第5話 能力開発

今日は能力の開発を行っている。


今取り組んでいるのは、聖獣の皆が使っている火・水・土・風・氷・雷の所謂自然操作系についてだ。


俺は魔法が使えない、だが能力として獲得できれば、余りある神力で操作が出来ると考えている。


これらの能力を獲得できれば、様々なことができる。

火については、言わずもがな。サウナの火付けに始まり、風呂の温度を上げ。何より着火できなければ料理ができない。

今はノンにやってもらっているが、この先もこのままという訳にもいかないだろう。


水は畑の水やりが楽になるのは当たり前だし、風呂にも使える。


土に関しては畑の拡張であったり、まだまだこの島を開発していく予定なので、何かと使えると思う。


風は火の調整に使えるし、ここから派生して開発していきたい能力もある。


氷は何よりも水風呂を冷やせる、あとは冷えたビールが飲める。

これは何が何でも欲しい能力だ。


雷は今は狩以外には特に思いつかないが、電力として考えれば、何かとできることは広がるだろう。


どれも狩りにはあった方がいいのは当たり前の能力だし、獲得しない選択肢は無い。


まずは一番簡単そうに思えた風についての開発する。

風は暖かいところから寒いところに向かって吹く、大事なのは温度差、目の前にある空気に温度差があることをイメージする。


具体的には左の手の上に熱を感じるイメージ、温度は四十度ぐらい、今度は右手に温度を感じるイメージで二十度ぐらい、まだ風は吹かない。


もっと具体的にイメージを固める。左手は、炭酸泉に入っている時の温度のイメージ、右手はぬるめの水風呂に浸かっている時の温度のイメージ。これが一番イメージしやすい。

そして仕上げに軽く両手に神気を流し込む。すると、左手から右手に風が流れた。


成功!


あれ?

ピンピロリーンは?


気を取り直して、次は水、水は空気中に含まれている。


熱の境目に現れるイメージ、具体的には、冷えたグラスに空気が触れ、グラスの表面に水が発生するイメージ。


これも先ほどと同様に、右手の上に冷えたグラスをイメージし、左手から暖かい風が吹くイメージ。グラスの表面に意識を集中して、軽く神気を流し込む。すると手の平に水が発生した。


成功!


ん?

またないなぁ、できてるけど・・・


まぁいいでしょう。次は簡単、氷だ。

先ほど発生した水に冷えた風を一気に吹きかける。


冷えた風のイメージとしては、一度行ったことがある、サウナの有名店のアイスサウナ。凍えるほどに寒い風が、室内に吹いていた。


直ぐにできた、おそらくイメージが俺にとっては簡単過ぎたんでしょうね、サウナ関連なら間違いないのでね。


次は土、裸足になり、足の裏に土を感じる。一度軽くとんとんと足を動かしてみる。足の裏全体で強く地面を感じる。


そしてイメージを固めていく。イメージとしては自分の足の裏から無数の触手が伸びて、地面の中に広がるイメージ。


無数に広がる触手全てが感触を帯びて、大地と一体化するイメージを固める。大地の中の鉱物を感じる、気体や液体も感じる、もちろん土の感触も、粘土、岩、石、有機物までも・・・


足の裏に神気を込め、大地がせり上がるイメージを加えた。


成功!

足元の土が数十センチほどせり上がっていた。

少しこれまでにない、イメージの深みを感じた。これはこれで違う能力の向上につながりそうな気がした。


大地と繋がる・・・実にいい経験をした。


次に火、まず一本の枯れた枝をイメージした。その枯れた枝に先の尖った一本の硬い木をイメージする。

枯れた枝を横にし、先の尖った硬い木を垂直に置く。そして、その垂直に置いた木を高速で回転させる。

いわゆる火付けの作業、枝の接地面に意識を集中する。設置面に高熱が発生するイメージを重ねる。


さらに空気中の酸素がどんどん接地面に吸い寄せられていくイメージを加えた。仕上げにその設置面に意識を集中し、神気を流し込む。


成功!

