続く没収と悪魔の呪い

天使がそう言うと体から力が抜けていった。本当に弟の力が盗られたのだろう。そしてこの時点でSSSランクダンジョンのボスを倒せないぐらいまで弱体化した。もうSSSランクダンジョンなんて攻略出来ないだろう。だがまだ『英雄』の力は失われていない。

 

「『英雄』…いや、時雨圭役。貴女の制裁がこれで終わりと思っているのかしら?

 貴女は『英雄』としての役割を果たせなかった。そんな貴女に『英雄』の力は必要ありません。なので貴女から『英雄』の力を没収します。

 そのついでに貴女に施した改造を全部元に戻しておきますね。これで元の人間に戻れました。これからは好きなだけ悪魔と契約できますよ。」

 

 天使がそう言うとさっきよりも力が抜けていく。着ている防具や武器の剣が重い。

 

「嫌だ!私の…私の力が!なんで私がこんな目に…。そうだ!全部弟のせいよ!私は悪くない!弟が天使候補なんかにならなかったら!よって私に罪はないの!」

 

「おい天使この女ムカつくからコイツに呪いかけても良いか?」

 

「反省してないっぽいのでまぁ良いですよ。」

 

「許可ありがと。さて、お前にかける呪いは『幻覚全種類』、『悪夢』だ。

 お前の弟はお前が英雄になってからお前の想像以上に苦しんで生きて苦しんで死んだ。

 だけどお前はまだ苦しんでいない。だからお前も苦しめ。時々見せる幻覚や悪夢で弟が苦しみをお前にも味合わせてやる。

 精々苦しめ。」

 

 悪魔に呪いをかけられる。すると私の目の前に弟が現れた。弟は私の首を絞めてくる。

 

『姉ちゃん、僕姉ちゃんが活躍している裏で冒険者達にこうやって何度もストレス発散のサンドバッグになってたんだよ。とても痛かったよ。

 ねぇ、姉ちゃんも味わってよ。僕の苦しみ。』

 

「きゃあああああ!!」

 

 私がそう叫ぶと弟は消えていた。

 

「分かったか元英雄。お前の弟は今の様な苦しい事を毎日の様に味わっていたんだ。

 いくら天使候補で心が強くても普通の人間だ。それなりに傷つくし理不尽な世の中に何度か心が死にかけていただろう。

 ちゃんと記憶通りに再現しているからよく分かっただろ。弟がどんな目にあったか。

 サービスで1%の確率で優しくしてくれる幻覚を入れてやったわよ。今のはその例よ。それにすがって精々生きなさい。」

 

「嫌だぁ!こんなの耐えられない!耐えられるわけがない!天使様!この呪いを消してください!お願いします!こんなの毎日受けてたら発狂して死んでしまうの!」

 

「大丈夫です時雨圭役。ちゃんと精神は崩壊しない様に体を弄ってあります。

 なので安心して幻覚と悪夢を楽しんでください。そしてこの呪いを通して貴方は罪を自覚するのです。そして償いなさい。」

 

 そう天使に切り捨てられて私は絶望した。

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