不正をするヤツじゃないと思っていたんだがな?」


いつもなら怒鳴り返す筈だが、ボルドーは心ここにあらずといった感じで無言だった。

しかし異様な雰囲気を放っていた。


『本当になんだ?この異様なオーラは?本当に人間の放つ気か?これではまるで───』


シオンの思案は試合開始の合図と共に中断された。


シオンの立っていた場所に大剣の刃が通過したからだ。シオンは素早くバックステップを踏んで距離を取るが、ボルドーが一瞬で距離を詰めてシオンに斬り掛かった!


いつもボルドーとは違い、無言で大剣をいつも以上のスピードで振り回す剣技にシオンは腕に魔力で作った丸い盾を前に出していなした。


『これは!?』


想像以上の鋭い剣の斬撃に、シオンは魔弾を作成する事が出来なかった。


大剣を避けながらスキを伺うシオンに、ボルドーは息も乱さず永遠と剣を振り回してきた。


『これは明らかに異常だぞ』


身体強化をしているとはいえ、自分の身長以上もある大剣を全力で振り回していて、息も乱さず永遠と振り回すことなどできないのだ。


最小限で避けているシオンの方が疲弊してきている為に、一瞬のスキをついてボルドーを蹴り飛ばした。


「今だ!」


距離ができたのを見て魔弾を作成した。



【赤の魔弾を作成】


【魔弾装填】


【トリガーセット】



「赤の魔弾、フレイム・バレット!」


シオンは初日の時とは違い、それなりの力でボルドーに魔弾を放った。

ボルドーは大剣を盾に防いだが爆発の威力に壁に吹き飛んだ!


ドーーーーン!!!!


壁に大きなヒビが入るほどにぶつかったボルドーだったが、痛みを感じていないのか、ムクリッと立ち上がった。


「おいおいマジかよ。全力でないにしても、かなりの力を込めた魔弾だぞ?」


ここにきて初めてボルドーに意思のようなものが目覚めた。


「……………これだ。この痛みだ……許さん、許さんぞーーーーーーーーー!!!!!!」


突如として叫んだボルドーは、先のマリン戦と同じく異様な魔力を空高くまで発生させた。


「あれは!?」


吹き出した魔力がボルドーの身体に纏わりつくと、黒い鎧へと変化していった。


「クククッ、アッーーーハハハハッ!!!!これだ!この力だ!!!オレはシオンを超える!」


先程の無言が嘘のようにしゃべりだすボルドーにシオンは警戒を最大限に上げるのだった。






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