火が付いていた。


最後に雷だ、風が発生し上空に雲が発生するところをイメージする。そして雲の中で温度が急激に冷えるイメージを重ねる。

雲の中で冷えた水が氷となり、氷がぶつかり合って電荷が溜まっている様をイメージする。最後に神気で身体を覆う。

そして雷が落ちる。

ドーン!!

俺の目の前に雷が落ちた。

危な!


成功!


ピンピロリーン!


おっ!やっとか。


ステータスを確認すると、能力に『自然操作Lv1』が加わっていた。

なるほど、そういうことね。




俺の『加工』Lvも4になり、かなりの腕を上げたと思っている。

そんな腕を試したくなり、ちょっとした遊び心だった。


「ノン、ノンが抱えられるぐらいの大きな岩か、石を持ってきてくれるか?」


「分かったー、ちょっと待っててねー」

そう言ったノンは、海岸を北の方に駆けていった。


一時間後。


高さ一メートルぐらいの岩をノンが抱えてきた。


「でっかいなー、ノンすごいな!よく持ってこれたな」

ノンを褒めてやる。


「ノンすごいでしょー」

頭を撫でてやった。喜んでいる様子。

こいつはほんとに甘えん坊さんだ。


「ノン見てろよ」


『加工』の能力でノンの獣姿の石像が出来上がった。


「わっ!わっ!わっ!すごい!すごい!」

大はしゃぎのノン、ぴょんぴょん飛び回っている。上機嫌のご様子。

せっかくだから家の前に飾ってやった。


こんなに喜ばれるとは思わなかったが、我ながらいい仕事をした。

その様子を見ていたのか、一時間後、ゴンが八十センチぐらいの岩を抱えて持ってきた。

それも汗だくになりながら・・・

これは、造るしかないな。


今度はゴンの獣姿の石像が完成した。

ゴンは嬉しそうにしながら、照れていた。

これもゴンの家の前に飾ってやった。


そうなると、やっぱり岩を抱えたエルがいた。

当然エルの石像も作成し、ゴンとエルの家の前に飾った。

んー、何かが足りない気がした。

あっ!


「ノン、悪いがもう一度岩か石を持ってきてくれるか?こんなに大きくなくていいからさぁー」

悪いがノンにお願いした。


「いいよー、行ってくるね」

その後、高さ五十センチぐらいの岩をノンが運んできてくれた。


さて、気合をいれるか。

『加工』これまで以上に、イメージを鮮明に描いてみた。

そして感謝の念を込める。

よし、出来た。


創造神様の石像が完成した。


なんか、ちょっと輝ってる?気のせいかな?

せっかくなので、畑の傍に簡単な祭壇というか、石を並べただけ?の土台を作り、創造神様の石像を祭ってみた。


翌日、ちょうど野菜がたくさん収穫できたので、野菜と日本酒をお供えしてみた。


「創造神様、おかげさまで、衣食住に困ることなく、サウナ満喫生活を送っております、よろしかったらこちらをどうぞ、今後も暖かく見守ってください」

と言うと、お供えした野菜と日本酒が消えていた。


なんじゃこりゃ?




数時間後、創造神様が島にやってきた。


「おーい、守よー、元気にやっとるかー!」

現金な爺ぃめ、お供えしたら来るんかよ!


「そうじゃぞ、あの日本酒とやらが旨かったから飲みに来たぞー」

あっ心を読みやがったな。くそ!


「しっかり聞こえとるぞー」

やれやれだ。


「で、晩飯もいりますか?」


「おー悪いな、頼めるか?」

といいつつ、創造神様は椅子に腰かけた。


「了解、嫌いな食べ物とかありますか?」


俺はテーブルの上を片付けながら話掛けた。

「何でも結構じゃ」


さてと、何にするか?簡単にステーキでも焼きましょうかね。


海藻サラダとご飯に味噌汁これは作り置き、肉はチキンステーキだな、ステーキソースは刻んだ玉ネギに醤油、味のアクセントに唐辛子とニンニクを少々。焼き加減はよく焼きでと、さて出来上がり。


