『英雄』の役割

「簡単に言うと彼は『天使候補』です。」

 

 いきなり爆弾発言をしてきた天使。これまで黙って話を聞いていた一人の仲間が言う。

 

「ちょ、ちょっと待てよ!なんであの死んだ寄生虫野郎が『天使候補』なんだよ!『英雄』様が『天使候補』じゃないのか!?文献にもそう書いてあったぜ!」

 

 その言葉を聞いた天使と悪魔が呆れた顔をする。

 

「そんな文献嘘に決まってるでしょう。その文献は過去の英雄が暇つぶしの為に書いた馬鹿みたいな妄想小説なんですから。」

 

「因みにその英雄はそのゴミみたいで気持ち悪い勘違い妄想を後世に残した罪で刑期百兆年の無限地獄の刑に処されて今も無限地獄で苦しんで居るわよ。」

 

 そこまで言われて仲間は黙る。天使は話を続けた。

 

「天使候補と言っても最初から強いわけではありません。最初は戦闘力を弱く設定しているのです。その理由は自分で強くなる苦労を知ってもらう為です。

 そして彼はまだ天使候補の第一歩目、精神もまだ弱かったのです。

 そして彼は誰にも認められる事はなく、誰の力も借りず一人で強くなった。現に彼は理不尽な世の中を死ぬ気で生き抜き一人でAランクダンジョンを攻略出来るほど強くなりました。後やることはこのままメキメキ強くなって寿命で死ぬまで生きるだけでした。

 寿命で死ぬことが天使候補が天使になる条件なのです。

 ついでに言うと貴女と彼がすれ違う事は必然的に起こります。このことに関しては私は何もしてませんよ。人間と言う物はそんな物何です。」

 

「じゃあ『英雄』は何だったのかって言う話。『英雄』は天使候補が天使に成長する為の舞台装置なのさ。因みに『英雄』の条件は天使候補の兄か姉だ。さらに言うと二人兄弟姉妹だ。

 そして天使候補の試練は『英雄』が出た後に開始される。つまり姉である『英雄』は天使候補の弟の為に生きている様な物なんだよ。

 天使候補に選ばれる者は気持ちが強くなって行くからどんなに心にどれだけ傷を負っても罪を犯さないし自殺とかもしない。まぁ人並みに傷つくが。

 だけどそれでは完全な天使にはなれない。そこで天使は『英雄』と言う天使候補が天使になる為の障害物システムを作り出した。

実は『英雄』は私ら悪魔と契約出来ない。その理由は舞台装置が壊れないようにする為に天使達が『英雄』であるお前の体の仕組みをいじっているから。

 人間は馬鹿だ。姉が『英雄』になっただけで姉弟と接点もない赤の他人が勝手に人の弟に暴言を吐き暴力を振るう様な馬鹿な奴しかいないからな。

 これが馬鹿な人間どもを利用した天使候補が天使になる為の試練なのさ。」

 

 「しかし私達天使にとって予想外のことが起こります。それがこのSSSランクのボスモンスターです。」

 

 そう言って鎖で縛られていたボスを浄化する。ボスは悲鳴を上げながら消えた。

 

「貴女がこのモンスターと契約した事で彼は寿命以外で死にました。その結果彼は天使になれなかったのです。本当貴女はよくもやってくれましたよ。」

 

「まあその代わりに悪魔である私が魂を回収しているから彼と契約してお前達を助けることが出来たんだから彼に感謝しなよ。

 まあお前達を助ける代償としてもう彼の記憶貰ったから彼は姉であるお前の事すら憶えてないけどね。」

 

「そ、そんな、私が舞台装置?…嘘よ!私が舞台装置なはずがない!ねぇ嘘でしょ!嘘って言ってよ!」

 

 私はあんまりな事実に叫んだ。しかし天使と悪魔は何も言わなかった。

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