2人目のヒロイン、現る
「私の住まいはこちらです。送ってくださり、本当にありがとうございます!」
「いえ、こちらこそ楽しかったです」
なんだかよく分からない返事をしてしまった。「こちらこそ楽しかった」って、いったい俺は何を言っているんだ。可愛い女の子と話すとやっぱり緊張する。それはどこの世界でも変わらないみたいだ。
「助けてー! 助けてください!」
今きた道のずっと向こう、広場の辺りから、助けを呼ぶ声が聞こえる。ちょっと行ってみよう。
「誰かが助けを呼んでるみたいなので、ここで失礼します」
軽く会釈をして立ち去ろうとすると、少女はまたしても俺を呼び止めた。
「あ、あのぅ!」
「? いかがなさいましたか」
「素敵です」
「え?」
「困っている人がいたら放って置けないなんて、素敵です」
「え、ん、いや、まあ」
俺は逃げるように広場に向かって走り出した。しかもニヤニヤしながら。
広場では、オークが市場を襲い、食料品を食い散らかしていた。
「だ、誰か! こいつを止めてくれ!」
市場の主人が叫ぶ。待っていてください、おやっさん。
「おい、待て! オーク! まずは話を聞け!」
俺はオークにギリギリまで近づいた。
「おい、やめとけ! 食われちまうぞ!」
「あいつ何考えてんだ、逃げろ!」
人々の声を無視して俺はさらにオークに近づく。すると、オークは動きを止めてぎろりとこちらを睨んだ。やばい、通じていない…? そう思ったのだが、オークは俺の言葉に反応してくれた。よかった。
「なんだ、てめえ。喋れんのかよ」
「喋れる! じゃあもし仮に俺が喋れないとして、今の現状はどう説明するのだ!」
「それもそうだな」
オークはニヤリと笑った。よしよし。話のわかる豚で結構。
「おいオーク! お前は人間の食料を奪うのはやめろ!」
「どうしてだい?」
「えっ」
「人間は俺らの肉を食うだろ? じゃあ、お互い様じゃねえかい」
べらんめえ口調でもっともらしいことを言うオーク。オークって、ディベート強かったのか。だが、負けないぞ。
「それはな。食物連鎖のピラミッドの下位だからだ。それは仕方ないヒエラルキーなんだよ。俺達もさ、オークを食べる時はちゃんとすべてのオークに感謝して食べるから。な?」
ちょっと強引すぎたか。しかし、オークは少し考えたような素振りを見せると、ようやく俺の主張を受け入れた。
「分かったよ…」
オークは寂しそうに、辺りにいた人間に謝りながらすごすごと帰っていた。もっとも辺りの人間は意思疎通できないので、恐怖に慄いていたが。
俺はなんだか、複雑な気分だった。
「どこをほっつき歩いていたの!」
「あ! いてて!」
俺はさっきの娘とはまた別の、これまた美少女にいきなり耳を引っ張られた。
「ほら! 帰るよ!」
「わかりましたから! ちょっと一回だけ話して!」
結局、俺はこの娘に、目的地に着くまで耳を引っ張られ続けた。きついったらありゃあしない。さっき助けた娘の方がいい子だった、というかこいつ誰だよ。なんで俺はこいつに耳を引っ張られ続けなきゃならないんだよ。ふざけるな!
「ほら! 着いたよ!」
「ここ、どこぉ〜!」
「バカ! 自分の家でしょう!」
俺の家は、見上げるほど巨大な屋敷だった。
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