そろそろご飯にすると、三人に声を掛けた。


「ノン、ゴン、エル、こちら創造神様、よろしくな、でこちら」


創造神様が遮って話しだした。

「あー知っておる、フェンリルのノンと九尾のゴンじゃな、あとは、ペガサスのエルじゃな」

ノンはいつも通りな感じだが、ゴンとエルは緊張で顔が引きつっている。


「「よ、よろしくお願いいたします」」

ゴンとエルが何とか声を振り絞っていた。


「ノンだよー、よろしくねー!」

うーん、こちらは通常運転


「では」

手を合わせて。


「「「「「いただきます」」」」」

五人で合唱する。


「やはり、万能種から作る野菜は格別じゃなー」

美味しいようでなによりです。


「何か万能種には秘密でも?」

分かってはいるが、あえて聞いてみた。


「いやー特にはないのじゃが」

日本酒を創造神様のお猪口に注ぐ、


「そうですか、神気が関係しているのでは?」


「それはお主も理解しておろう」

まぁ、分かってはいましたよ。


「それで、神気って結局のところ何ですか?」

これには答えてくれるかな?


「うーん、本当に答えていいのか?お主、自分で紐解く方が、好きなんじゃないのか?答えてやることはできるが、自分で解明したいんじゃないのか?」

そうか、俺の性格まで丸わかりなんですね。


「確かに」


「お主のことは目を付けてから何年も見てきておる、お主の性格は把握しておるんじゃ。だから説明もほどほどに、こっちの世界に連れてきたんじゃがなぁ」

はぁ、やっぱりな。そんなことだろうと思ってましたよ。


「まぁ、どうせそんなことだろうと思ってましたよ」

創造神様がクイっとお猪口を飲み干した。


「しかし、この酒は上手いのー」


「そんなに気に入ったんならお土産に何本かどうぞ」

お神酒には日本酒が定番なのでは?この世界ではちがうのかな?


「そうか、そうか、すまんのー」


「で、創造神様も忙しいんでしょ?そろそろ本題に入ってもらっても?」


「さすが守じゃ、察しがいいようじゃな」


創造神様がグイっと近づいてきた。

「実はな、お主も感じておるとは思うがの、この世界の神気は薄くなってきておるのじゃ、日本とは違って薄く感じるじゃろ?」


「ええ、それは感じてました」

やはり薄かったのか、日本が濃い訳ではなさそうだ。


「それでな、すぐにってことではないのじゃが、このままこの世界から神気が消えて行ってしまうと、この世界が崩壊してしまうんじゃ」

この爺ぃ、平然と言うことかね?


「で、崩壊まであと何年ですか?」

あと1年とか言われたらたまらんぞ。


「いや、はっきりとは言えん、ただ、数年で崩壊とはならんじゃろうて」

それはひとまずありがたい、出来れば三十年以上はもって欲しい。

後三十年はサウナ満喫生活を続けたい。


「神の中にも、それを感じて動いておる奴らもいるようじゃしのう」


「原因はなんですか?」

これ重要なこと。

でも答えてくれるかな?


「悪いがそれは儂の口からは言えんのじゃ、神である以上直接関与する訳にはいかんのじゃ」


「でしょうね」

神様のルールってやつですね。


「後、すまんが、お主がやっとるあの『黄金の整い』じゃがな、あまりこの世界では広めんで欲しいのじゃ、あの方法は特別じゃ、あの方法が広がると一気に世界の崩壊につながる可能性があるんじゃ」

そうなのか?俺達普通にやってるけど大丈夫なのか?


「そうですか・・・」

『黄金の整い』を止めた方がいいのか?


「あー、気にせんでええ、お主らはこれまで通りにやってもらっても全然大丈夫じゃ」

よかったー!もうダメとか言われたら発狂するところだった。


「助かります、では、この先も遠慮なく整わせていただきます」


「さて、来て直ぐな気もするのじゃが、要件は伝えたのでそろそろ帰らせてもらうとするかの」

横を見るとゴンが神妙な顔をしていた。


「バイバーイ」

と、ノンはマイペース。


「お達者ですの」

エルはいまだに緊張している様子。

お達者、って久しぶりに聞いたわ。


食事を終えたのち、創造新様は帰っていった。

早いお帰りだったが、結局のところ『黄金の整い』を広めるなということと、この世界の神気が薄いということを伝えたかったようだ。そんなことなら、呼び出してくれれば早く済んだのに。

と思っていたところ。


やられた!

