第6話 社の秘密



俺達は社に向かって順調に歩いている、ゴンが言うには、ゆっくり歩いて行くには、半日近くはかかるとのことで、ゴンの足で走っていけば、三時間ということらしい。


まぁ、特に急ぐことでもないので、ゆっくり四人で歩きで向かっている。さすがに四人でいるからか、周りに獣の気配はほとんどない。

時々気配を感じても、直ぐにどっかにいってしまう。

順調、順調。


よほど楽しいのかウキウキのノン、先頭を歩く生真面目なゴンは、周辺の警戒を怠らない。性格が出てますね。

そして、マイペースのエル、何を考えているのかよく分からないが、なんだか嬉しそうではある。


獣型のノンが甘えてきた、俺の右腕に絡んでくる。

よしよしと、頭を撫でてやる、すると負けじと左腕にからんでくる獣型のエル、こちらもよしよしと鬣を撫でてやる。

先頭を歩いていたゴンが突然立ち止まり、振り返ってノンとエルを睨みつける。


一向に気にしない二人。

ゴンは何か言いたそうだが、歩き出す。

何歩か歩くと、またゴンが立ち止まり二人を睨む。

これを何度か繰り返す。


「ゴン、後でお前も撫でてやるからな」

というと、さっと前を向いてゴンが歩きだした。

ゴンは照れているのだろう、九本の尻尾がすごい勢いで左右に振られている。


目的地に到着した。


この社は前にも見たが、まったくもって日本の神社にそっくりだ。

これは日本人が建てたんじゃないか?と思えてしまう。

社の真ん中に扉があり、その扉は両開きに出来ている。

恐らくここから入るのだろう。


「主、この扉です。結界が張られています、見てください」

そう言うと、ゴンは扉に触れた。

すると、透明な壁が薄っすら見えた。


「なるほど、そういうことね」

俺は手で触れてみた。抵抗を感じる。


俺は両手を結界に触れて、結界の存在を強く感じてみる。

目を閉じて意識を集中する。

社の外郭に沿って、結界が張られているのを感じる。


これが中級神が張った結界か・・・


神様が張った結界ということは、神気を流せばいけるか?

神気を結界に流し込んでみた。


「よし!」

パリンと音がなったような気がした。

結界が崩れていた。


まぁ、そりゃあそうだよな。

簡単なことだ、神様が張った結界なら、神様以外が入れないようにするための物だ。

ならば、神気を流せば解除ができて当然ということ。


俺は観音開きの扉を開けた。

木造で造られた床、その先に、簡単な祭壇のような物があった。

その祭壇の上に、祭る為の箱のような物があり、その上に楕円形の何かが置いてある。


俺はその何かに近づいた。後ろから三人が続く。

手の届く距離で立ち止まり、観察してみる。

光の加減なのか、すごく硬い物のような気がする。

すると、見間違いなのか、少し動いたような気がした。


「今動いた?」


「すいません、わかりませんでした」

ゴンが答える。


もう一度見てみる、何か意思を感じるが、よく分からない。

触れてみたほうがいいような気がする。所謂、俺の直感。

俺は両手で触れてみた。


すると少し動いた。

今度は気のせいでは無い、振動を両手に感じた。

神気を流し込んでみた。


揺れる、更に強く流し込む、更に揺れる、神気を一気に流し込んだ。

ピキッ、割れる音がした。


ピキッピキ!


割れた!


「ピィー!」


そこには見たことのない獣の子供?のような生き物が、俺を真っすぐに見ていた。

何だかわからないが、とても可愛く思えた、俺は思わずその子の頭を撫でていた。


「ピィー!、ピピピィー!」

なんだか嬉しそうだ。


両脇の下に手を入れて、手前に引き込んで抱っこした。

ゴンが俺の右側に並んで覗き込んだ。


「ド、ドラゴン?!」

えっ!そうなの?


抱っこしているのを、前に持ってきて改めて見てみる。

言われてみればそうなのか?


俺はドラゴンを見たことはないしな、でもこの子無茶苦茶可愛いぞ、ずっとピィーピィー泣いてるけど。何だ?エサか?

