第21話 初めての研修の終わり
そして、冥界にたどり着くと、最後にゆりかごをメディウムに託せば無事完了だ。
「ありがとうございました。これで私は未練はありません。娘とも会えましたし、あの子に伝えたいことは無事に言えました」
春樹敏夫の魂は、ファリテ達に礼を言った。これで未練はないと。
「これで、あなたは次の人生に行けます。私達が無事に送り届けます」
ゆりかごを抱き、メディウムは優しく告げた。
「あなた方はまさに天使のような存在だ。本当にありがとうございました」
ファリテ達はとうとう春樹敏夫自身には「死神」という言葉は使わなかった。
彼女達を「天使」と認識していたままの方が、安らかに眠れるのかもしれない。
「では、春樹敏夫さんのゆりかごを転生の間に送ります」
転生の間、それは名前からして恐らく死んだ者の魂を次の世へと送り出す場所なのだろう。まさに生まれ変わるということで再び世に出る。
メディウムは空中に画面を出現させて、ゆりかごを転生の間に送り届ける手続きをして、そこへゆりかごを瞬間移動させた。
「ファリテ、今回もお疲れ様でした」
これで任務完了だ。今回の仕事は終わった。
「水奈、研修としてどうでしたか? これが私達の仕事というのは学習できました?」
メディウムの言葉に、水奈は一瞬考えた。
「なんだか、やっぱり責任が重いようで、ちょっと私にできるかは不安です。死んだ人の魂を回収するのも、私達がやっていいのかなって感じだし、犯人に手を下すのも、それに、死んだ人の家族に対面させるのだってちょっと怖い。私達にできることは、やっぱり死神でもあるし」
「今後はあなたがこの役目をやっていくのですよ」
メディウムのその言葉に、果たしてこんな仕事が今後自分にできるだろうか、と水奈は思った。
「今回もあなた方のおかげで、死者の魂は救われ、裁き、遺族のアフターケアもできたのです」
これがこのクレイドルデスゴッドとしての仕事の概要だったのだろう。
「ゆりかごに乗せた魂は、次の人生では幸福に生まれわかると約束されているのです。理不尽な突然死をしたものを、こうして私達が迎えにいくことで、ゆりかごに乗せるように安らかに眠れるという意味もあるのです」
メディウムはこの仕事がなんの為にあるのかを説明した。
「だから、私達がこの仕事をすることで、救われる人がいるの。それが私達クレイドルデスゴット ゆりかごの死神よ」
死神は魂を回収する。その魂を預かっているからこそ、遺族へと繋げられる。
そして、ゆりかごに乗せた魂はあそこへ運ばれて、次の人生へとゆりかごに乗せて運んでいく。
逆に、人の命を奪った者へは死神としての役目をする。これが一連の仕事だ。
「さあ、二人とも、ゆっくりおやすみなさい。また次の任務までに、しっかりと休息をとっておくのですよ」
水奈とファリテは互いの自室に向かう為に、通路で歩く。
「水奈、お疲れ様。初めてで色々大変だったでしょう」
初めての研修を終え、水奈はこう言った。
「ファリテはこの仕事嫌じゃないの? 人の魂を扱うんだよ?」
水奈は始終は経験しても、やはり重い役目だと思った。
「神々しい仕事よ。私達は死神だけど、死んだ人にとっては優しい死神でもあるもの。本当に赤ちゃんを乗せるゆりかごみたいに。私はこの仕事に誇りを持ってるわ」
水奈はその言葉にいまいち共感は持てなかった。
「じゃあ水奈。次の任務までよく身体をやすめてね」
こうして、水奈の最初の研修は終わった。
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