あの爺ぃ日本酒を樽ごと持っていきやがった。ちっ!

ほんとは日本酒が欲しかったんかい!




神妙な面持ちで俺はゴンに尋ねた。

「ゴンちょっといいか?」


「なんでしょう主?」

目の前で畏まっているゴン。


「ゴン正直に答えてくれ・・・飯に満足はしているか?」

えっ!といった表情をしているゴン。


「はい、それはもちろん、毎日の食事が楽しみでしかたがないです、上手いし、暖かくて最高です!」

笑顔の表情から本音を言っているのは分かる。


「そうか、実はな、俺は全く満足していないのだよ」

今度はゴンは信じられないといった顔になっていた。


「えっ!あんなに美味しいのにですか!」


「そうだ、決定的に足りない物が、二つもあるんだ」

そう二つもあるんです。


「えっ!二つも!それで、足りないものとは・・・」

ゴンが唾を飲み込む、そうとう大事と捉えているらしい。


「鶏と牛だ!つまり卵と牛乳がないのだ!」

思わず後ずさるゴン。


「主!申し訳ありません!」


「な?なぜに謝る?」

土下座を始めたゴン。


「申し訳ございません!ご容赦ください」

ん?なにこの急展開。


「な、な、なんだ?」


「実は、その・・・鶏と牛なんですが、私のいた社で飼育しております!」

はあ?

ウッソー!やったー!

運が良すぎるー!


「う、うん!そういうことは早めに報告しなさい、ってお前何か月もここにいるけど大丈夫なのか?」

ちゃんと鶏と牛は生きてるのか?死んでないよな。


「はい時々夜に抜け出しては、エサをやりに行ってましたので」

何故に夜抜け出して・・・


「そうか、で、なんで言わなかった?」


「いや、その、社の仕事に未練があると思われたくなくって・・・つい・・・」

ほんとにゴンは生真面目過ぎるな・・・まぁいいところでもあるけど。

そんなことで未練があるなんて、普通は考えないもんだぞ。


「他には何か話しておきたいことはあるか?」


「特にはないです」

まあいいでしょう。

というか、やったー!これで念願のピザが作れる!

それに料理の幅が、何倍にも広がるぞ!