取り合えず頭に手を置き、神気を流してみた。


「ピィー!」

更に嬉しそうにしている。


「主、これ、ドラゴンの赤ちゃんですよ!」

ゴンが興奮意味に話している。


「へぇー、そうなんだ、なんか可愛いな」


「うん、可愛い、可愛い!」

ノンも興奮気味な感じで言う。

エルも頷いている。

あっ!そうだ。


『鑑定』


名前:

種族:ベビードラゴンLv1

職業:島野 守の子供

神力:30

体力:230

魔力:442

能力:人語理解Lv1


マジか・・・島野守の子供って。


これって、あれか?生まれて初めて見た物を親だと思うってやつか?

俺まだ、結婚もしてないのに、ましてや、人間の子供すら育てたことないのにな・・・

親になってしまった・・・それもドラゴンの・・・しょうがないか・・・異世界なんでもありだな・・・


俺は皆に宣言した。

「え~君たち、弟ができました!おめでとう!」


「「「えー!」」」

一斉に驚きの声が上がった。




ひとまず家に帰ってきた。とりあえず食事にしたい。

さてと、どうするか?


「ベビードラゴンって何食うんだ?赤ちゃんだからミルクか?」

牛乳が無難なところかな?たぶん・・・


「ドラゴンは結構雑食だって聞いたことがありますが・・・赤ちゃんですからね・・・」

ゴンはまじまじとベビードラゴンを見ている。


「とりあえず、ミルクを出してやろう」

器にミルクを出してやった。

するとベビードラゴンが、ミルクを飲みだした。


よしよし、飲んでる、飲んでる。

俺達も晩飯の準備だ。


「簡単なものでいいか?」

皆に問いかけた。


「いいよー」

ノンが答えた。ベビードラゴンにちょっかいを出している。

ノンはベビードラゴンが可愛くて仕方がない様子だ。


収納から、ワカメサラダとご飯、味噌汁を取り出して。テーブルに置いた。


「先食ってていいからな」

俺は三人に声をかけた。


ジャイアントピッグの肉を取り出して、カットしていく、生姜と醤油、玉ねぎを用意し、薄く刻んでいく。

フライパンを温め、ゴマ油を引く、程よい温度になったところに、まずは肉を焼く、両面しっかり焼けたところで、薄切りした玉ねぎを投入、生姜を入れ、フライパンを返して混ぜていく。最後に醤油を垂らし、再度混ぜ合わせたところで完成。


ジャイアントピッグの生姜焼き。

お皿に取り分けてから、改めて食事開始。

先に、食べ始めている三人が軽く会釈をして皿を受け取る。

足元にいるベビードラゴンに目をやると、皿が空になっていた。


「お代わりいるか?」

というと、俺の足元によって来て。上に上がろうとして来たので、抱き上げてやった。

すると手を伸ばして、皿に触れようとしていた。


「ん?食べるのか?」


「ピィー!」

そうだと言わんばかりにドラゴンが泣く。


「そうか、待ってろよ」

ジャイアントピッグの生姜焼きを、小皿に取り分けて、小さく割いて足元に置いてやった。

ベビードラゴンを降ろす。

すると、ベビードラゴンが、ジャイアントピッグの生姜焼きを食べ始めた。


「本当に雑食なんだな」

上手そうに食べている。何だかその姿が可愛らしい。


「そのようですね」


「そういえば、主、弟ができたって言ってましたけど」

改まった様子でゴンがこちらを見ている。


「ドラゴンは私たち聖獣と違って、神獣です。さらに主の子供となると、弟扱いというわけには・・・」

ゴンの話を俺は遮った。


「何言っているんだゴン、お前達も俺の子供みたいなもんだろ?違うのか?」

ゴンとエルが驚いた表情をして、後ろに仰け反っている。


「主・・・」


「それにノンに至っては、既に弟扱いする気満々だぞ」

ノンは我関せずに、ベビードラゴンにちょっかいを掛けている。

ノン君、気持ちは分かるが、食事中は止めなさい。


「俺はお前達にとってどんな存在なんだ?俺はお前達を家族と思っているが、違うのか?お前達は俺に魂を預けているんだろ?そんな関係で主従関係なんて俺は嫌だな。いわば一心同体だろ、それは家族以外何だってんだ?」

そう言うと、ゴンとエルが涙ぐんでいた。


「いいですの?」


「そんな・・・」


俺は構わずに言った。

「ノンもゴンもエルも、新しくできた弟を大事にするんだぞ」


「「「はい!」」」

三人揃って答えていた。


また新たな家族ができた。

さて、これはお代わりがいる流れだろうな、作りましょうかね。

まあ生姜焼きは簡単なんで、全然いいんですけど。


新しい家族の名前?


