制裁と没収

「分かりましたか?『英雄』様?」

 

 そう言って絶望して俯いている私の顔を覗き込み声をかける天使。それでも返事をしない私に飽きたのか私から離れた。そして「あ、言い忘れていたわ。」と言ってまた話を再開した。

 

「これから貴方達人間へ罰を与えます。」

 

「おいおい、いくら天使候補である彼の魂が悪魔である私に取られたからって人間に八つ当たりしすぎでしょ。

 ああでも私に罰を与えるのもそれはそれで違うわよ。私がたまたま死にかけていた彼を見つけて彼の魂を回収しただけだから。本当だよ。」

 

「八つ当たりじゃ無いわよ。これは天界のルールなの。

 人間には伝えてないけど天使候補を天使にすると言うミッションがあるの。この事はちゃんと信仰している信者全員に伝えているわ。まあその信者達は揃いも揃って全員ミッションの事を忘れてたけど。

 だけど天使候補が天使にならなかった場合ミッション失敗の罰を受けることになる。もちろん天使候補と接点がある人も接点が無い人も全人類揃って一緒に罰を受けることになってるの。

 まず天使候補を天使にできなかった罰として全員共通で弱体化する様になっているのよ。

 あ、そうそう今言ったのが天使候補と接点がない人が受ける最低ラインの罰よ。接点がある人や元信者達には更なる罰を受けることになるわ。

 あ、貴方達気になったでしょ。もしも彼が天使になれた場合どうなるか。それも教えちゃいます。もしも彼が寿命まで生きて見事天使になれた場合、ミッションはクリアしたと言う事となりご褒美として貴方達が生きている間に犯した罪を全部無かった事になります。簡単に言うとこの先どんなに罪を犯しても無条件で天国行きです。まぁもう無理ですが。

 此処からは主に彼と接点があった者達を指名して罰を言うわ。これは神達が議論して決めたことよ。」

 

 「まずはギルド。貴方達は天使候補である彼に暗殺者と警察を使って殺そうとした。これが貴方達の罪。

 まぁ天使候補じゃなくても悪いことしてない人に暗殺者送り込むとか普通にダメけどね。

 そして天使候補の彼を弱いと言う理由で死ぬよりもつらい理不尽な目に遭わせた。まぁ試練としてそうなる仕組みだったんだけど。

 だから罰として最低ラインの罰と一緒にギルドに所属している冒険者や職員達全員のスキルの抹消とダンジョンからモンスターが出ないように私達が設置した結界を無くしておくわ。それとギルドと分類されている建物を今日の夜に破壊するわ。

 それと彼に暴力を振るった者や暴言を吐いた者、それとピンハネ受付と一緒に報酬をピンハネしていた他の受付職員達は全員地獄落ちらしいわよ。

 あ、そうそう言い忘れてたわ。さっき話した結界の話は日本だけじゃなくて世界中の話ね。だから頑張って結界張れるスキル覚えて自分達で結界張ってね。」

 

「次は彼の通っていた高校。ええっと、『六手梨高校(ろってなしこうこう)』

 ああそういえば、この高校は彼以外の冒険者は一人も居ない、誰もダンジョンにすら入ったことが無い。そもそも冒険者になる為の学部もない。

 …なんでダンジョン都市にそんな高校があるのよ。

 生徒教員が冒険者でも無い、命を懸ける事を知らない馬鹿共。なのに命をかけて必死に生きている彼を虐めた罰として、まず最初に校舎の破壊ね。それと彼を虐めた人は地獄行き。もちろん見て見ぬ振りしていた先生も。

 まあそれだけで良いでしょう。どうせ顔とか明日には全部特定されてネットに晒されるし、まともに生徒は就職も進学も出来なくなるし教員は全員教員免許剥奪と解雇処分でしょうね。本当に生き地獄ね。

 そうなったら今度は貴方達が親や親戚達の寄生虫になるわね。それか貴方達が馬鹿にしていた彼と同じように冒険者にでもなるしか無いわね。」

 

「次に私達の元信者達。

 死んだら地獄落ちです。私達の伝言を忘れるとかいう愚かで馬鹿な元信者は死んで地獄で苦しんでください。

 あと全員破門です。愚かな信者が愚かなことをして迷惑になるぐらいなら信者が一人もいない状態に戻します。だから貴方達の罰を伝える時「信者」の前に「元」をつけました。これは貴方達が信仰している私達天使の上司からの通達です。

 あと豪華なだけなハリボテ未満の教会は全て壊しておきますね。」

 

「それと残りの誹謗中傷だけしたほとんどの一般人。

 貴方達は特に家を壊すとか家庭を壊すとか無いけど匿名で彼に暴言を吐いていたから私の方で実名を晒しておくことにするわね。あと貴方達も死後地獄落ちは確定してるわ。

 それとこの評価は自業自得だから『英雄』にわけわからない訴訟を起こしたり誹謗中傷したら死ぬ様に設定しておくわね。ちゃんと責任転嫁せずに反省しなさい。

 あ、そうそう。地獄落ちという評価を貰った人はこの先どんな善行を重ねても意味ないから、あと故意に自殺も出来ないように脳いじくるから死にたかったら頑張って自殺以外の方法で死んでね。」

 

「此処から個人的な制裁よ。

 まず彼が得るはずだったお金をピンハネしたギルドの受付。貴女はもう職場と力を失ってるけど家と富と権力も無くしておくわね。

 まあ権力は天使候補を殺そうとして世界が大変な事態に陥った原因の一人って事が世界中に今バレたからもう無くなるし放って置いて。

 富は貴女達一族の口座や屋敷を没収するわ。口座は全額ちゃんとした募金に使うわよ。

 貴女の家である屋敷は勝手に更地にして勝手に売り出しておくわね。大丈夫、土地を売ったお金は人生やり直すための軍資金として渡すわ。でも貴女は彼の報酬を九割ピンハネしていた。だから売れた金額の九割をピンハネして一割だけ渡すわ。残りの九割はちゃんとした募金に使うから安心してね。

 ピンハネするって事はピンハネされる覚悟もあるのでしょう。

 あら?そう言えば貴女の一族って冒険者との『信用・信頼』を大事にしているのね。とっても素晴らしい一族ね。まぁその『信用・信頼』も貴女のせいで無くなっちゃうわね。」

 

「そして『英雄』の時雨圭役。貴女は天使候補を間接的に殺した罪があります。まぁどっちかって言うと家族殺しの共犯って言う方が正しいのですが。

 地獄行きは確定として、まず不当に手に入れた彼の力を没収しますね。

 そして貴女には寿命で死ぬまで何としても生きてもらいます。自殺も出来ませんし他殺でも死にません。貴女には『超再生』と『危機回避』のスキルを新たに付けます。これで首を吊ろうが包丁を心臓に突き刺そうが死ぬ事は絶対に無いです。あと精神も弄って精神崩壊出来ない様にしました。

 なので安心して余生を過ごしてください。」

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