「まぁいい、以後気を付けるように」

心の動揺を隠し、俺は偉そうに注意した。




翌日、俺はさっそくエルにまたがり、鶏をお迎えに

ノンとゴンは牛のお迎えにまいりましたとさ。

もちろん、鶏小屋と牧場は建設しましたよ。

おいしい卵と、牛乳をよろしくお願いいたします。




今日も能力開発に励んでいる。ちなみに現在のステータスはこんな感じ


『鑑定』

名前:島野 守

種族:人間

職業:神様見習いLv5

神力:計測不能

体力:957

魔力:0

能力:加工Lv4 分離Lv4 神気操作Lv3 神気放出Lv3 合成Lv3 熟成Lv2 身体強化Lv2 両替Lv1 行動予測Lv1 自然操作Lv2 初心者パック

預金:3010万3174円


今開発中の能力は『結界』だ。

はっきり言って無茶無茶難しい、ここ三日間掛かりっきりだ。


『結界』を取得したい理由は一つの出来事に起因している。

いつも通りのサウナルーティーンを行い、『黄金の整い』を行っていたところ。


「フ~ン、フ~ン」

という俺の嫌いな音がした。

正体は蚊である。


気になったら、無視できないのが性分で、又『黄金の整い』を邪魔されたことに腹が立ってしょうが無かった。

ちなみに、ノンとゴンとエルには『黄金の整い』の最中に話しかけることは厳禁、というルールを徹底させている。

このタイミングではやめてくれという、最たる出来事である。


さて、開発したい『結界』だが、経験していることや具体的な物や類似品がある場合は、イメージがしやすい。

しかし、結界となると地球には無い物だし、当然過去の経験には無いものである。


唯一のヒントとしてイメージできたのは、エアーカーテン、デパートの入口に、たまにある風のカーテン。

だが、それだと空気は通さないことは分かるが、物理的な物は簡単に通ってしまう。


どうしたものか。手詰まりか・・・イメージを掴むことに手間取っている。

このままでは、埒が明かないので、気分転換に釣りをすることにした。


実は、釣りのエサ問題が解消された。

虫を捕まえてエサとして使ってみたが、駄目だった。

獣の肉もエサとして試してみたが、此方も駄目だった。


ただ、これはもしかしたら、浅瀬で釣りをしているからかもしれない。

なぜならば、一度だけ大きな当たりがあったが、残念ながらバレてしまったことがある。


ただその時の魚影は一メートル近くあったので、肉食系の魚がいるのかもしれない。

しかし、大きな魚が浅瀬にいることは稀だろうと思う。


次に試したのは野菜、いろいろ試した結果、ニンニクがエサとして一番適していることが分かった。

匂いが強いのがいいのかな?


エサを付け、釣りを始めた。

浮をぼんやりと眺めながら、改めて結界について考えてみる。


結界とは何なのか?

物理的な物を通さない、もちろん魔法も、ただし、空気は通したい。何故なのか?

結界内で空気を通さ無いでは、酸欠になってしまうからだ。

ただ単に、物理的な防御のみであれば、正直簡単だ。


イメージとしては、強化ガラス、それも大統領の護送車に使われているようなものをイメージすればいい。

しかし、これで全方位覆ってしまっては、酸欠状態になるのは必至、ではどうする・・・


ん?少し分かりかけてきたぞ、酸素が無くなる・・・なら生み出したらどうか・・・


どうやって生み出す?


結界の外側には十分に酸素があり、結界の外側表面には酸素が触れている・・・それを結界が吸収し、内側に排出する!


いける!


イメージした。より具体的に、更に結界に強度と共に柔軟性も加えてみた。

神気を身体に流し込む。


ピンピロリーン!


いけた!