「ギル」君です。

よろしくね。




庭先で考え事をしていると、アグネスがやってきた。

視線を向けると、アグネスが固まっていた。

何度も目を擦っている。

その視線の先にはギルと戯れるノンとエルがいた。微笑ましい光景だ。


我に返ったアグネスが言った。

「ドラゴンよね?」


「ん?ああ、そうだな」

適当に答えた。正直うっとおしい。


「ちょっと、守!聞いてるの?ちょっと!」


「ああ、悪いちょっと考え事をしてた、で何?」


「で何って、ドラゴンがいるんですけど」

まだ驚いた表情のアグネス。


「知っているよ、だって俺の息子だからな」


「はぁ?・・・」

言葉を失っている様子。


「で、今日もアグネス便か?」

面倒なことになりそうだから、やり過ごしたいな。

そうはいかないんだろうけど。


「ええ、ってちょっとどういうこと?説明しなさいよ!」


「やだよ、めんどくさい」

アグネスが睨みつけてくる。

はぁ~、本当にめんどくさい。


「ノン!エル!ギル!おいで!」

駆けよってくる三人、俺はギルを抱き上げた。


「はい、ベビードラゴンのギル君です。よろしくね!」

アグネスに向かってギルを見せた。


「ア、ア、アグネスです、よろしくお願いします」

アグネスがギルにへこへこしている。


俺はギルを降ろし、

「はい、遊びに行っていいよー、遠くへは行くなよー」


「「はーい」」

とノンとエルが返事をした。


三人はまた仲良く遊びだした。

なんとも微笑ましい。


「お前何でギルにへこへこするんだよ」

アグネスが俺を睨んでいる。


「だって、神獣様よ、あんた分かっているの?獣とは言っても神様なのよ」


「へぇー、そうなんだ、神の使いとしては頭が下がるってことなのか?」

神獣ってそんなに偉いのか?へえー。


「当たり前じゃない、ほんと、あんた、どんだけ獣たらしなのよ、もういい、説明なんていらない、どうせ聞いても、はぐらかすんでしょ・・・はぁー、もうお手上げよ」

そう言うと、野菜を集めにゴンの所にアグネスは飛んでいった。




さて、今考えているのは、島の北側について。

ゴンの話としては、そもそもこの島には、百年前までは人が暮らしていたらしい。

そのほとんどは、島の北側に居を構えていたとのことだった。


しかし、その暮らしは百年前に一変した。

急にすべての人々が、この島から離れていったらしい。

それも中級神様と共に。


百年経っているので、当時のままとまではいかないが、現在でもその当時の暮らしを伺えるものが、残っているらしい。

それを聞いた俺は、島の北側に行くべきかどうかを考えている。


ゴンは百年前に、何があったのかは、よく分からないらしく、人々がなぜこの島を離れたのかは分からないらしい。

気になるところではあるが、もしそれが、その集落内の何かが原因であったとするならば、そして、それがまだ残っているとするのならば、俺達にとって危険である可能性がある。

