悪魔と天使

目と耳が痛い。だがそれ以外はどこも痛くない。とりあえず『極・回復』でパーティメンバー達を治療する。そして治療が終わってボスの方を見ると私達の前にさっきまで居なかった女が一人が立っていた。

 

 その女は黒い翼が生えていて頭にツノが生えている、明らかに人間じゃない。

 

 その女がボスに手を伸ばすとボスは真っ黒な鎖に縛られてあっさりと無力化されてしまった。

 

「あ、貴方は…?」

 

「私?私は『カナエル』、悪魔よ。彼の願いを叶える為にお前達を助けたの。」

 

「私達を助ける?一体誰が…?」

 

「そんなのはどうでも良いじゃない。あ、そうそう。報酬の一つとして彼の日記を貰うわよ。」

 

 そう言う悪魔の手には弟の日記があった。あれは家に置いてあった筈だ。この事から考えるに…。

 

「彼ってまさか…。」

 

「そうよ、お前の弟君よ。彼ってばあんなに理不尽な目に遭って死んでも姉であるお前を助けようと私と契約したの。

 でも私の契約の対価はスキル、一つの契約毎に一つのスキルを永遠に使えなくなると言う物。

 そうそう、今鎖で縛られているコイツは悪魔でも何でもない唯の願いを叶えてくれるイレギュラーな存在の幽霊モンスターよ。

 それにお前は知らないだろうけど『英雄』は悪魔と契約は出来ないのよ。」

 

 そこまで言われて、悪魔に指摘する。

 

 「奪うのはスキルだけなのに何で弟の記憶と日記を持っていくのよ。」

 

「ああ、それは彼にスキルが無かったからなのよ。お前コイツに願ったでしょ。強くなりたいって、その時にコイツが彼のスキルを全て奪ったのよ。だから彼にはスキルは無いのよ。それでスキルの代わりとして彼の記憶と日記を私が貰う事にしたってわけ。」

 

「何でそんなに弟にこだわっているの?」

 

「それはお前達の後ろにいる天使様が話してくれるわよ。」

 

 そう言われて後ろを向く。いつの間にか白い翼を生やし頭に輪っかが浮かんで居る。

 

「私に丸投げですか悪魔カナエル。まぁ良いでしょう。私が全てを話します。彼が大事な理由を。」

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