能力に『結界Lv1』が加わった




遂にこの日が訪れた、長いこと食していない、あの食事がついに作れる。


今日の為に、二日前から準備をしていた。

まずは、バットに強力粉と薄力粉を半々入れ、天然水を加える。

そこに『熟成』と『合成』を使いドゥを作成。


よく混ぜた塊を球状に丸める、その表面にオリーブオイルを塗って、トレーに乗せる。

これを十個作成し寝かせる。


そして、釜を作成する。

ここにはお金は掛けてもいいと考えている。


万能鉱石にてレンガを大量に作成、釜を組んでいく。

釜の中央部分に大きな石が必要な為、ノンにお願いして。なるべく運べる大きな石か岩を探してくるようにお願いした。


ノンから、

「また石像造るのー?」

と言われたが、それはお楽しみと答えておいた。

ごねんなノン・・・

今回は違うのだよ。


テンションが上がったのか、ノンが直系二メートルぐらいある岩を持ってきてくれた。

ノンありがとう・・・味噌汁ピザを作ってやるから簡便な。


その岩を『加工』し、石の板を作成した。


釜の中央部分に石板を設置し、その上に、半ドーム状にレンガを積み上げていく。

最後に全体に『合成』を使用して、隙間を完全に無くす。


ピザ釜が完成した。


後は、どれだけの熱を生み出せるか・・・




翌日


昨日、仕込んだドゥを確認。

ところどころ空気を含んでいるドゥを、もう一度球状に丸めて空気を抜き、表面にオリーブオイルを塗って再度寝かせる。


そして具材の確認をする。

まずは絶対に譲れないトマトソース。

ソース作成には、牛を飼育しだしてから、直ぐにとりかかった。

詳細は、また後日報告させていただくとしよう。


そしてホワイトソース、牛乳と小麦を『合成』によって出来上がった一品、まだまだ改良の余地あり、そして変わり種として味噌ソース。

これはノンの為に作っていると言っても過言ではない。


更にサラミを中心に、ベーコン、ウインナー等の加工肉を『加工』の能力で作成。

ウィンナーの皮にはジャイアントボアの腸を使用した。


野菜に関しては、確認の必要など無い、そして、バジルなどの香辛料を中心にチェックしていく。


そして一番重要なチーズ。


作成工程を紹介しよう。

まずは、牛から絞った生乳を『分離』で不純物をとり除く。

次に『分離』にて、水分を無くす。


ここから工程は二種類に分かれる。

チェダーチーズは、塩を降り『合成』にて混ぜ合わせ。

自然操作の風で冷やして完成。


モッツァレラチーズは、自然操作の火にて、慎重に水気を抜いた生乳を加熱する。

その後『分離』にて成形し、塩水に漬けておく。


そうした工程を経て、二種類のチーズを作成した。


まだまだ改善の余地ありだが、出せないレベルではないので、ピザ作りを決行することにした。


いざ!神妙に。


俺は、万能鉱石にて作成した大理石のテーブルの上に、小麦粉をまぶし、ドゥを伸ばしていく。


腰を入れ、体重を乗せながら、ドゥを丸い形に成形していく。

丸い円盤状の生地が次第に出来上がってくる、丸い円形の生地の外周を抓るようにつまみ、小さな土手を作っていく。


最後に、土手を両手で挟み、空気を抜いていく。

これで生地が完成した。


ここからはトッピングだ。

まずはこだわりのトマトソースを満遍なく贅沢に塗っていく、そこにモッツァレラチーズを散らしていく、できるだけ大雑把に。

そして、バジルの葉を隙間に埋めていく。


最後にペッパーを散らして、ピザ釜専用に作成した丸い網に乗せ、ピザを釜に入れる。


ここからは、集中力が大事な局面。

『身体強化』にて、パフォーマンスと集中力を上げ、釜に入れたピザに集中する。


木炭を四隅に配置し、温度調節に気を配る。

温度が一定になるように駆使してはいるが、焼きムラが出るのは当たりまえ。できないにこしたことはないが、できてしまってもこれはご愛敬。

この焼きムラがピザの醍醐味ともいえる。


三十秒ごとにピザの状態を確認する。

万能鉱石にて作成した、丸いアルミの網を時計回しに回していく。


今だ!


ピザを取り出し、直ぐにピザカッターにて切り分ける。

完成したピザを眺め、満足感に浸る。


「今日のピザは格別だぜ!」

と決め台詞を吐いた俺の前にはノン・ゴン・エルが目を輝かせて待っていた。


「では手を合わせて」


「「「「いただきます」」」」

取り分けて食べ始めた。


「これはなんという複雑なバランスの食事なんでしょうか・・・」


「まぁ、美味しいですの」


「主ー!最高!」

等と感想が響き渡る。


これが食べたかったのだ、俺の大好物のピザ、異世界でも美味しいです!

よーし、次はホワイトソースのピザだ!