何せ、島民が島を離れるほどの原因なのだから。


行くべきか、行かざるべきか。

ただ、何かしら危険なものがこの島にあるのというのなら、俺としては見過ごすことは出来ない。


行くしかないか・・・


まだこの島について知らないことが多すぎる。

みんなで行くには危険があるかもしれないと思い、全員参加は控えておいた。


百年前を知るゴンには来て貰おうかとも思ったが、最小人数の方が良いと考え、俺とエルの二人だけで北の街に行くことにした。

俺にはこの島の歴史を知る必要がある。そして、もし危険の可能性があるならば、早急に確認し対処する必要がある。




エルの背中に乗って、いざ北の街に出発だ。


エルには高度を上げて、島全体を見えるように飛んでもらうように頼んだ。

島全体を見るのは始めてだ。

こうやって見てみると、俺の想像よりも遥かに大きい島であることがよく分かった。

また、地形などもよく見えて、島の形状が随分把握できた。

全体を見渡すということの、重要性を俺に理解した。


島の中心にある山は、中腹から上は植物等はまばらで、頂上に向かうにつれて、岩山になっている。

いわゆる禿山といった様相だった。

頂上には、特にこれといったものは見当たらなかった。


約一時間の空の飛行を楽しんで、現地に到着した。

周りを見渡してみる、やはり建物のほとんどは予想通り半壊していた。

ただ、ここからでも当時の暮らしは充分に想像できる。


まず、建物のほとんどが、石と木材を使用した建造物だった。

文化レベルとしては、現在の日本と比べるとかなり低い。

産業革命前のヨーロッパといったところだろうか。


いや、断言するのはまだ早い。

上空から見た感じ、建物は恐らく三百棟はあったかと思われる。

一家族三人ぐらいと考えると、千人近くの人口であったと思われる。


いろいろ周りを見回しながら、俺達は歩を進める。

すると、ひと際目を引く建物があった。第一印象としては、教会だ。


よく観察すると、ガラス細工のような意匠も見られた。

教会らしき建物の中で気配を感じたが、おそらく獣だろう。


先ほどジャイアントラットが走っているのを見かけた。

巣でもあるのだろう。そっとしておこう。

教会の中には、石像のような物もあったが、ほとんど原型を留めてはいなかった。


この世界には教会があるということは確認できた。

この世界には宗教があるのだろうか?

神様が顕現している世界のようだから考えづらいが・・・


石像のような物は原型を持ち合わせていなかった為、何の神様を祭っているのかは分からなかった。


一通り街を見周ってみた。

どうやら危険視するようなものは、無いようだ。

考えすぎだったか・・・


北の海岸に出た。


石を積み上げた防波堤のようなものがあるが、おそらく船の発着場だと思われる。

なるほど、南の海岸に比べて、こちらの海岸の方が、浅瀬が少ない。

船を付けるには、こちらからの方が安全なんだろう。


至る所に井戸を見つけた、水は井戸によって賄っていたようだ。

水道のようなインフラは見受けられない。

家の中も覗いてみた。

トイレらしき物があったが、ぼっとん式の物であった。どうやって汲み取っていたのだろうか?もしかして汲み取りすらして無かったかもしれない。不衛生だな。


その他に気になる所は無かった。

文化的な暮らしはあまり感じられなかった。

百年前の暮らし様は理解することができた。


「よし、エル!帰ろうか」


「はい、ご主人様」

エルに跨って、帰宅の途に就いた。




帰宅した


「主、どうでしたか?」

ゴンが声をかけてきた。


「うん、いろいろと参考になったよ」


「そうですか・・・」

ゴンが神妙な顔をしている。

とりあえず本人から何か言ってくるまで待とう。


「みんな!晩御飯にするぞ!」

ノンがギルと楽しそうに遊んでいた。




僕はノン、フェンリルだよ。


僕に弟ができたんだよ、とっても可愛いの。

主が弟を大事にしろと言って、初めてギルを抱っこさせて貰った時は、感動して泣いてしまった。


僕は思った。

頼れる兄ちゃんになる。

これまでの甘えん坊のノンは卒業するんだ。


ゴンは、ドラゴンは神獣で、僕たち聖獣の兄弟なんて、恐れ多いなんて言ってたけど、僕はそんなことは気にしない。


僕は強くなる。

ギルを、そして主を守れるようになる。


主が声を掛けてくれた。

「ノン成長したな」

嬉しかった、でも今は泣かない。

だってもっと強く逞しいお兄ちゃんになるんだもん。


でも、こっそり主には甘えちゃうかもしれないけど・・・


あっそういえば、主には黙ってるんだけど。

僕にはちゃんと犬だった、あっちの世界での記憶があるんだ。

内緒だよ。へへへ・・・


ギル可愛いな・・・


ギルはサウナ入るかな?

一緒に入りたいな。


ギルはね、日に日に大きくなっているみたい。

どれだけ大きくなるんだろうね、楽しみだね。


大きくなったら、ギルの背中に乗って空を飛んでみたいな。

風をいっぱいに受けて空を飛ぶんだ、気持ちいいんだろうな。


そうだ、ギルには狩りを教えてあげないといけないね。

あと犬飯も食べさせてあげないといけないね。

あとは何を教えてあげようかな?


そうだな、主の好きな所をたくさん話そうかな。

でもこっそりとだよ。


へへへ。


僕は立派なお兄ちゃんになるよ!




北の集落の視察からだいたい十日後、いつも通りの充実した毎日を暮らしている。

畑当番はゴンが行っているが、アグネス便などもあり畑を拡張した為、今は手の空いた者は畑の作業を手伝うようにしている。


ノンは狩りが中心だが、今は三日に一度ぐらいに制限している。


また、ギルが家族になってからというもの、森の獣を近くで見ることが、少なくなったような気がする。

畑が荒らされることは、おそらくまず無いだろう。


エルは上空からの警備を行ってもらっているが、午前中のみとしている。

ここ数ヶ月の間に何も無かったことから、エル事件のようなことはまず無いとの判断をしている。


ギルはというと、俺は基本的に好きにさせている。

ただ、まだよちよち感がある為、俺の傍にいることが多い。

ギル自身もそうしたいようだ。


そして、ギルの成長は早い。


現在のステータスはこんな感じです。


『鑑定』


名前:ギル

種族:ベビードラゴンLv2

職業:島野 守の子供

神力:60

体力:456

魔力:582

能力:人語理解Lv3 浮遊魔法Lv1 火魔法Lv1 風魔法Lv1 


ギルを取り巻く環境だが、しょっちゅうかまってくれるのがノン兄ちゃん。

それをサポートして一緒になって、遊んでくれるのがエル姉ちゃん。

悪さをした時に叱られるが、頼りになるのがゴン姉ちゃんといった感じで、毎日を謳歌しているようで俺も嬉しい限りだ。


ただ、まだ子供のギル。

やはり一番に甘えたいのは俺のようで、ことあるごとに俺について周っている。


寝る時は決まって、俺の寝室に潜り込んでくる。

何故だか、俺の腹の上で寝るのがお気に入りらしく。

朝、目覚めると、決まって俺の腹の上で寝ている。


さすがに倍ぐらいの大きさになった今では、正直俺の方がしんどい。

そろそろ俺の腹の上で寝てはいけないと告げた日には、ギルは一日中寂しそうにしていた。

俺が思う以上に、俺の腹の上はお気に入りの場所だったようだ。


その日以降はちゃんと隣で寝るようになったが、今の成長速度からしたら、一ヶ月後には隣では、寝れ無くなりそうだ。

ギルの食事の量は結構なもので、今では一番大食いのノンよりも食べている。


競うように量を食べようとするノンはどうなんだろう・・・

たくさん食べればいいというものでもないのだが・・・

ノンもまだ子供だなと感じる。

幸せな瞬間とはこういったことなのかもしれないと、俺はしみじみと想った。




今考えているのは、新しく建設予定の家の間取り。

ギルも加わって、今のログハウスでは少々手狭になってきているのだ。

ギルがどれだけ成長するか分からない為、改築か、新設かを悩んでいたところ、人化が最も得意なエルが、人化のレッスンをギルにしているのを見かけた。


ならば気分新たにと、新築にすることにした。

人化ができるようになれば、人並みの大きさになるので、デカすぎる家はいらないだろうとの考えだ。


今のログハウスから東の位置に、更地を作成すると共に、木材を確保した。

その後、自然操作の土で地面を頑丈に固める。

木材と糸を使って、丁張を作成する。


向きや長さが有っているのか、エルに頼んで上空からチェックしてもらう。

高さは水平器で何度もチェックした。

ちなみに水平器は、石の器に水を張った簡易的なものを作成した。


木材を切り出し、コンクリートの型枠を作成する。