三人は競い合ってピザを食べていた。

俺はその様を見て小さくガッツポーズをする。


この日以来、ピザは週一で振舞われることになった。

ちなみにノン用に作成した味噌汁ピザだが、思いの他上手くいった。

ピザ生地に、薄めた味噌を塗り、チェダーチーズを撒く、そこに、煮付けた大根とナスをトッピングした。

普通に旨い、ノンは大喜びだった。


でもよくよく考えてみると、米がピザ生地に変わっただけで、犬飯にチェダーチーズを掛けただけのような・・・ノンには言わないでおこう。




私しはペガサスのエル、名前を付けて頂いたのは、つい最近のことですの。


私しはコロンの街にある、天使様の集落で育ち、日々を過ごしておりましたの。

集落での暮らしは、毎日が楽しくはありましたが、少々物足りないと感じてもおりましたの。

何せ、ご飯が美味しくないのです。特に野菜が・・・


本来ペガサスにとって好物であるとされる人参ですら、美味しいと感じたことはありませんでしたの。


「上手いは正義です!」


少々はしたないことを言いましたの、ご勘弁を・・・


私しは、飛ぶことが得意ですの。

というのも、私しはユニコーンとのハーフですの。

なのでスピードには自信がありますの。集落の中で、私にかなうペガサスや天使様はおりませんの。


「なにせぶっちぎりですので!ぶっちぎり!」


あっ失礼いたしました・・・


どうやら私しは、時折言葉が乱れてしまう様ですの。


ある時、いつも通り天使様達と飛行の訓練をを行っておりましたの。

すると、森で光る何かを見つけましたの、気になったので近づいてみましたの。


丸い黒い石でしたの。

自然の中でこんな丸い形とは珍しいと思いましたの、なので私しは少し興味を持ちましたの。

蹄で触ってみたところ、感触は普通の石よりも少し柔らかみを感じましたの。

すると突然、その石が目を開きましたの。真っ赤な目でしたの。


その後の記憶はございませんの・・・


気が付くと、私しは、湖の畔で倒れておりましたの。

立ち上がってみたところ、目の前に一人の男性がおりましたの。

その男性は水と人参を私しに用意してくださったの。


始めはぼんやりして、状況が理解できませんでしたの。

でも、目の前に差し出された水と人参から、美味しそうな匂いを感じましたの。


気が付くとむさぼりつくように、食べておりましたの。

美味しい、シャキッシャキの人参、これまで食べてきた人参がまるで別の野菜なのかと感じるほどでしたの。


本来ペガサスの好物とされる人参はまさにこれだと、体の中から感じましたの。

とても幸せを感じましたの。


お恥ずかしながら、あっという間に食べてしまいましたの。

すると先ほどの男性が「お代わりいるか?」と尋ねてくださいましたの。

その時私は決めましたの。一生この方についていくと。


そして今では、美味しい食事と楽しい毎日を過ごしておりますの。

えっ!天使様の村に未練はないのか?

天使様に顔向け出来るのか?

何を仰ってますの?


「上手いは正義です!」


あっ、すません、悪い癖が出ましたの。




四人での朝食、献立はご飯に味噌汁、卵焼きに、焼き魚。


「ゴンは焼き魚にだいぶ慣れたようだな」


「はい、おかげさまで、美味しくいただいてます」

なんでもゴンは、魚料理自体ほとんど食べたことが無かったらしい。


「ところでさ、前に鶏の回収に社に行ったことがあっただろ、それで気になってたんだけど、あの社を守ってたって言ってたよな?」


「はい、そうですが」

社は一見日本の神社のようだった。


「社の中に何かあるのか?」


「何かはあるようなんですが、実は何があるかは、私は知らないのです」

下を向いてゴンが答えた。


「知らない?なのに警備させられてたの?」

ゴンに役目を与えた中級神ってどうなのよ?

なんかムカつく。


「そうなんです、社の中に入ろうにも結界があって、入れないんです。そもそも前に話した。中級神様から社を守るように仰せつかった時に、何があるのか聞いたんですが、教えて貰えませんでした」

相当な秘密主義者ってことなのか?たしか、名前すら教えて貰えなかったって言ってたよな。


「お前そんなんで、よく百年も過ごせたよな?」


「正直、何度も放り出そうと思いましたが、よくよく考えてみたら、ここは島で、私は泳ぐことが出来ず、島から離れられないことに気づきまして・・・」

ああ、八方塞がりということね。ほんと可哀そうに。


「そういうことね、逃げ出そうにも手段が無く、獣が多い島だから食うには困らんということだな」


「そうです、牛と鶏の世話もありましたので・・・」

律儀なやつだな。真面目過ぎるなゴンは。


「結界か、気になるな。この際せっかくだから、今日みんなで社に行ってみるか?」


「やったー、お出かけだー」

ノンがはしゃいでいる。


「あら、お出かけですの?ウフフ」

なにやらエルも嬉しそうにしている。


話は脱線するけど、このエル、無茶苦茶美人さんなんだよな、おしとやかな感じっていうのかな?

初めて人型になったところを見た時はびっくりしたもんだよ。

着物っぽい服も着てたし。


ただなー。この子普段はお淑やかに話すけど、時折男みたいな声で、変なこといい出すんだよなー。

何だよあれは?

「上手いは正義!」とか・・・

まぁいいけど、後、笑う時に、歯茎まで剥き出しするのもどうかと思うけど・・・

まぁいいや、さぁ後片付けしましょうかね。

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