ちなみに、一階に今回は半水栓トイレを造る為、配管部分にも木枠が作られている。


型枠完了後、万能鉱石にてコンクリートを確保。

水にコンクリートを混ぜ合わせて、型枠の高さ半分ぐらいまで入れていく。

コンクリートが乾いたのを確認後、今度は、万能鉱石で鉄を確保。

『加工』にて、格子状に鉄を加工し、コンクリートの上に敷いていく。

更にコンクリートを加えて、後は乾くのを待つ。

不思議そうにその様子をノンとギルが見ていた。


「これは鉄筋コンクリートって言うんだぞ」


鉄が中に入ることによって、コンクリートの強度が増すことを教えてやったが、多分分かっていないような気がする。

二人とも首を傾けていた。

今回の家は頑丈にしたいと考え、基礎には鉄筋コンクリートを採用したのだ。


コンクリートが乾いたので、仕上げに入る。

まずは木枠を外していく。

水平器を用いて、外周をチェック。

『加工』で高さと横幅の差を埋めていく。

最後に確認の為、真ん丸な鉄の球体を作成し。

いろんな個所に置いて、鉄球が転がらないかをチェックする。


これで家の基礎は完成した。


ここからは、人海戦術で行っていく。

まずは必要な木材を俺が作成していく、木材の運搬を四人にお願いした。

ただし、ギルが戦力になったかどうかは、あえて触れないでおこう。


必要な分の木材を確保後、柱の組み立てに入る。

やはり人数がいると早い、どんどんと組み上がっていく。


柱が組み上がったので先に屋根を造っていく。

屋根の素材はガルバ二ウム合金のトタンにした。

これは前職の知識が役にたった。

ガルバ二ウム合金は錆びにくく、耐久年数が長いのが特徴の一つだ。


その後二階の床を作成し、側面の柱と柱の間にⅩ状に木材を固定していく。

間取りに従って、壁となる部分に柱を組んで、更にⅩ状に木材を固定していき。窓枠を固定した。

そして、最後に壁板を張り合わせて完成。



五人で正面から新居を眺めて見た。

皆で造った家を前に、嬉しさがこみ上げてくる。


「ここで、楽しい思い出をたくさん作ろうな!」


「「「「はい!」」」」

皆の声が揃っていた。




今日はお引越しと、新居の微調整、カーテンやら絨毯やらを作成しては設置していく。


間取りとしては、一階には玄関を入ってすぐにリビング。

随分大きなリビングになった。ちなみに土足厳禁。

右側に進むとキッチンがあり、キッチンからはあえて、リビングが見える構造にしている。料理を待っている時の皆の様子が見たいからだ。


キッチンには簡易的な換気扇が作成してあるが、換気扇を回すには、風魔法が必要となっている。

自走で回る換気扇はまだまだ先のようだ。


キッチンの横にはトイレがある。

これは排水官が設置されており、外の畑の下まで繋がるようになっている。

便座は頑張って石から『加工』で作成した。

水タンクは無いので大きな水瓶を設置し、使用後は桶で水を流すようにしている。


将来的には水を引き込み、完全な水栓状態にしたいと考えている。

今はまだ半水栓式だ。

便座はカバー有りの、蓋有りだ。

玄関正面から左手には俺の寝室兼書斎となっていて、二階は四人の個室と物置部屋となっている。


まだまだ快適とは言えないが、自慢の家だと自負している。


『鑑定』


名前:島野 守

種族:人間

職業:神様見習いLv5

神力:計測不能

体力:957

魔力:0

能力:加工Lv5 分離Lv4 神気操作Lv3 神気放出Lv3 合成Lv4 熟成Lv3 身体強化Lv2 両替Lv1 行動予測Lv1 自然操作Lv2 結界Lv1 初心者パック

預金:2684万1747円


お金がそれなりに掛かったが、それは気にしない。

アグネスに言って、アグネス便の回数を増やしてもらおうかな?




新居にも慣れ、いつもの日常を取り戻しつつあるころ。ゴンからこんな申し入れがあった。


「主、鍛錬を付けてください!」


なんと鍛錬を付けてくれとの申し入れだ。

でも俺って、鍛錬付けれるほど強かったっけ?

と思いつつも、まずはやってみることにした。


稽古の内容はこの通り

基本的に一対一で行う。

戦闘不能及び、戦意喪失したら負け。

武器は無し、人型でも獣型でも良い。

魔法は火魔法のような周りに被害がでるものは禁止、飛行は認めるが五秒以内に攻撃、又は、地上に着地すること。

舞台から場外に出た時点で負けとする。

浜辺に適当に十五メートル×十五メートルの線を引き、これを舞台とした。


最初の挑戦者はゴン。


目の前でゴンが身構えている。どうやら人型を選択したようだ。

他の三人が固唾を飲んで見守っている。

「ゴンいつでもいいぞ」

っと、いい終える前に、真っすぐゴンはこちに向かってきた。


左に回り込みつつ、右足でけん制。

それを寸前のところでジャンプしたゴンに、くるっと身体を回し、左足で回し蹴りを脇腹に決めた。


「ウッブ・・・」

ゴンが脇腹を抱えて倒れ込んだ。


まぁこんなところかな。


一瞬遅れて

「「ウォー!」」

と叫ぶノンとエルの声がした。


なるほど、身体強化と行動予測を使うと、こうもあっさりと、決まるものなんだな。

正直、自分でもびっくりしてしまった。

ゴンの動きがゆっくりと見えたし、どんな動きをしようとしているのかが、手に取る様に分かったのだ。


「ゴン立てるか?」

俺は手を差し出した。


「はい・・・なんとか」

ゴンの手を掴んで体を起こしてやる。


「エル、ゴンに回復魔法をかけてやってくれ」


「はいですの」

エルが駆け寄ってきた。


「ご主人様の戦闘は初めてみましたけど、お強いですの」

俺は肩を竦めてみた。


「まぁ、たまたまだよ」


「いえ、隙をついたつもりが、まったく通用しませんでした・・・痛たぁ・・・」

エルが治癒魔法を使い始めた。

ゴンには、人型では躱し方を考えるようにアドバイスを与えた。


次は、ギル、やる気満々だ。

まだ人化はできないので、当然獣型。

開始と同時に火を噴いてくるのが、バレバレだったので。

開始と同時に、自然操作で水をぶっかけて終了。


ギル君はまずルールから覚えましょう。


一時間は下を向いて、悔しがっていた。

生後数週間で親父越えは、さすがに無いでしょ。

まぁその気持ちは買いましょう。


次のチャレンジャーはノン、いつにも増して、気合が入っている。

目を見るとおふざけ無しの、真剣モード、ならばこちらも手抜きは無し。


ノンは獣型を選択、フェンリルの姿にて対峙している。

ノンの狩りは何度も見ているから、攻撃のパターンは想定済。


開始後、一旦距離を取る、ノンがゆっくりと右に回りこんでくる。それに合わせてこちらも前に出る。

ノンの射程距離、前足の爪で襲いかかってくるノン。


爪を振り下ろすタイミングに合わせて、振り下ろす前足に、更に上から勢いをつけるように、上から前足を下に叩く。

勢いの増した前足に耐えられず。でんぐり返しになるノン。

倒れたノンの顔に、寸止めで拳を当てて終了。


ノンには様々なパターンの攻撃を考えるように指導した。


最後はエル、以外にも人型でのチャレンジ。

人型とはちょっと意外だった。人型で飛べるのか?


開始前にエルが叫びだした。

「よっしゃー!やってやろうじゃないの!」

あっ変な子モードになってる。


開始、背中に羽を広げて飛行姿勢。

どうやら、人型でも翼だけ出すことができるようだ。

俺はあえて飛び上がるのを制止せず、上空からの攻撃を迎え撃つ。

上空からの蹴りをギリギリで躱し、そのまま足を掴んで、勢いのままに浜辺に叩きつける。


終了。


とここで


ピンピロリーン!


「熟練度が一定に達しました、ステータスを確認ください」


どうやら当分の間は、チャンピオンでいられるようです。


『鑑定』

名前:島野 守

種族:人間

職業:神様見習いLv5

神力:計測不能

体力:957

魔力:0

能力:加工Lv5 分離Lv4 神気操作Lv3 神気放出Lv3 合成Lv4 熟成Lv3 身体強化Lv2 両替Lv1 行動予測Lv2 自然操作Lv2 結界Lv1 初心者パック


預金:2684万1247円


変な子モードになった意味は、何だったんだろう?

ただ単に興奮したのかな?

やれやれ。

困った娘だな。

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